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メルマガ「共創コーチング®」稲垣 陽子

【共創コーチング®コラム】見えない「本音」の引き出し方

本音は見えないのが当たり前

おはようございます。稲垣陽子です。

「部下が本音を隠している気がします」

コーチングをしていると、さまざまな相談を受けますが、なかでも多いのがこれ。「本音の引き出し方」です。

特に、経営者・役職者など、マネージャークラスの方ほど、こういった悩みをお持ちのようです。

たしかに、部下の本心を把握できていた方が仕事もスムーズにできますし、モチベーションアップの施策を練りやすくもなりますよね。

今回は、そんな「本音」との向き合い方について考えていきたいと思います。

まず前提としてお伝えしたいのは「相手が本音を隠している」という考え方自体が、勘違いであるということです。

というのも、本人ですら自分の本音を認識できていない場合がほとんどだからです。

たとえば、みなさんは今、「あなたの仕事に対する本音は?」と急に聞かれたとして、明確に答えられるでしょうか。

おそらく、言い淀んでしまう人がほとんどじゃないかと思います。

実のところ、本当の気持ちなんて、自分ですらわかっていないのです。誰かに話したり、日記に書いたりしてようやく、「私はこんな風に思ってたんだな」と気がつくことって、たくさんあると思うんです。

なのに、いきなり上の立場にいる人から「お前、本音を言ってみろよ」なんて言われたって、パッと答えられるわけないですよね。

まして、不安や不満を言ったら、評価に響くんじゃないかと怖くなって、ますます言えなくなるのは当然のことです。

ですから、もし今、「相手が本音を隠している」という悩みを持っているのだとしても、それで「自分はダメな上司だ」なんて悩まないでほしいんです。

本音は、言えないのが普通なんです。

「言ってくれ」と言われて出した本音なんて、もしかしたら「本音」に見せかけた「建前」かもしれません。

言うつもりはなかったけれど、ついぽろっと出てしまった。そのように、自然に出る言葉こそが「本音」なのです。

 

本音を引き出しやすい質問とは

ではその上で、どのように接したら本音を引き出しやすくなるのか。効果があると私が思う方法は2つです。

1つは、相手の「こだわり」を探すこと。

これは以前、かなり気難しい方のコーチングをしたときに気がつきました。

その方は、社内研修の一環で強制的に参加させられたということもあり、面談中終始不機嫌で、私の質問にも答えてくれませんでした。

「その質問、意味わかりません」
「今日、来るまでに1時間15分もかかってます」
「僕のこの時間にかかっているコストは……」

と、文句ばかり。

私もさすがに途中で「帰っていいですよ」と言いたくなるくらいだったのですが、5分ほど色々な方向から質問を投げかけるうちに、彼のこだわるポイントに気がつきました。

それは「数値」でした。とにかく彼は「数値」に関する言葉をよく使う。

それで私はもしかしたら、と思って角度の違う質問をしてみました。

「年収はいくらですか?」「本当はいくら欲しいんですか?」と思い切って聞いてみたのです。

すると不思議なことに、そこから会話が広がり始めたのです。彼の数値を使った論理的な考え方にフォーカスして質問をしてみたわけです。

結局彼は、そのあと時間ギリギリまでたくさん話して帰られました。

相手がこだわっているところはどこか、という切り口を見つけ、それについて深い質問をしてみる。

こうすると、会話が広がり、本音につながる糸口が見えてくることがあります。

 

「ネガティブな自己開示」で信頼関係を作る

2つ目の方法は「ネガティブな自己開示をする」こと。

部下の本音を引き出す前に、まず自分の本音をぶつけてみるのです。不満や不安、弱音を吐いてみる。

こういうことを言うと、大抵「部下に弱みを見せることなんてできない……」という意見をいただきます。「強くて頼り甲斐のある上司」でいなければと、頑張る方が多いのだろうと思います。

もちろん、私も「俺なんか上司としてダメダメだよな……」と愚痴ってくださいと言いたいわけではありません。

ただ、頑張りすぎる態度は相手から見ると「本音を隠している」ように見えてしまっているかもしれない、ということなんです。

自分の不安は言わないけど、部下に対しては「隠さずなんでも話せ」とグイグイ言ってくる。

ちょっと違和感がありませんか?腹の中を明かさない相手に、リスクを冒して自分の本心を打ち明けようと思うでしょうか?

ですから、もし、「何か不満がありそう」という人がいたら、まずは相手の話をよく聞き、あなたから自分の本音をぶつけてみてください。

でも、本音って言われても業務、人間関係、など様々な視点があります。

相手に響く「本音」を言わないと意味がありません。

では、どの本音を言えばいいのでしょうか。

そのためには、ここでも相手のこだわりポイントが役に立ちます。

相手のこだわっているポイントを探してみてください。

繰り返し言っている言葉はありませんか?声のトーンが上がったり、口ごもったり、力が入ったりする言葉はありませんか?

会社組織なら、数値かもしれませんし、人間関係かもしれませんし、会社のビジョンかもしれません。

そのポイントについて、まずは自分から自己開示をし、本音で話を広げます。

「A商品の売上の話になると、苦しそうな表情をするね」
「僕はA商品の売上戦略についてはこんなふうに思っているんだ」

相手のこだわっているポイントについて、まずは自分が思っている本音を先に自己開示します。

そうして自己開示した上で、今度は「あなたも何か不安に思うことある?」と問いかけてみてください。

順番を間違ってはいけません。無理に引き出すのではなく、まずは自分から歩み寄るのです。

 

ネガティブな本音は、理想を映し出す鏡

不安や不満は、言うのも聞くのも、怖いですよね。

でも私は、そういったネガティブな本音こそ「理想を映し出す鏡」だと思っています。

本音とは、「こうなりたい」というポジティブな願望があるからこそ出てくるものなんです。

「本当はこうなったらいいのに」「こんな組織を作りたいのに」という理想像があるからこそ、そのギャップに苦しみ、ネガティブな気持ちが出てくるのです。

だから、怖がらないでください。大丈夫です。不満や不安を聞くことは、ひいては相手の理想を引き出すことにも繋がります。

どんな本音も伝え合える人間関係が出来上がっていけば、相手もあなたも安心して才能を発揮できるでしょう。

もし、本音が見えてこない人が周りにいたら、今回ご紹介した方法を試してみてくださいね。

では、今週も素敵な一週間になりますように。

 

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