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メルマガ「共創コーチング®」稲垣 友仁

【共創コーチング®︎コラム】世界的権威に学んだ『レディネス』の魔法

おはようございます。共創コーチングの稲垣友仁です。

いよいよゴールデンウィーク(GW)が明け、今日から本格的に日常が動き出しましたね。

連休明けの初日。 今、このメルマガを読みながら、皆さんの心の中にはどのような景色が広がっているでしょうか。

「よし、今日からまた気合を入れて頑張るぞ!」
とエンジン全開の方もいれば、一方で

「なんだか体が重いな……」
「日常に戻るのに少し時間がかかりそうだな」
と、少しブレーキがかかっている感覚の方もいらっしゃるかもしれません。

実は、この「連休明け」というタイミングこそ、私たちリーダーやコーチ、そして親という立場にいる人間にとって、非常に重要な「ある落とし穴」が潜んでいる時期でもあります。

今日は、私が4月に東京で直接お会いし、多大なインスピレーションを受けたコーチング界の世界的権威、クリスチャン・ヴァン・ニューワーバーグ教授から学んだ「ある概念」をヒントに、この連休明けを乗り切るためのコミュニケーションについて深く掘り下げてみたいと思います。

1. リーダーの熱量と、メンバーの「温度差」

連休明けのオフィスや教室でよく見かける光景があります。
それは、休暇中にしっかりとリフレッシュし、「さあ、今月からまた目標に向かって爆進しよう!」と意欲に燃えるリーダーと、まだ心の一部が休暇の余韻の中にあり、現実に戻るプロセスにいるメンバーとの間に生じる「温度差」です。

リーダーは、良かれと思って「今日からまた心機一転、頑張っていこう!」とポジティブな声をかけます。あるいは、滞っていたプロジェクトを一気に進めようと、朝一番からアクセルをベタ踏みにします。

しかし、その熱いメッセージを受け取る側のメンバーはどうでしょうか。 まだエンジンが温まっていない状態で、いきなりトップスピードを求められると、人は本能的に「あ、重たいな……」と心理的な距離を置いてしまうことがあります。

このズレは、家庭でも同じように起こります。 連休が終わって学校に行かなければならない子供たち。親は「ほら、今日から学校だよ!遅れるよ!」と、日常のリズムに引き戻そうと必死になります。しかし、子供の心はまだ「非日常」の楽しさの中にあり、玄関を出る一歩がどうしても重くなってしまう。

ここで親が「甘えるんじゃないの!」「みんな頑張っているんだから」と正論をぶつけたり、無理やり引っ張ったりするとどうなるでしょうか。

多くの場合、子供はさらに心を閉ざすか、あるいは反発し、朝から親子で疲れ果ててしまう……。そんな経験、心当たりはありませんか?

この「ズレ」が生じているとき、私たちの中で一体何が起きているのでしょうか。

2. 世界的権威が教えてくれた「レディネス(準備状態)」という鍵

4月に東京で開催されたクリスチャン・ヴァン・ニューワーバーグ教授のワークショップに参加しました。教授はポジティブ心理学をベースとしたコーチングの世界的権威であり、その知見は常にエビデンス(科学的根拠)に基づいています。

その中で、私の胸に最も深く刺さった言葉がありました。

それが、「相手のレディネス(Readiness:準備状態)を見極める」という概念です。

コーチングにおいて、私たちがどんなに優れた質問を投げかけようと、どんなに素晴らしいフィードバックをしようと、相手側にそれを受け取る「準備」ができていなければ、その関わりは効果を発揮しません。

クリスチャン教授は、相手のポテンシャルを最大化し、内発的な動機づけを引き出すためには、まず支援者(リーダーやコーチ)が、「今、この人はどの程度、対話や行動に向かう準備ができているのか?」を正確に観察しなければならないと説いていました。

