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メルマガ「共創コーチング®」稲垣 陽子

【共創コーチング®コラム】部下をアシスタントにしてはいませんか?「真のリーダー」を育てる「承認」の作法

部下への「ありがとう」は要注意

おはようございます。稲垣陽子です。

あなたは普段、部下をどのように「承認」していますか?

もし、チームのメンバーに「ありがとう」という言葉を頻繁にかけているのなら、場合によっては控えた方が良いかもしれません。

私は普段、社長・管理職・マネージャーなど、チームを束ねるリーダー職を中心にコーチングしています。そんなとき、部下をどう承認しているか質問すると、一番多い答えがこれです。

「ありがとう、はちゃんと言うようにしています」
「〇〇さんのおかげで助かった、とかはよく言います」

部下に何かをしてもらって、きちんとねぎらう。大切な視点です。

きっと、このメルマガを読まれている方の中でも、こういった声かけを心がけている人は多いのではないでしょうか。けれども、この「ありがとう」「助かった」だけの承認は、実はちょっと注意点があるのです。

今日は、そんな部下を育てるための「承認」の方法について、お話ししていきたいと思います。

 

チームメンバーをアシスタントにしてはならない

最近、『世界最高のチーム』(ピョートル・フェリクス・グジバチ著・朝日新聞出版社)という本を読みました。
チームマネジメントについてのヒントがわかりやすく書かれているので、気になる方はぜひ読んでみてほしいのですが、この本、実に興味深いことが書いてありました。

著者のピョートルさんは、「チームメンバーをアシスタントのように扱ってはいけない」と言うのです。

現役の経営者であり、日本在住歴19年というピョートルさんは、日本企業の特徴もよく把握されているのですが、彼によれば「チームのメンバーをアシスタントのように使って、マネージャーが現場の仕事をやり続けている」(書籍より引用)という状況が、日本ではよく起こると言います。

本来「リーダー」とは、現場の仕事をする役割ではありません。

スポーツチームの監督のように、外から指示を出すのがリーダーであって、実際に動き、成果を出すのはメンバーがやるべき仕事です。

「ありがとう」「助かった」という言葉は、とても良い承認の言葉のように思えます。

けれど、それだけで現場が回っているとしたら、ピョートルさんが指摘されているような、「リーダーが主役で、メンバーがアシスタント」のパワーバランスになってはいないでしょうか。

本当に優秀なリーダーは、部下をアシスタントの位置だけにはさせません。

では、「真のリーダー」とは、どんな承認をするのでしょうか。

 

受け継がれる「真のリーダーシップ」

先日ある愛知県の教員の方にお会いしました。仮に、A先生としましょう。

A先生は、愛知県のB市の小学校・中学校における「日本語適応指導」プロジェクトのリーダーです。外国人の子どもたちの日本語学習を指導したり、日本の文化に馴染めるような仕組みを作ったりするのが、このプロジェクトの趣旨です。

現在、B市のこの取り組みはとてもうまくいっており、文部科学省にも呼ばれたりなど注目されています。

私は話を聞いて、そこには、A先生のスポーツチームの監督的なリーダーシップがあると思いました。

一般的に、プロジェクトを成功させるためには、「こういうスケジュールで進むので、いつまでにこれをやってください、報告はこの方法で」というふうに細かくマニュアルを作り、その通りに動くことが求められます。

でもA先生は、「私はこうやってやってみた。さあ、君はどうする? どうやりたい?」と、とにかく現場に出向いて「考えさせる」ことに注力していったのだそうです。

そして担任の先生、当事者の声などを共有し、必要であれば、上と交渉したり改善しながら、たくさんの人を巻き込み、仕組みをどんどんブラッシュアップしていきました。

しかし、A先生は今年で定年を迎えます。優秀なリーダーが去ると、うまくいっていたプロジェクトでもいきなり崩壊してしまう、ということはよく起こります。

それは大丈夫なのですか?と私が聞くと、A先生は、
「来年以降の後継者はもう決まっている。以前に、この人と思う人を校区外から引っ張ってきました。さらに、その次の世代のリーダーも育てています。彼です。」と言って、30代の若い先生を紹介してくれました。紹介されたその方はとても誇らしそうでした。

プロジェクトの成功に向けて邁進しつつも、次世代だけではなく、次々世代のリーダーを育てている。
まさに真のリーダーシップの姿だと思いました。

 

「感謝」だけが「承認」ではない

つまり、私がお伝えしたいのは、サポートに対する感謝だけでは、真のリーダーは育たないということです。

私たちは「共創」……つまり「新たな価値を共に創ること」をテーマに掲げていますが、そのためには自らの才能に自信を持った人を育てることが必要だと感じています。

いいところを見つけて褒めて、やってくれたことにお礼を言ってやる気を出させるという方法も、もちろん大切です。

しかし、真のリーダーがするべきなのは、チームの目標を共有し、そして、メンバーに考えさせることです。仕事を任せてみて、アイデアを出させる。
「この目標に対して、あなたのどんな力が使えると思う?」と投げかける。実行させる。そこからでた工夫やアイデアを承認し、結果が出た事実を伝える。

そこには自分の思うように動いてくれて「ありがとう」という発想ではなく、自分にも気づかなかった、新たな発想やアイデアが「素晴らしい」という発想になるはずです。

未来の目指すものに向かって、承認を投げかけていく。

ぜひ今週は、「ありがとう」だけではなく、自分とは全く違う切り口の裏に眠っている才能や可能性に目を向けて承認をしてみてくださいね。

では、今週も素敵な一週間になりますように。

 

【参考文献】
『世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法』(ピョートル・フェリクス・グジバチ著・朝日新聞出版社)
http://mshn.jp/r/?id=0z9dz2462&sid=4758

 

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