管理職と部下が定期的に1対1で行う面談のことである「1on1ミーティング」は、人材育成や離職防止の効果が期待できます。「部下の離職率が高い」「部下の成長速度が遅い」と悩んでいる方には、特におすすめの方法です。
しかし、管理職のスキルが未熟であったり、上手に行うポイントを熟知していなかったりすると、効果が発揮されない場合があります。そのため、1on1ミーティングの目的や方法をしっかりと理解し、どうすれば上手く実践できるのかを学んでおくことが必要です。
本記事では上手く実践できるようになるために、以下の内容を紹介します。
最後に、1on1ミーティングで悩んでいる管理職の方におすすめの研修も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
そもそも、1on1ミーティングとはどういったものなのでしょうか。「耳にしたことはあるけど、よく分からない」「面談との違いって何?」と疑問を持っている方は多くいるでしょう。ここからは、1on1ミーティングの概要や、面談との違いについて紹介します。
1on1ミーティングとは、管理職と部下が定期的に1対1で行う面談のことです。1回の長さは15〜30分程度で、頻度は1〜2週間に1回程度が一般的です。部下がぶつかっている問題や課題、仕事やプロジェクトの進捗状況、今後の目標などについて話し合いをします。
管理職は、部下がどのような状況でどのように考えているかを把握し、細かいアドバイスを行います。部下のモチベーションを向上させて、仕事の効率アップが期待できる面談です。部下との信頼関係が強くなり、社内のコミュニケーションを円滑にすることが可能です。
しかし、知識やスキルがない管理職が実施すると、部下からの信頼を失ってしまう可能性があります。上記のような効果を発揮させるためには、部下の話をしっかりと聞いて受け止め、正しいフィードバックをすることが大切です。1on1ミーティングを実施する前に、知識やスキルを身につけておきましょう。
1on1ミーティングと人事面談は、混同されることが多いですが、目的や形式、頻度などに違いがあります。人事面談との違いは、以下の表の通りです。
1on1ミーティングと面談にはそれぞれ特徴があるので、しっかりと理解する必要があります。特徴を理解して、適切なタイミングで活用しましょう。
ここからは、1on1ミーティングを行う目的について紹介します。なぜ実施するか理解しておくことで、会社の利益に繋げることが可能です。
1on1ミーティングでは、部下の目標や今後のキャリアに対して、管理職がアドバイスやフィードバックを行います。アドバイスを聞くことによって、部下は自分から成長やキャリアに向けて積極的に行動できるようになり、成長に繋がります。
また、部下が発言しやすい雰囲気を作ることで、部下の主体性や自己実現欲求を引き出すことも可能です。たとえば、部下が自分のキャリアについて話したいと考えている場合は、管理職が部下のキャリアプランをシェアして、具体的な目標設定についてアドバイスすると良いでしょう。
1on1ミーティングでは、評価や指導の実施に限らず、管理職と部下の間で適切なコミュニケーションを実現できます。また、部下が仕事で悩んでいることや問題点を早く発見することができ、シェアすることが可能です。そのため、社内のコミュニケーションを改善し、話を聞きやすい環境を作りたいと考えている場合におすすめです。
部下のモチベーションが上がったり、やりがいを持って働きやすくなったりすることで、組織全体のパフォーマンスにもより良い影響を与えます。
社員が退職してしまう理由のひとつが、「人間関係の悪化」です。実際の退職理由は言わない場合もありますが、社内の人間関係に悩んでいる方は多くいるでしょう。人間関係の悩みを解決させて、離職率を下げるためには、1on1ミーティングが効果的です。
1on1ミーティングを実施することで、部下は自分の悩みや考え、意見などを発言しやすくなります。その結果、部下のストレスや不満が解消されやすくなるでしょう。
1on1ミーティングは良いところばかりではなく、デメリットもあるため注意が必要です。ここからは、1on1ミーティングを行うデメリットを紹介します。
1on1ミーティングを導入して実施する場合は、上司や部下といった立場に関係なく、たくさんの時間を費やすことが必要です。また、必要となる工数も多いことも、デメリットとして挙げられます。
時間や工数が多く必要になることで、1on1ミーティングの効果を感じにくいことがあるため、注意が必要です。また、実施することに対し疑問に思い、不満の声が上がってしまう場合もあります。
1on1ミーティングの効果は一律ではなく、上司や管理職のコミュニケーションスキルによって左右されます。上司や管理職が1on1ミーティングの目的や進め方を理解していないと、適切に実施することは難しいでしょう。理解が不十分な場合は、トレーニングや研修を受けて知識を習得することが大切です。
ここからは、1on1ミーティングの準備や実践する方法について紹介します。理解しておくことで、企業で1on1ミーティングを実践しやすくなります。
