おはようございます。稲垣陽子です。
私が住んでいる三重県桑名市のはずれに専光坊*という浄土真宗のお寺があります。
そこは、内観という修行ができるお寺でもあり国内外から多くの方が訪れています。
以前、ニューヨークタイムズにも掲載されたことがあります。
私たち夫婦も15年ほど、お世話になっています。
昨夏、15歳になった息子にもそこで修行をさせようと、1週間ほど行くことを勧めました。
が、しかし、直前になって「嫌だ!」と言い出したのです。
確かに受験生だったこともあり塾の予定もありましたし、
やや強引に親が決めた感もあり、結局話し合った末、息子の意志を尊重して、お断りすることにしました。
直前のキャンセルとなり、こちらも申し訳ない気持ちいっぱいで電話をかけました。
すると、こんな言葉が返ってきました。
「こちらも、ここ2ー3日の猛暑だったので、この暑さの中の修行は大変なので、お断りしようかなと思っていたところだったのです。」
もちろん、そんなことはなかったはずです。きっと、息子が来るために万全の準備をしてくださっていたことでしょう。
それでも、こちらの思いを汲み取り、さらりと返してくれた言葉のおかげで、こちらの申し訳なさや罪悪感のようなものが少し解けて、なんとも言えない心が温かくなる思いがしました。
私はこういうコミュニケーションを秘かに「優しいコミュニケーション」と名付けています。
優しいコミュニケーションは言葉遣いや言い方が柔らかい、とか、そういう意味ではありません。
その言葉の裏にどれだけ「相手」をおもんばかっているか。
相手への「思いやり」を中心にしたコミュニケーションのことを優しいコミュニケーションと名付けています。
逆に、私たちのコミュニケーションのほとんどは、自分の思いが中心の利己的なものになります。悪い訳ではありません。そんなものです。
おそらくこの場合も、
A:「そうなんですか!せっかく用意していたんですよ!間際に言われても困るので、今後は気をつけてくださいね!」
と、自分の都合を言葉にしたくなるのが普通でしょう。あるいは
B:「そうですか・・・残念ですけれど、仕方ないですね・・・分かりました」
と、自分の感情が先走るケースもあります。
表現方法は人それぞれであれ、一般的に自分視点に意識が行きますし、それを主張したくなるものです。
では、どうしたら優しいコミュニケーションになるのでしょうか。
それは、今、ここに現れていないものについて意識を向けて相手をみる、ことです。
例えば、この場合なら
・息子さんはどんな様子ですか?
・息子さんとの話し合いはきっと実りあるものだったことでしょう
など、電話の二人の間に存在していない、息子について意識を向けてみる、とか。
あるいは
・庭のヒマワリが満開なので、近いうちに見に来てくださいね
など、声の様子から、来づらくなるかもしれないという相手の気持ちを思い、接着剤になりそうな何かを話題に出してみる、とか。
目の前の対話に捉われすぎず、そこに表れてこない、相手の状況や思いや、背景について想像してみます。
そして、それを相手の思いに寄り添いながら、相手を思いやって言葉にするとき、そこには優しいコミュニケーションが流れるのではと思うのです。
もちろん、ビジネスの場面ではそう使えるものではないと思いますが、相手のストレスが高い時や、面談の最後などに取り入れると効果的です。
こんな時だからこそ、ぜひ身近な人と優しいコミュニケーションを繰り広げてもらえるといいなと思います。
では、今週も健やかにお過ごしください。
*専光坊
http://mshn.jp/r/?id=0zwpc2462&sid=4758
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