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メルマガ「共創コーチング®」稲垣 友仁

【共創コーチング®︎コラム】弱さを見せ合えるリーダーシップが、組織を強くする

こんにちは。共創コーチングの稲垣友仁です。

この4月で大学院3年生となりました。
普通は2年で卒業するのですが、あと1年間、奨学金をいただきながら
研究を続けることになりました。最終学年です。

今日は、私が大学院で取り組んでいる研究
「Vulnerability in Leadership(弱さのリーダーシップ)」について、
これまでの進捗をご紹介したいと思います。

弱さを見せることが、なぜリーダーに必要なのか?

皆さんは、「弱さをみせるリーダー」をどう感じますか?

多くの人は、リーダーは強く、冷静で、揺るがない存在であるべきだと思っているかもしれません。
ですが、近年のリーダーシップ研究では、
「自分の弱さや失敗を正直に語ることが、むしろ信頼を生み、
組織の心理的安全性を高める」
という考え方が注目されています。

その中心にあるのが「ヴァルネラビリティ(Vulnerability)」という概念です。
これは「自分の弱さや不完全さを隠さず、リスクを取って人とつながろうとする姿勢」のこと。

私はこの考え方を、教育の現場にいる教師と生徒の関係、
そして企業のリーダーとチームメンバーの関係に応用しようと研究を進めています。

教育現場での研究:教師の「ありよう」が生徒にどう影響するか?

今回の研究では、公立小中学校の約200名の先生方にご協力いただき、
以下のような構造がそれぞれどのように影響を受け合っているのかを調べました。

教師の「ありよう」(成長マインドセット、自律性支援の姿勢)
教師の「Vulnerabilityな言動」(失敗を認める、弱さをさらけ出す)
生徒の「Vulnerabilityな行動」(自分の気持ちや弱さを率直に出す)
結果、非常に興味深いことがいくつか分かりました。

その中の一つを紹介すると、

「自分の弱さを受け入れている教師」のクラスでは、
生徒もまた、自分の弱さをさらけ出しやすくなっている。

つまり、教師が「弱さを見せられる存在」であることで、
教室全体に心理的安全性が生まれ、生徒も自分を偽らずにいられる。
これは、まさに教育の共創の場が形作られていると言えます。

*Vulnerabilityと心理的安全性には相関関係にあるという研究がすでに存在します。
Edmondson, A. (1999)、Slipetz Walter B.(2016)

その他にもいろいろと興味深いことがわかったのですが、
正式には今年度末に研究論文が完成してからお知らせしますね。

この知見は、企業リーダーにも活かせる

実はこの構造は、企業の組織にもそのまま応用できるのではないかと考えています。

・部下が意見を言わない
・チャレンジを避ける
・失敗を隠す

そんな組織は、リーダー自身が完璧なふりをしていることが少なくありません。
「弱さを見せられない空気」があると、メンバーも本音を隠し、チームの創造性が停滞します。

逆に、リーダーが「私もミスをする」「不安を感じている」など
本音を語る姿勢を見せると、部下も安心して自己開示できる
ようになる可能性があるかもしれません。

弱さを見せることは、何でもかんでも思ったことを
オープンにすれば良いという話ではありません。

大切なのは、「勇気が必要な場面で、
自分の弱さを目的や目標のためにさらけ出せるかどうか」
という姿勢です。

そんなリーダーの姿に触れることで、
チームやクラスには心理的安全性が生まれ、
メンバーもそれに触発されて、前向きな学びや挑戦が生まれる。

今、私の研究では、まさにそんな構造が
明確になってきているのではないかと考えています。

企業でも学校でも、「信頼されるリーダー」は、
弱さを受け入れ、それを他者と分かち合える人なのです。

今後の研究と展望

今後は、教師が「自分の弱さをどう受容するようになったか」
という背景やプロセスを、
インタビューなどの質的研究でも深めていく予定です。

また、教師の言動がどのように生徒の行動を媒介しているかをも
明確にできたらと思っています。

これは教育現場に限らず、
「リーダーとメンバーの関係性」に関心のあるあらゆる方にとって、
実践のヒントになると感じています。

共創とは、弱さを見せ合える関係から

私たち共創コーチングが大切にしている
「共創(Co-Creation)」とは、一人ひとりが安心して自分を出し、
違いを尊重しあえる場
を意味します。

それは、強い誰かが引っ張るのではなく、
「弱さを含めた本音でつながることで、本当の意味でのチームが生まれる」ということ。

学校も企業も、そうした“共創の場”であればこそ、
人が育ち、組織が強くなると私は信じています。

引き続き、研究と現場実践の両方から、
リーダーシップのあり方を探究していきたいと思います。

最後に

今回の研究を進めるにあたって、東員町教育委員会、桑名市教育委員会、
そして東員町・桑名市の先生方には本当にお世話になりました。
それぞれの教育委員会にお願いをしたところ、すぐに現場の先生方へお声かけくださり、
アンケートにも快くご協力いただきました。
年度末の忙しい時期だったにもかかわらず、
なんと200名以上の先生方がアンケートに回答してくださったんです。感謝しかありません。
こうして現場の先生方のリアルな声が集まったからこそ、今回の研究が形になりました。
このデータを、今後の教育やリーダーシップの学びや実践にしっかりつなげていきたいと思っています。

ご協力くださった皆さま、本当にありがとうございました!

共創コーチング 稲垣友仁

参考文献
Edmondson, A. (1999). Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams. Administrative Science Quarterly, 44(2), 350–383.
Slipetz Walter B.(2016) .Volitional Vulnerability: From qualitative to quantitative. Dissertation Abstracts International Section A: Humanities and Social Sciences, Vol 79(11-A)(E), 2018.

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