まずは、1on1ミーティングを実施する目的を部下に伝えて、部下が自分の問題点や考えを自由に話しやすい環境を作ります。当日話すテーマを設定しておくと、部下の理解を得やすく、効率的なミーティングを実施することが可能です。設定するテーマは、自己評価や目標の振り返り、課題や悩み、キャリアプランなど、部下が話しやすい事柄や解決したい内容にすると良いでしょう。
続いて、当日のアジェンダを作成し、事前に部下に共有します。部下からのフィードバックもしっかりと受け入れて修正することで、ミーティングをスムーズに進行できます。また、部下の業務内容に合わせた質問内容も用意しておきましょう。
以上の準備が完了したら、1on1ミーティングを実施する時間と場所を確保しましょう。上司の都合だけでなく、部下の都合も考慮した時間と場所を設定することが重要です。また、時間に余裕を持ち、静かな場所で実施することがおすすめです。さらに、部下と日常的にコミュニケーションをとり、信頼関係を築いておくことも大切です。
1on1ミーティングの当日は、部下の体調や機嫌を確認し、気軽に話しかけやすい雰囲気を作っておきましょう。部下の体調が優れない場合は、日程を調整することも大切です。
ミーティングを開始したら、会話の焦点を明確にして、効率良く時間を使えるようにしましょう。基本的に、30分程度で終わらせることが理想です。部下が抱えている問題点や課題について、上司は聞き役に徹して把握します。途中で部下の話を遮らないように注意してください。
また、部下が目標を達成していない理由をはっきりさせるために、質問形式で投げかけましょう。解決策を自分自身で見つけてもらえるように、上司は提案するのではなく、部下が考えを整理して、アイデアを見つけ出せるようにすることが重要です。
最後に、部下が見つけ出したアイデアをもとに、上司と部下で一緒に必要な行動計画を立てましょう。長期的ではなく、すぐに実行できる計画を立てることがおすすめです。
1on1ミーティングを終えた後は、部下が提案した解決策を実行した結果や、改善できた点についてフィードバックを伝えましょう。話し合った内容が実行されているかどうか、結果がどうだったかを定期的に振り返ることが大切です。必要に応じて、フォローアップを実施してください。
その後、次回の1on1ミーティングの日程調整を行いましょう。次回までにどのような課題に取り組むべきかを、部下と共有しておくことが重要です。
また、部下のモチベーションが下がらないように、適宜サポートを行いましょう。具体的には、フィードバックの中に肯定的な言葉を加えたり、部下のやる気を引き出す質問をしたり、ストレスの軽減策を提供したりするなどです。
続いて、1on1ミーティングに必要な管理職のスキルについて紹介します。管理職のスキルが不足していると、1on1ミーティングは失敗してしまう可能性があるため、スキルを身につけておくことが大切です。
1on1ミーティングにもっとも必要な管理職のスキルは、傾聴力です。管理職は、部下の気持ちをしっかりと汲み取り、理解する必要があります。傾聴力を持っている上司であれば、部下は心を開いて話をしてくれるため、部下が抱えている問題点や課題を洗い出すことが可能です。
部下と目を合わせて向き合ったり、興味を持って話を聞いたり、聞き返しをしたりすることが有効です。最初は難しいかもしれませんが、ロールプレイングをしたり仕事以外の日常生活で実践したりすることで、傾聴力を身につけることが可能です。
管理職がコーチング力のスキルを身につけていると、部下が自分から目標を設定して、目標を達成するために必要な計画を立てて実行するためのサポートができるようになります。また、部下のモチベーションやスキルに合わせて、ひとりひとりにアプローチすることも可能です。
コーチング力を身につけるためには、コーチングの専門家から指導を受けて、知識を学ぶことがおすすめです。他にも、コーチング力を身につけるための本を読んで知識を得ることも良いでしょう。
管理職に質問力のスキルが必要な理由は、部下が仕事について深く考える機会を与えて、自己解決力を高めさせるためです。質問力は、先ほど述べたコーチング力に必要なスキルでもあります。クローズドクエスチョン(選択肢の中から答えてもらう質問)とオープンクエスチョン(自由に回答できる質問)を使い分けることが大切です。
質問力のスキルを身につけるためには、積極的にコーチングの研修やトレーニングを実施することが重要です。また、普段から「どうしてその考えになるのだろう?」「本当にこの方法でいいのか?」などと疑問を持って過ごしましょう。
1on1ミーティングを成功させて良い効果を得るためには、部下の本音を聞き出さなければいけません。しかし、上司と部下の関係が浅い場合は、本音を聞き出すことは難しいでしょう。ここからは、1on1ミーティングを上手に行うためのポイントを5つ紹介します。
それぞれ、詳しく解説します。
1on1ミーティングだけで上司と部下の信頼関係を築くことは難しいため、日常的なコミュニケーションを通じて信頼関係を築いておくことが大切です。
近年では、「インフォーマルコミュニケーション」と呼ばれるカジュアルな雑談による関係構築の方法が注目を集めています。リラックスした状態でコミュニケーションをとることで、部下のメンタルを改善したり、新しいアイデアを生み出したりする効果が期待できます。
