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メルマガ「共創コーチング®」稲垣 友仁

【共創コーチング®コラム】一人の熱が組織全体を動かす ~教育現場で活きる「伝染の法則」~

子どもにも伝染した「親切」の習慣

おはようございます。稲垣友仁です。

先週に引き続き、教育現場で使える理論をお伝えします。
今回のテーマは「伝染の法則」です。自分の行いは、良いことも、悪いこともコミュニティ全体に伝染していくというものです。

つい最近も、「あれは伝染の法則によるものだったんだな」と気が付いたことがありました。

僕の住んでいるマンションには、エレベーターが一機あります。約70戸ほどある家の人々を毎日上下に運んでくれています。

ここに住んでから15年になりますが、僕はマンションに住んだのが初めてで、毎日エレベーターで上り下りするのも初めてでした。

そんな新築のマンションに住み出して3年ぐらい経った時のことです。

その日、僕たち家族は、帰ってきてエレベーターに乗ろうとしました。すると、背丈が私の胸ぐらいまでしかない子どもが先に乗り、ボタンを押して僕たちが入るのを待ってくれていたのです。

「ありがとうございます!」と言って、エレベーターに乗り込むと、彼女は、「何階ですか?」と尋ねました。住んでいる階を答えるとボタンを押してくれました。

僕は、びっくりしました。彼女はごく自然に、当たり前のように親切にしてくれたからです。このマンションの住人たちの中では「エレベーターに先に乗った人が次の人に親切にする」ことが習慣になっていたのです。

降りるときも同じです。ドアの操作盤の前に立っている人が「開く」のボタンを押して、自分より先に相手を降ろさせるのがエチケットになっていました。

驚いたのは、大人だけでなく、彼女のような子どももやっているということでした。

他のマンションや建物のエレベーターに乗ることもありますが、全員が同じように、いつも親切にしているという状況は見たことがなく、おそらくこのマンションだけで行われている習慣なのだろうと推測します。

きっと誰かが始めたことが徐々に伝染していったのだろうと思いました。無意識のうちに、暗黙のルールが出来上がっていったのでしょう。

「これはまさに、伝染の法則だ」

コーチングの勉強をし、教育現場で使えるメソッドの研究をしていた時、思い当たったのでした。

 

「伝染の法則」は諸刃の剣

僕は長年、体育教師やサッカーのコーチなど、子どもたちを指導する教育現場にいました。その時に気が付いたのは、塾などで人気講師と呼ばれる人たちは、この「伝染の法則」を利用するのが上手いのだ、ということです。

説明がわかりやすくプレゼンのスキルが上手いというのも、もちろん重要な要素ですが、それ以上に「誰よりも授業を楽しんでいるか」が鍵になるのです。
子どもたちが講師の話にのめり込むのは、講師自身が楽しいと思うことを提供しているからです。講師の楽しんでいる時の熱量が、生徒にも伝染するのだと思います。

これは、ビジネスの現場でも同じことです。みなさんにも、覚えがありませんか?

熱い思いを持っていて、誰よりも楽しんで仕事をしている人がリーダーだと、その人の熱量が伝染して、チーム全体が活性化していく、ということはよくありますよね。逆に、いつも暗く、文句を言ってばかりの人が上司だと、他のメンバーも愚痴っぽくなったりします。嬉しさや楽しさ、悲しさや不安など、人間の自然な感情が伴った行動は、伝染しやすいのです。

伝染の法則は諸刃の剣です。ポジティブな行動が伝染すれば、チーム全体を活性化させられます。けれども、ネガティブなことも同時に伝染してしまうというリスクがあるのです。なので、特に上司やマネージャーなど、指導する立場にいる人は、この伝染の法則を忘れないでほしいと思います。

 

「心理的安全性」のあるチームに出来ているか?

僕自身も、この法則を意識してグループコーチングを行うことがあります。
目標を決めて月に1回全員で集まる日を作り、進捗の報告をしたり、あえてマネージャークラスの人を外してディスカッションをさせることもあります。

この時に重要なのは、誰か一人だけが発言する状態にはしないようにすること。リーダーが延々としゃべり続けていて、部下が発言しづらい状況になるのは良くありません。

先週の記事でもお伝えしましたが、一方のパワーが強すぎると、「シーソーの法則」が機能して、もう一方は動かなくなります。

「成果を出すチームの共通点は『心理的安全性』があること」と、米グーグル社も発表していましたが、「これを発言したら怒られるかも」「恥ずかしい思いをしたくない」とチームメンバーが萎縮してしまい、誰か(あるいはチームの一部)ばかりずっと発言しているような環境だと、効率が下がり、全体の利益には繋がりにくいのです。

「実行するか否かは別として、自分が提案したことを、このチームは受け入れてくれる」という心理的安全性があり、チームメンバー全員が活発に発言するような組織だと、成果を生みやすいのです。

なので、もしあなたが組織のリーダー的存在なのであれば、自分ではなく、みんなが発言しやすいように、促してみてあげてください。自分自身がみんなの意見を(不安の声やメンバーへの注意だったとしても)積極的に聞く姿勢を見せてください。それが伝染して、多様な意見を受け入れる空気が出来上がっていきます。徐々に、全員がアクティブなチームになっていきます。

具体的な手段としては、会議の時にリーダーが司会をやらないようにする、みんなを見守る役割に徹する、などもおすすめです。メンバーの悩みをすくい上げ、解決策をみんなで考える時間を作るのも良いでしょう。

あなたがやった行動は、感情は、ポジティブなこともネガティブなことも伝染してしまいます。
人を指導するときも同じです。教えるのではなく、楽しさ、面白さ、良さなどを伝えることが一番に大切なことなのです。思っている以上に、あなたには影響力があるのです。

「伝染の法則」を武器に今週も良いチームを作っていってくださいね!

 

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