

おはようございます。稲垣陽子です。
先日、子育て中のお母さんからこんな質問をいただきました。
「子どもの主体性を育てたいと思って、子どもから『お母さん、どうしよう?』と相談されるたびに、答えを教えず『あなたはどうしたい?』と聞くようにしています。以前はそれで考え始めてくれたのですが、最近はその質問をすると黙ってしまい、答えが出なくなってしまうんです。どうしたらいいでしょうか?」
とても大切な問いだと思いました。
お母さんが、お子さんの主体性を育てたいと真剣に向き合っていることも伝わってきました。
コーチングでは主体性を育む代表的な問いとして、
「あなたはどうしたい?」
という質問があります。
この問いは、とても力のある質問です。
ただし、どんな場面でも万能というわけではありません。
この質問が力を発揮するのは、外側に答えを求めていて、まだ自分の内側に意識が向いていない時です。
一方で、本当に迷っていたり、不安でいっぱいだったり、心の中で葛藤していて、自分でもどうしたらいいか分からない時に
「どうしたい?」と聞かれると、答えられなくなってしまうことがあります。
分からないから相談しているのに答えてくれないので、突き放された感覚にもなるかもしれません。
そんな時に必要なのは、質問よりも先に悩んでいる状態に寄り添うことです。
「そうか、迷っているんだね。」
「答えが見つからないんだね」
「悩んでいるんだね。」
そんなふうに、その人が今いる場所に一緒に留まってあげることが必要です。
しかし、これって思った以上に居心地が悪いのです。
AかBか、白か黒か。
はっきりしない状態に留まることは、どこか停滞しているようにも感じます。
大事な子どもが「停滞している」状態にいることは、親としてはなんとも言えない苦しみでもあるため、「何とかしてあげたい」「早く楽にしてあげたい」そんな親心が自然と湧いてきます。
また、子どもの悩みは親にとっては通ってきた道。そんな簡単なこと、さっさと決めなさい、とも思うでしょうし、決められない子どもにイライラするかもしれません。
つまり、「あなたはどうしたい?」と問いかけながら、その裏では「早く決めてほしい」と願っている自分がいることも少なくありません。
悩んでいる状態に留まるとは、AでもBでもない、グレーの時間を生きることでもあります。
一見すると、前に進んでいないようにも見える混沌な時間。
愛するわが子がそこにいるというのは、親としても苦しい感覚になることでしょう。そのため、子ども以上に、親のほうが「早く答えを出してあげたい」「このモヤモヤを終わらせたい」と思っているのです。
でも、この時間こそが、自分の考えや価値観を育てる大切な時間でもあります。
だからこそ、時にはそのグレーに一緒に留まることも、大切な関わり方なのです。
居心地の悪さも、共にいる。
それが、本当の意味で寄り添うことなのかもしれません。
共感は単なる優しさではありません。
相手の感情や葛藤を否定せず、「今はここにいるんだね」と共にいることでもあります。
その安心感があるからこそ、人は少しずつ自分の内側と向き合い、自分自身の答えを見つけていけるのです。
これは子育てだけではありません。部下との関わりでも、夫婦でも、コーチングでも同じです。人は安心して迷える相手がいるからこそ、自分の答えにたどり着けるのです。
主体性とは、すぐに答えを出せることではありません。
迷いながらも、自分の答えを見つけようとする力。
その力は、「どうしたい?」という問いだけではなく、「迷っているんだね」と受け止めてもらえた経験の中でも、育っていきます。