こんにちは、稲垣友仁です。
『声に出して読みたい日本語』(草思社,2001)などを代表作に、たくさんの書籍を執筆されている明治大学教授の斎藤孝さん。
斎藤さんは、コミュニケーションの基礎力として「要約力」を強調しています。
斎藤さんの言う「要約力」は単に長い文章を短くする能力ではなく、「話された(書かれた)」内容を、自分の言葉で簡潔に、しかも要点を外さないで言い換える能力です。
要約力があると、相手のニーズを捉えることができ、営業やクレーム対応などで役に立つばかりか、人前で相手にグッと伝わるスピーチを行えるようになり、これからの現代人にとって、要約力は必須の力ではないかと思います。
実はコーチングでも、この要約力は、とても重要な基礎力となると同時に、コーチングを学ぶことで要約力が磨かれます。
コーチングで一番大切なことは、相手の話されている言葉の一語一語に捉われるのではなく、その話を通して相手が本当に伝えたいことは何かということを的確につかまえ、そして、それを相手に返してあげることだと私は思っています。
このような要約力がコーチングの対話を加速させて行きます。
コーチングで要約とは、相手が言った言葉を「つまりあなたが言いたいことは◯◯ですね」と確認する形のことを言います。
要約にはいくつか種類があります。
1、おうむ返し
相手の言った言葉を、そのまま繰り返す。別名バックトラッキングとも言います。
これは相手が自分の言っている言葉を認識する鏡のような役目があります。
あまりやりすぎると意思がない人と思われる可能性もあるので注意が必要です。
2、言い換え
相手の言った言葉を、こちらが理解した形で相手に返す方法です。
おうむ返しはあまりにも相手に意思がないように思われてしまうので、意思ある人として自分の考えのフィルターを通すことで、血の通う対話になりやすく、対話が加速していきます。
しかし、コーチングの場合、コーチが言い換えすぎると逆に相手の本当に言いたいことからずれる可能性もあるので、適度に相手の言葉を入れていくことも必要になります。
3、相手の文章を短くまとめる
これがいわゆる斎藤さんが言っている要約に近いもので、相手の話したことを「〇〇さんが言いたいことは、つまり〇〇ということですね」とこちらが受け取ったものを要約して返していく方法です。
これがピタッと合うと「そうそう」と相手も話が弾んできます。
コミュニケーション力を上げろと言われても難しいものですが、
「要約力を上げる」と捉えると、上記の1、2、3、を意識すれば、トレーニングしやすくなるのではないかと思います。
要約と言われて、すごく難しいと思った方は、1、のおうむがえしから行ってみてください。
とりあえず、相手が話しているキーワードだと思うものをそのままの言葉で返してみる。
日本人の場合、言いたいことを後半に持ってくることが多いので、最後の方の言葉を繰り返したり、あと感情の言葉を返してみるといいかと思います。
そして、2、の自分の言葉で言い換えるバージョンを試してみてください。
そして、3、の文章ごとに要約をしてみるという感じで段階ごとに練習していくと、「そうそう、そうなんですよ。」と言われることが多くなり、要約力が上がるかもしれません。
今週はぜひ、人との会話の中で、要約を入れてみてください。
要約をしているうちに勝手に相手が気づいていったら、あなたには、コーチをする才能があるかもしれません。
楽しんで磨いていってください。
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