この「レディネス」という視点を持って、先ほどの連休明けの風景を見直してみると、全く違うアプローチが見えてきます。

リーダーの皆さんが今日、目の前のメンバーに接する時。 あるいは親である皆さんが、子供に向き合う時。 自分自身の「さあ、やるぞ!」という熱量を一旦脇に置き、相手をフラットに観察してみてください。

「この人は今、10点満点で言うと、何点くらいの『レディネス』でここに座っているだろうか?」

もし相手が、まだ2点や3点の準備状態なのだとしたら、そこに必要なのは「激励」や「正論」ではなく、まずはその状態をそのまま受け止める(承認する)ことです。

相手が準備できていない状態でアクセルを煽ることは、ぬかるみにはまった車のタイヤを無理に空転させるようなものです。それでは泥が跳ねるだけで、車は一歩も前に進みません。

3. 「選択肢を与える」ことが、止まったエンジンを動かす

では、相手のレディネスが低い時、私たちは具体的にどう関われば良いのでしょうか。

クリスチャン教授は、ここで「選択肢を与える(Offering Options)」ことの重要性を強調されていました。

人は、誰かにコントロールされていると感じた瞬間に、内発的なやる気を失います。逆に、自分で選んでいる、自分のペースが尊重されていると感じる時、自律性が芽生え、レディネスが自然と高まっていきます。

例えば、連休明けで腰が重そうなメンバーに対して、

「今日中にこのタスクを全部終わらせて」と命令するのではなく、「今日のリズムを取り戻すために、まずは簡単なタスクAから始める? それとも、少し時間をかけて全体像を確認する会議から始めるのがいいかな?」 と、本人の意思で選べる余地を作るのです。

子育てであれば、 「早く準備しなさい!」と急かす代わりに、

「今日はまだ学校モードに切り替えるのが大変だよね。まずは顔を洗ってスッキリしてから考える? それとも、お気に入りの朝ごはんを食べてから動く?」

と、子供が今の自分の状態で「これならできる」と思える小さな選択肢を提示してみる。

この「選択肢を与える」というコミュニケーションは、相手を「専門家(自分の人生を自分で決める力を持つ人)」として扱うという、共創コーチング®の根幹にある哲学そのものです。

相手のレディネスを尊重し、小さな選択を積み重ねてもらう。 そうすることで、止まっていたエンジンが少しずつ、しかし確実に、自らの力で回り始めます。

4. 焦らずに「共創的なスタート」を切るために

今日、皆さんが職場で、あるいは家庭で誰かと顔を合わせた時。 ぜひ、心の中で自分にこう問いかけてみてください。

「今日、顔を合わせるあの人の『レディネス』は、10点満点で何点くらいだろうか?」

もし、相手の点数が低かったとしても、それを「やる気がない」とジャッジする必要はありません。「ああ、今はまだ準備を整えている最中なんだな」と、ただ静かに観察し、認めてあげてください。

そして、リーダーである皆さん自身も、もし自分のレディネスがまだ低いと感じるなら、そんな自分を責めないでください。4月にこのメルマガでお話しした「vulnerability(弱さを露呈する)」の視点に立てば、自分の不完全さを認めることから、真の信頼関係は始まります。

「実は私も、今日は少し体が重いんだよね。まずはみんなでゆっくりお茶でも飲みながら、今週のゆるやかな目標から話さない?」

そんな一言から始まる月曜日があってもいい。 それが、相手を置き去りにしない、本当の意味での「共創的なスタート」だと私は信じています。

連休明けの今週は、無理にトップギアに入れる必要はありません。 相手の、そして自分自身の「レディネス」を大切にしながら、一歩ずつ、丁寧に歩みを進めていきましょう。

そのプロセスの先に、4月までの自分たちを遥かに超える、爆発的な「学習と成長」の瞬間が必ず待っています。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。 素晴らしい一週間になりますように!

共創コーチング 稲垣友仁

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共創コーチング 稲垣友仁

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