おはようございます。稲垣友仁です。
今日は、ある短期大学で講義をしたときのお話です。
この短期大学では教員養成コースがいくつかあり、
1学年150人ぐらいの学生に講義をしていました。
2週連続でつづく講義の1回目が終わったあとに、教壇で片づけをしていると、
ちょっとパワフルな女子学生が私の所にやってきて、
「先生、私の友達が教師にならないって言ってるので、
この子の話きいて、コーチングしたってよ」
と言ってきました。
そして、その後に、細々とした女の子を連れてきて、
パワフルな女子学生は、細々とした女の子に向かって、
「あんた、わたしらはどっかへいくで、ちゃんと先生に思ったこと話しなよ。」
と言ってどこかへ行ってしまいました。
その場に残った細々とした女の子はちょっと緊張していましたが、
意を決して、力いっぱい自分が考えている悩みを話してくれました。
話を聞いていくと、
自分には、本当は違う夢があったけど、挫折して第2希望の夢を追っていることや、
このままいくと、この職業(教師)は自分には合っていないように思えて、
やっていけないんじゃないかという不安なことなどを、
ちょっと目線をそらしながら一生懸命話してくれました。
きっと、パワフルな女子学生のお膳立てがなければ、
私に質問しに来ることはないようなタイプの女の子だったと思います。
繊細であるがゆえに、周りを気遣って生きている感じが、
ちょっと痛々しく緊張感がとても伝わってきました。
最終的に答えは出なかったのですが、彼女には才能があることや、
向き合っていることが素晴らしいことだということを伝えました。
僕は、なぜか、その子がそういう悩みを言ってくれたことが嬉しかったですし、
言えたことが、すごいなと思いました。
同じような悩みを抱えている学生もきっといると思い、
次週の講義の最初の段階で10分ぐらい、
彼女の悩みにこたえる形の講義を行いました。
悩むというのはとても大事なことだと。
悩むということは、本当は良くなりたいという想いが
奥底にある、自然な流れなんだ。
そのエネルギーに真正面から向き合っている
そのプロセスが今後の人生でなによりも大事だと。
講義では、質問に来てくれた子のことを言ったわけでなく、
違う形で例を出して話しました。
僕も過去にたくさん悩んで、逃げた時のことや、
向き合って良かった時の事など話しました。
聞いている学生もいれば、下を向いている学生もいます。
とりあえず、その講義が終わって、帰ろうとしていたら、
前回、悩みを話してくれた女の子が
僕の近くに、今度は一人で来てくれました。
そして、「先生ありがとうございました」と、
一言だけ、お礼を言って帰っていきました。
去っていく彼女の後ろ姿を見ながら、
何となく先週よりたくましくなった彼女を見た感じがしました。
最近よく見ているテレビで「最高の教師」という番組があります。
人間性心理学的な視点での教師の台詞がいつも刺さるのですが、
その中で教師が言った言葉に下記のような言葉がありました。
「生徒が自分で考えて決断した偉大な一歩は、驚くほど何かを変える」
本当にそう思いますし、そういう場面に何度か遭遇してきました。
悩むことを通して、自分自身の答えを導き出そうとする行為は、
本当に価値ある未来につながる行為だと思います。
引用文献:
*最高の教師 日テレ 第4話
——————————–
※上記のコラムは、当社発行メルマガに掲載されたバックナンバーです。
下記のバナーから登録いただけば、毎週月曜日朝8時に、このようなコラムが届きます。
意識をもって一週間を始めることができます。