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メルマガ「共創コーチング®」稲垣 友仁

【共創コーチング®コラム】グーグルが見つけた「心理的安全性」が 人材育成の鍵を握る

米グーグルの生産性向上プロジェクト

おはようございます。稲垣友仁です。

数年前のことです。ネットニュースで流れてきた記事を見て、僕は衝撃を受けました。

教師として、プロコーチとして自分が言語化できていなかったのはこれだったのか、とようやく腑に落ちたような感覚でした。

それは、米グーグル社が2012年から取り組んでいた、チームの生産性を向上させる労働改革プロジェクトについての記事でした。

ことの顛末はこうです。

グーグル社内には、多種多様なプロジェクトを遂行する、数百ものチームがあります。しかし、その中でも生産性の高いチームと低いチームで、差がついてしまっていました。

その違いは何故生まれるのか、人員分析部が研究を続けていたそうなのですが、答えがついに見つかった、というのが記事の本題でした。

そのプロジェクトによれば、生産性の高いチームを作る上でキーとなるのは、チーム編成でも、メンバーそれぞれのスキルでもなく、ある一つのメンタル的な要素なのだそうです。

それが、「心理的安全性」

これが、生産性の高いチームに共通するものでした。

僕は、この「心理的安全性」というキーワードは、今後、一般企業・行政機関など業種を問わず、あるとあらゆる教育現場で取り入れられるべき視点だと思っています。

今回は、グーグルがチームマネジメントをする上で重要視している「心理的安全性」とは何なのか、また、僕たちの実生活でどう活かせるのか、解説していきたいと思います。

自主性が育つチームの鍵は「心理的安全性」

「心理的安全性」とは、心理学の専門用語です。(psychological safetyを日本語に訳したものです。)
チームのメンバーそれぞれが「こう思われたらどうしよう」「失敗したら嫌だな」といった不安や恐怖を抱くことなく、本来の自分を安心してさらけ出せる場の状態や、雰囲気のことを言います。

この概念を知ったとき真っ先に浮かんだのは、中学校の教師をしていたときの記憶でした。

僕は12年間、子どもたちと触れ合い、また、数々の指導者たちとも出会ってきました。
会った人の分だけ、教え方のスタイルも違いました。厳しい先生もいれば、優しい先生もいました。

けれど、思い返してみると、生徒たちの自主性が育ち、学習定着率の良かったクラスには、共通して「心理的安全性」があったように思うのです。

たとえば、僕の先輩教師である三重県の小学校教師・辻哲哉先生のクラスでは、まさに「心理的安全性」がうまく機能していました。

何度かこのメルマガで紹介しているので覚えている方もいらっしゃるかもしれませんが、辻先生の授業では、先生は3回しか発言しないのです。

最初の投げかけと、途中の軌道修正と、最後のまとめのみ。
中心となって授業を進めるのは生徒たちです。「私がわかるから私が教える!」「その答えに付け足しするね!」といった具合に、子どもたちがずーっとしゃべり続けています。

辻先生の授業では、一人ひとりが活発に発言していて、わからない生徒がいればみんなでフォローします。

思わず、聞いたことがありました。

「これほど活発な授業のコツとは一体、何なのでしょうか?」

すると辻先生は、少し呆れたように笑って、こう答えました。

「俺の授業を見たって、答えはないぞ」

最初は意味がわからなかったのですが、しばらく考えているうちに、はたと思い当たりました。

辻先生は、何も、授業のやり方だけを工夫しているわけではなかったのです。
授業から、ホームルームから、一人ひとりとの対話から何から、常日頃、生徒たちが活発に意見を言いたくなるような「空気」を作り続けていた。そう言う学級集団を作っていたのです。

たとえば、辻先生のクラスには、
「相手の話をきちんと聞く」
「誰かが発表するときは、体を向ける」
「毎日連絡ノートに、先生へメッセージを書く」
など、ルールがありました。

そうした積み重ねが徐々に、自己開示しやすい空気に繋がっていったのだと思います。

辻先生の授業では、問題を間違えてしまう子も、「わからない」と言ってしまう子もたくさんいました。

けれど、子どもたちは、失敗することを恐れてはいませんでした。
間違ってもいいから、みんなで答えを見つけよう。
自分の力を出し切って成長しよう。
失敗しても、全然恥ずかしくなんかない。

そんな「心理的安全性」の高い雰囲気が出来上がっていたのです。

「心理的安全性」が人材育成の鍵となる

教師だった頃、「教室は間違えるところだ」と、先輩教師からよく聞かされました。

間違えて当然なのです。むしろ、失敗したらどうしようと、誰も手を上げない状態が続くと、わからない生徒がだんだん置き去りになってしまいます。

「心理的安全性」の高いクラスは、わからないことをわからないと、躊躇いなく言える。誰かがそれを言うと、他のわからない生徒も得をするので、「言ってくれてありがとう」という雰囲気が出来ていきます。「わからない」→「わかった!」と変化していく経験から、互いの対話が生まれていくのです。

これは、ビジネスでも同じです。

みなさんのチームは、どうでしょうか。

「でしゃばったら恥ずかしい」
「そのアイデアはおかしい、と言われたら怖いから、発言するのはやめておこう」
「今仕事が忙しくて大変だけど、誰にも悩みを打ち明けられない」

そんな風に思っていませんか。チームメンバーに、そう思わせてしまっていませんか。「心理的安全性」のあるチームに、なっているでしょうか。

生産性の高いチームを作る上でグーグルが重要視している、この「心理的安全性」。
今回例として挙げた学校現場でも、一般企業でも、スポーツチームでも、あるいは家族間でも、「チームで動く」ことが必要な場面においては、無視できない論点だと思います。

全員が生き生きと、安心して動けるチームを作るための具体的な方法は、これからこのメルマガでも紹介していきたいと思いますが、まずは今週、「心理的安全性があるか?」という視点で、自分のチームの観察をしてみてください。

 

【参考】
グーグルが突きとめた!社員の「生産性」を高める唯一の方法はこうだ(講談社現代ビジネスオンライン)
→ http://mshn.jp/r/?id=0z7dj2462&sid=4758

ガイド: 「効果的なチームとは何か」を知る(Google re:Work)
→ http://mshn.jp/r/?id=0z7dk2462&sid=4758

「すごい先生のシンプルな授業」辻哲哉氏
→ http://mshn.jp/r/?id=0z7dl2462&sid=4758

 

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