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メルマガ「共創コーチング®」稲垣 陽子

【共創コーチング®︎コラム】本当に話したいことを話してもらうには?

おはようございます。稲垣陽子です。

20年近く前の話ですが、アラビア語圏の方に
コーチング研修をしたことがあります。

通訳は日本人の方でした。
ただし、プロの通訳という訳ではなく
普段技術系の仕事でアラビア語を使っているという方でした。
ご自身の専門分野の翻訳は長けているのですが、
コーチングについては全く予備知識がなく、
その方にとっては門外漢の内容でした。

研修がスタートすると、
なんとか理解して翻訳しようとしてくださるのですが、
どうも混乱している様子。
だんだんその方が言葉に詰まり出しました。

そして、途中で「僕にはあなたの言葉を
どのように伝えていいのか分からない」
と何度か中断するようになりました。

さぁ、そうなると場はカオスです。
当時は今のように翻訳機器が整ってはいません。
私自身も経験不足で、
上手な言い返しができていませんでした。

「観察」と「今この瞬間に焦点を当てる」

そこで、私はコーチングの説明をやめて
今からコーチングをしましょう、と、
受講生の一人の方を相手に
コーチングのデモをすることにしました。

ただし、相手が話す言葉の長さに対して
翻訳の長さを比べると短く、
逐語訳されている感じでもなかったため、
私は話している内容ではなく、
そのアラビア語を話している相手を観察し、
小さな変化を見逃さないことに全身全霊で
集中することにしました。

そして、そこから湧き出る質問だけを
繰り広げていきました。

「今、あなたの中に何が起こりましたか?」
「今そのことを言葉にしてみて、あなたの中にどんな気づきがありますか?」
「ここまで話してあなたが大事にしている事はなんですか?」
「今私には●●が伝わってきました」

ただただ、この瞬間だけを切り取ろうとして
関わることを意識したのです。

そうすると不思議なことに、
段々と相手の声のトーンが変わり、
本人から本音のような話が始まったのでした。

最後は通訳を介さなくてもお互いが言いたい
ことを理解できているような錯覚に陥るほどでした。
(訳す前から意図通りの話が返ってくる)

初めてお会いする異国の方でしたが、
とっても身近で昔から知っている友人のような
感覚に襲われたのを今でも覚えています。

この体験から私が学んだことは、
人は自分の内面と繋がれば、自由に自分の
話したいことを話すようになるということです。

それまでは、コーチとしてきちんと相手の
話を聞けるようにならなければいけない、
そのためには、相手が話している言葉をよく聞き、
しっかりと文脈を理解しなければならないと思っていました。

だから分からない話をされると混乱しましたし、
どう質問していいのか、質問が浮かばないという
ことも多々ありました。

でも、この体験から、大事なのは文脈を追うことではなく、
今この瞬間に相手が話したいことを
話してもらうことだと気づいたのです。

言っている事はきちんと理解できていないかも
しれないけれど、今、この人に起こっている
事はなんだろう?どこにエネルギーが向かっているのか
何を話したいのだろうか?
相手のことをよく観察し、
今、この瞬間に起こっていることを知ろうとします。

人は話したいことは、実は自分自身でも
自覚できていないことが多かったりします。
今、この瞬間をキャッチしてもらうことで、
自分の中でも何を話したいのかと内省が起こります。
そうすると、自然と言葉は生まれてくるのです。

今週はぜひ話す内容よりも二人の間の瞬間に
焦点を当てて相手の話を聞いてみましょう。

実際にICFコアコンピテンシー、C.積極的傾聴の中に
こんなコンピテンシーがあります。

6.3 クライアントが伝えている以上の何かが
あることを認識し、問いかけている

うちなる言葉は力強く、伝わりやすいものです。
そして、それを聞いてくれる人との繋がりは
自然と深くなるでしょう。

ぜひ試してみてくださいね。

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