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大会のテーマは「学び続けるコーチたち」。
基調講演は、帝塚山学院大学の西垣悦代先生による『コーチにとっての学びと成長』です。
今日は、この会の事前打ち合わせで出てきた言葉をきっかけに、ぼくが大学院へ行った理由をお話しします。
この年次大会へ向けての打ち合わせで、こんなキーワードが出ました。
「科学者実務家モデル scientist-practitioner model 」
(科学者-実践家モデルとも呼ばれます)
これは、もともと臨床心理学の分野で生まれた考え方です。
1949年の会議で、臨床心理学者の養成モデルとして示されたものだとされています。
僕は、この言葉を最近知ったのですが、それまで「研究実践者」と呼んで、それになることを目指していました。
このモデルのポイントは、次の2つです。
・実践する人が、研究の知見を活かして実践する
・実践する人が、自分の実践を研究的な目で振り返り、確かめていく
つまり、実践と学術のどちらか一方ではなく、
両方を行き来できる専門家を目指すという考え方です。
打ち合わせでは、
実務家には学び続けている人が多い一方で、実務の世界には「信頼性」という課題があること、学術と実務の両方が大切であること、といった話が出ました。
この言葉を聞いて、僕が大学院へ行った理由を思い出しました。
コーチングに関わって30年、多くのクライアントさんの目標達成を支援してきました。
だからこそ、コーチング自体が「概念の寄せ集めだ」「エビデンスが足りない」と指摘されていることが、気になっていました。
海外には、コーチングを研究する学会も、大学の専門の先生もいます。
でも日本では、ほぼないに等しい状況です。
日本の大学でコーチングを専門に教えている先生は、今のところ知りません。
実践は広がっているのに、それを支える学術の土台が見えにくい。
この状態が、ずっと引っかかっていました。
もうひとつ、問題意識を強くしたものがあります。
2020年代に目指す学校教育の姿をまとめた「令和の日本型学校教育」(中教審第228号)です。

この図は先生方に向けての講演で、コーチングの重要性をお伝えする時に使っていました。
上記の図の中に、今後の「教職員の理想の姿」には、こんな言葉が並んでいます。
・子供一人一人の学びを最大限に引き出す教師としての役割を果たしている
・子供の主体的な学びを支援する伴走者としての能力も備えている
「引き出す」「伴走者」。
これは、僕たちコーチの姿そのものだと思いました。
ところが、僕が確認した範囲では、この答申にも、学習指導要領の解説にも、「コーチング」という言葉はまったく見当たりませんでした。
塾や企業では、コーチングという言葉はとてももてはやされています。
広告にもたくさん出ています。
商業の分野にはあふれているのに、公の指針にはほとんど出てこない。
一体、何が起こっているのか?
これが、自分が大学院へ行く大きなきっかけになった問いでした。
本当の理由は、僕にも分かりません。
公的な資料に、理由が書かれているわけではないからです。
そのうえで感じていることが、
1、研究の蓄積が、まだ足りない
国の審議会には、大学で研究をされている先生方が多く参加されます。
学術の世界では、定義があいまいで、研究の積み重ねが少ない言葉を、
公的な文書にそのまま載せることには慎重になるのだと思います。
これは、とても自然なことだと思っています。
2、民間で先に広がった
コーチングは、企業研修や民間のスクールを通じて広がりました。
だからこそ、名乗りやすく、始めやすい面があります。
その結果、質も考え方もさまざまなものが並び、外から見ると、何がコーチングなのか分かりにくくなっている。
そんな側面もあると思います。
正直に言うと、こうした見られ方は、僕にとって少し悲しいものです。
普段お会いしている公立の小学校、中学校、高校の先生方は、目の前の子どもたちの可能性を引き出そうと、日々、真剣に向き合っておられます。
その関わりは、すでにコーチング的だと感じる場面がたくさんあります。
だからこそ、先生方が安心して学べる土台をつくりたい。
そう思うようになりました。
ぼくが参考にしているのは、「非認知能力」という言葉の歩みです。
この言葉は、アメリカの経済学者ヘックマンの研究から広まりました。
日本では2015年に邦訳が出て、教育の世界で一気に知られるようになりました。
その後、国の指針では「学びに向かう力・人間性等」という言葉で整理され、
幼稚園教育要領などにも取り入れられていきました。
こうした力は、一般に非認知能力にあたるものと説明されています。
一方で、学術の世界からは、「非認知能力」という概念や測り方がまだ明確ではない、という指摘もありました。
2021年には、大学の先生方による「非認知能力」の学術書も出版され、整理が進んでいます。
実践の世界で広がった言葉を、学術が整理し、公の言葉につないでいく。
コーチングにも、同じような道があるかもしれません。
そのためには、コーチングという概念を整理する人が必要だ。
そして、整理するに値するものなのかを、きちんと確かめる人が必要だと思いました。
この流れが中心にあって、大学院の門を叩きました。
コーチングの効果性、そしてコーチングの概念の元になっているそれぞれの概念をきちんと知りたかったからです。
そして、それをコーチングの実践に活かしたい。
さらに、コーチングを整理して、伝えていく一人になりたい。
そう思ったのです。
研究者になるかどうかは、まだ分かりませんし、どれがいいとも、今は決めていません。
ただ、実践と学術の間に橋をかける一人になれたらと思っています。
多くのクライアントさんと一緒に取り組んできた体験を、学びの言葉にして、次の人に手渡していく。
そんなイメージで、「研究実践者」として活動しています。
当日は、パネルディスカッションで、こうした問題意識も含めていろいろとお話しする予定です。
本当のことをいうと、2017年にアメリカに行った時に交流したコーチたちとの出会いがあったり、宇都宮大学で20年あまり行っている共創コーチングの授業など、様々な流れがクロスして大学院にいく道がひらけました。
そんな話を私だけではなく、そのほかのコーチもどのような流れで、大学院へ行き、今どのように活かししてるかを語ります。ほかの二人は海外の大学院へ行っています。僕も聞きたい!
ぜひ、季節のいい岡山にお越しください。
『アカデミック・コーチング学会 第11回年次大会 2026@岡山』
日時:2026年10月31日(土)13:30〜18:00(予定)
会場:IPU・環太平洋大学(岡山)
基調講演:西垣悦代先生『コーチにとっての学びと成長』
パネルディスカッション:稲垣友仁/藤田大樹さん/横山美咲さん
*共創コーチングで学ばれた藤田大樹さん(University of Strathclyde 修士課程修了)も登壇します。
共創コーチング 稲垣友仁
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