おはようございます、稲垣陽子です。
コーチングとは、とても大雑把にいうと「相手の話を聞く仕事」です。
1ヶ月に数回、30分から1時間程度、その人の話を聞きます。
その人が感じたことや考えたことなどの話を聞き、
本人すらまだ気づいていないような、
自己の動機や才能を浮き彫りにしていきます。
中には20年以上にわたり継続してコーチングをさせていただいている方もいます。
月に数回という頻度ではありますが、
まるでその方の人生の旅路を一緒に歩いているような、
そんな感覚になります。
だからこそ、とても気をつけなければいけないことがあります。
それは、「その人のことを知った気にならないこと」です。
つい、現状の課題などを聞いていると、
「あなたは〜を大事にしている人ですものね」
「あなたの〜という才能がそうさせるんですね」など、
過去の体験や経緯などを踏まえて感じたことを伝えたくなる瞬間があります。
人によっては、「コーチは自分のことをよく知ってくれている」
と感じて安心感につながることもあります。
関係性を深めるうえで、それが役に立つ場面もあるでしょう。
でも一方で、言葉の使い方やそこに込められたエネルギーによって、
それは「評価」や「判断」になってしまうこともあるのです。
そしてそれが強くなると、依存を生む可能性もあります。
「コーチがそう言ってくれたから大丈夫だ」
「コーチが言ったから・・」など、です。
コーチの言葉は、励ましにも、モチベーションの源にもなります。
けれど、それを“判断の基準”にしてしまうと、
クライアントの主体性を損なってしまう恐れがあります。
判断の基準は、つねにクライアント自身の中にあるべきです。
これは、コーチとクライアントの関係だけではなく、
親子や上司部下でも同じことが起こるでしょう。
では、そうならないように、
相手の話を聞くにはどうしたらいいのでしょうか?
私が心がけているのは、
「私はあなたのことをまだ全然知らない」――そう思いながら関わることです。
・あなたは私が今現在知っている以上の、
それを遥かに超える素晴らしく、大きな存在である。
・私が知っているあなたは、あなたの存在や可能性の大きさに比べたら、
本当にこれっぽっちにすぎない。
だからこそ、もっと知りたいという思いが湧き、
それを好奇心に変えて、さらに話を聞くことができますし、
関わり続けることができます。
私はまだ知らない。あなたのことを。
あなたの中にある大きく素晴らしいものに、
まだほんの一部しか触れていない。
そう思うと、毎回、その人と関わるこの瞬間が
とてもかけがえのない、素晴らしい時間であると思えます。
この感覚は、コーチングに限りません。
家族や、日々何気なく出会う人とも、
こうした姿勢で関わってみると、
全然違う関係が生まれてくることがあります。
今週はぜひ、出会う人に対して
「私はあなたのことをまだまだ全然知らない」
という感覚を持ち、好奇心を持って関わってみてください。
どんな違いや発見があったか、ぜひ教えていただけたら嬉しいです。
今週も素晴らしい1週間になりますように。
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