おはようございます。稲垣陽子です。
相手に合わせてコミュニケーションをとろうとすること。
心がけている人は多いのではと思います。
コーチングでも、相手に合わせる(adapt=適応する)ことは
クライアントとの信頼関係を築く上で
大切な行動基準の一つであると考えます。
「コーチはクライアントの自己認識、
物の捉え方、流儀、言葉遣いに敬意を示し、
クライアントにコーチングを合わせている」と、
ICFのコアコンピテンシー(行動基準)* に書いてもあります。
では、相手に合わせた関わりとはどういうことなのでしょうか?
今日は、私が体験したことをお伝えします。
6年前ですが、米国旅行のついでに、
クライアント企業さんのアメリカ本社を訪問したことがあります。
その企業では本社でも、私と同様外部のプロコーチを雇っており、
日本支社のエグゼクティブたちをコーチしていた私としては、
一度コーチングの方針について会って話したいと思っていました。
コーチはワターソンさんという男性で、
長年コーチとしてのキャリアを積んでいるベテランコーチでした。
オフィスは、オハイオ州の地方都市の中にあり、
日本の避暑地のようなおしゃれな店と広々とした公園がある、
緑豊かな街の一角にありました。
まずオフィスに到着すると、
ワターソンさんはすでに玄関口で待っていてくれて、
穏やかな口調で「よく来たね〜」とウェルカムをしてくれました。
そして、カタカナで自分の名前と会社名が書いてある、
日本語の名刺を渡してくれたのです。
これにはすごく感動しました。
もちろん、日本と関係の深い仕事をしている方であれば、
外国人でも日本語の名刺を作っている人は多いと思います。
しかし、ワターソンさんは日系企業専属のコーチという訳ではありません。
活動はヨーロッパ、南米、オーストラリアなどグローバルに広がっています。
私のクライアント企業さんもバリバリのアメリカの会社です。
実際に本社で出会った会社の方で日本語の名刺を持っている方は
一人もいませんでした。
そんな中、一生に数度会うかどうかの日本人のために、
日本語の名刺を用意してくれた。
その姿勢に私はとても感動したのです。
このワターソンさんの関わりが、
まさに相手に合わせる関わりだと思います。
つまり、相手に合わせて
コミュニケーションを取ろうとするとは、
相手の基準に向かって
自分の基準を変えて適応しようとすることです。
場所はアメリカですし、英語は共通語ですし、
英語の名刺を渡しても何も問題はありません。
でも、相手の基準を想像してみると、
日本人にとって名刺は日本語で書かれているものが基準です。
相手の状況を理解しようとし、
その基準に合わせようと近づく姿勢が
「合わせる関わり」につながってくるのだと思うのです。
実際に、私はワターソンさんの言動を通して、
私に敬意を払ってくれていると感じ、すごく嬉しかったです。
また、言葉の通じない海外で味わう不安や緊張に
気づいてくれているという、
理解してもらっているという安心感もでてきました。
この人なら何を話しても大丈夫だな、
という信頼感も出てきました。
合わせるというと、自分を押し殺したり、
卑下するような印象を持つかもしれません。
でも、それは相手の基準を尊重はしていません。
相手の基準を尊重し、
敬意を持って近づこうと心から思い、
そのために何ができるかなと思い巡らす中で、
相手に合わせるための言動が
生まれてくるのだと思います。
そんな言動が、
相手にとって気の利いた爽やかな
コミュニケーションにならないはずがありません。
今週はぜひ合わせるコミュニケーションを試してみませんか?
【合わせて読みたい!】関連バックナンバー
コーチングの本場アメリカで学んだアダプティブ(adaptive)コーチング
*ICF コアコンピテンシー
ICFとは国際コーチング連盟の略。コアコンピテンシーとはICFが出しているコーチのための行動基準。
———————
※上記のコラムは、当社発行メルマガに掲載されたバックナンバーです。
下記のバナーから登録いただけば、毎週月曜日朝8時に、このようなコラムが届きます。
意識をもって一週間を始めることができます。