

おはようございます。稲垣陽子です。
私は小さい頃、ぬかみそのお漬物が大好きでした。
特に、祖母がつくる、ぬかみそのお漬物が大好物でした。
祖母もそれを知っていて、私が遊びに行く日には、ちょうどいい漬かり具合のきゅうりや茄子を、いつも用意してくれていました。
祖母がぬか床を開ける瞬間が、私はたまらなく好きでした。
かき混ぜるときの、鼻にツンとくる独特の香り。ぬかの中から、自分好みに漬かったきゅうりや茄子が出てくるときの嬉しさ。
ぬか床は祖母の神聖な場所で、決して触らせてはくれませんでしたが、ぬかを足したり、水を取ったりする祖母の一連の動きを見ているだけでも、とても惹きつけられました。
そんな祖母はお漬物のことを「おこうこ」と呼んでいました。
だから私も、小さい頃からずっと「おこうこ」と呼んでいました。「お漬物」という言葉なんて、知らなかったのです。
ところが、この「おこうこ」という呼び方を、家族以外で聞いたことがありませんでした。そのせいか、いつの頃からか、「人前では言ってはいけない言葉なのかもしれない」と思うようになりました。
もしかしたらとっても幼い頃に「好きな食べ物は?」と聞かれて「おこうこ」と答えて笑われたか、通じなかった記憶がかすかに残っているので、そのせいかもしれません。
だから「好きな食べ物は?」と聞かれても「おこうこ!」とは答えられなくなりました。本当は大好物だったのに。
なんとなくその場のノリで「ハンバーク」など質問した相手が喜びそうな答えを答えていたら、そのうち、自分でも、「おこうこ」が本当に好きなのかどうか、わからなくなってきたのです。
「好きなものは何ですか?」
そう聞かれたとき、あなたはどれくらい堂々と答えることができますか?
コーチングでも、ときどきこの質問をします。
とても簡単な質問のようですが、意外にも、答えるのを躊躇する人は少なくありません。
「本当に好きなのかな」「好きと公言するほどでもないな」「好きなものはたくさんあるから、一つには選べないな」
そんなふうに、いろいろ考え始めます。
もしかすると私たちは、「好き」と言うからには、何か理由が必要だと思っているのかもしれません。
でも、本来「好き」という感覚に、理由なんてないのではないでしょうか。
よく恋愛ドラマなどで、
「私の好きなところを10個言って」なんていう場面があります。
でも、10個言えた人より11個言えた人のほうが、相手をより好きかというと、そんなことはありませんよね。
「優しいから好き」など理由はいくらでも後からつけられるけれど、その理由があるから好きになったとは限りません。
なんだかわからないけれど、好き。
むしろ「好き」というのは、そんな理屈よりも先にある感覚なのだと思います。
そして私は最近、この「好き」という感覚は、案外あなどれないものだと思っています。
なぜなら、
「私はこれが好き」と口にすることは、「私はこう感じている」という自分の感覚を、そのまま認めることでもあるからです。
人からどう思われるか。それが正しいか。立派か。役に立つか。
そんなこととは関係なく、「私はこれが好き」と言葉にすることは、
小さなことのようでいて、自分自身を信頼することにつながってくるように思います。
まずは、今週はぜひ身近な人に自分の「好き」について話してみてください。
「私はこれが好きなんだ」と言葉にしてみたとき、自分の中にどんな感覚が生まれるのか。ちょっと味わってみてくださいね。
いやいや、そんな「好き」なことなんて、普段話す機会がないよ、という方は、ぜひコーチをつけてください。
コーチは、普段なら考えないようなことを問いかけ、普段なら言葉にしないようなことを、言葉にする機会をつくってくれます。
そうやって自分のことを話しているうちに、「ああ、私って、こんなことを大切にしていたんだ」「私、これが好きだったんだ」と、自分でも知らなかった自分に出会うことがあります。
それもまた、コーチングの面白さの一つだと私は思っています。
では、今週も素敵な1週間をお過ごしください。