おはようございます、稲垣友仁です。
人の成長を考えた時に、対象者に対して「課題」を与えることはとても大切だと思います。
例えば、学校だったら授業で問題を出してそれを解かせようとしますし、企業でしたら社員に初めての仕事を任せたりするでしょう。
そのような課題を解決するプロセス(経験)の中で人は学び、成長をしていくということは多くの方が理解できると思います。
しかし、課題提示の段階で、その課題が簡単すぎると成長しない可能性や飽きがきますし、難しすぎてもモチベーションがあがらなかったり相手を潰してしまう可能性があるかもしれません。
目の前の対象者に、どのような課題を与えると、モチベーション高く課題に取り組み、成長が起こるのかということは、何気に難しい課題でもあり、悩んでいる方は多いかもしれません。
そのような中で、参考になる研究を今日は紹介したいと思います。
米アリゾナ大学のロバート・ウィルソン准教授のチームは、「最も効率よく学ぶには、どのくらい失敗するのが最適なのか?」というのを探る調査を行い、学ぶ上で最適な「失敗率」は15%という数字を見つけ出しました。
英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズには、「最適学習の85ルール」として掲載されています。※1
以下は、Newsweek ※2からの抜粋です。
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アリゾナ大学の発表文によると、ウィルソン准教授のチームは、コンピューターにシンプルなタスクを教えるという機械学習を、複数のパターンで行った。例えば、さまざまな模様を2つのカテゴリーに分類するといった内容や、手書きの数字が書かれた写真を奇数と偶数に分ける、または数の大小に分ける、といった内容だ。
その結果、85%の割合でうまく分類できたときに、コンピューターはもっとも速く学習したという。
「このような2択のタスクにおいては、エラー率15%、または正解率85%のときに、学習率が最大になる」とウィルソン准教授は話した。
同准教授はまた、動物の学習においても、85%ルールは当てはまったと説明している。
人間で考えると、85%ルールが当てはまるのは「知覚学習」のときだという。経験と実例を重ねて徐々に学んでいくプロセスだ。
ウィルソン准教授は、「放射線技師がレントゲン写真を見て、腫瘍かそうでないかを見分けられるようになる」までの学習を例として挙げている。
放射線技師は、実際のレントゲン写真をたくさん見ていくことで、腫瘍がどれかを正確に当てられるようになっていく。
精度を高めるには、「経験」と「実例」が必要だ。
しかしこのプロセスが、「簡単すぎると毎回正解してしまい、そこから学べるものはない。正解率50%で難しすぎても、新たに学ぶことができなくなる。ちょうどこの真ん中くらいの確率は、それぞれの実例からもっとも多くの情報を得られる『スイート・スポット』になり得る」とウィルソン准教授は話している。
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よく、ストレッチ目標という言葉をコーチングでは使います。
今よりも成長するために、今できることではなく、今よりもちょっと背伸びをするぐらいの目標を立てることで、それに向かって行動が起こるというものです。
そういう、良い目標設定ができると、行動が起こりやすくなります。
行動を継続していけば、失敗しないようなものではなく、失敗率15%ぐらいの目標設定のイメージで目標設定を行えばいいのではないかとヒントになりました。
要するに、何かに向かってチャレンジする感覚がとても大切なのだと思いました。
失敗しても真実を見つけたいと思えるような課題設定が人を成長へと結びつけるのだと思います。
コーチング・システムズ稲垣友仁
参考文献:
※1 Newsweek for women
「学習法 15%の間違いをするときが最も
効果的に学べる その理由は?」
→http://mshn.jp/r/?id=0zjof2462&sid=4758
※2 nature communications(英語サイト)
最適な学習のための85%ルール
The Eighty Five Percent Rule for optimal learning
→http://mshn.jp/r/?id=0zjog2462&sid=4758
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