日常的な雑談を意識するだけでなく、デスク配置や席の配置を見直すことも大切です。部下が上司へ声をかけやすい環境を作りましょう。
部下に本音で話してもらうためには、話しやすい雰囲気を作ることが大切です。部下の話を丁寧に聞いて共感し、受け止める姿勢でいることで、部下は心を開きやすくなります。
具体的には、部下が話しやすい場所や時間帯で実施したり、落ち着いたトーンで話をしたり、相手の話についてメモを取って忘れないようにしたりすることがおすすめです。部下が安心して話せるような雰囲気を作り、部下の本音を聞き出すようにしましょう。
1on1ミーティングの際は、部下の話を真剣に傾聴しましょう。疑問に感じることがあったとしても、話を途中で遮ってはいけません。上司が否定的な態度を取ってしまうと、部下は心を閉ざしてしまうため、本音を聞き出すことは不可能です。
どのような内容であっても、まずは肯定することが大切です。部下が話を終えたら、話のポイントをまとめて、共感や理解を示しましょう。話をまとめてあげることで、部下は自分の考えを整理しやすくなります。
1on1ミーティングでは、話をしっかりと聞くことも大切ですが、適切なタイミングで質問も行いましょう。質問をすることで、部下の話を深掘りすることが可能です。部下が発した言葉から、ニーズや課題を引き出してあげましょう。
1on1ミーティングでは、リラックスした雰囲気で行うことが理想的です。しかし、目的や意味を意識せずに雑談だけになってしまうことは避けましょう。雑談はお互いの距離を縮めるために有効ですが、毎回雑談になってしまうと、1on1ミーティングを行う意味が薄れてしまいます。
効果的な1on1ミーティングを実施できるように、目的や意味を意識して取り組むことが必要です。
続いて、1on1ミーティングのテーマ例について紹介します。事前に当日話すテーマを設定しておくことで、部下の理解を得やすく、効率的なミーティングを実施することが可能です。
部下が抱えている、業務や組織に関する悩みや問題点を取り扱います。たとえば、現在担当している業務の進行における悩みや、チームへ感じている課題、人間関係での問題点などを質問して聞き出しましょう。悩みがないという場合は、上司への要望や希望を聞き出すこともおすすめです。
部下の目標設定も、1on1ミーティングで重要なテーマのひとつです。目標設定をテーマに設定した場合は、以下のような事柄を話しましょう。
上記のような内容について話をすることで、今後の目標を設定することが可能です。
1on1ミーティングのテーマとして、部下の将来のキャリアについて設定することも可能です。上司が、部下のキャリアや能力開発をサポートしやすくするためには、以下のような内容で質問しましょう。
部下がはっきりとしたキャリア像を持っていない場合は、仕事で大切にしている価値観ややりがいを聞いてみることがおすすめです。
会社の戦略や方針なども、1on1ミーティングの話題として取り上げやすいです。ただ会社の戦略や方針を伝えるのではなく、「なぜその戦略を行っているのか」「どうしてその方針になったのか」などの経緯や理由を交えながら話しましょう。
会社の戦略や方針の背景が分からない状態ですと、部下の理解を得ることは難しくなってしまいます。一方的に伝えるのではなく、お互い理解しながら話を進めることを意識すると良いでしょう。
最近のモチベーションについても、1on1ミーティングで話すべきテーマのひとつです。モチベーションに関する理由は2種類あり、モチベーションを向上させるための話題と、低下の予防に関する話題になります。
モチベーションを向上させたい場合は、業務への成果や社内の評価、チームにどのような良い影響を与えているかなどについて話しましょう。モチベーションの低下を予防したい場合は、仕事のストレスや人間関係の悩み、不安に思っていることなどについて話を聞き出すことがおすすめです。
部下の健康状態について話す場合は、肉体的な部分だけでなく、精神的な部分も含めて確認することが大切です。具体的には、疲労がどのくらい溜まっているかや、しっかり休息を取れているか、睡眠時間を十分に確保できているか、体調が変化していないかなどについて話しましょう。
1on1ミーティングでは、プライベートな話題もお互い共有することで、信頼関係を深めることが大切です。オープンな対話ができるように、上司が率先してプライベートな話題を共有しましょう。具体的な話題は、休みの日の過ごし方や趣味、好きなスポーツや食べ物などです。
自己評価も、1on1ミーティングで取り扱いやすいテーマのひとつです。部下に最近の業務について振り返ってもらい、自己評価をしてもらいましょう。部下から自己評価を聞いたら、良い点や改善点を探しましょう。
良い点や改善点を探す場合は、上司からの評価も交えることが大切です。また、自己評価と一緒に目標設定も実施すると、より良い効果が発揮されます。
最後に、1on1ミーティングのおすすめ研修を紹介します。今回紹介するおすすめの研修は、共創コーチング式1on1ミーティング研修です。共創コーチングでは、組織の持続的な成功を実現するために、1on1ミーティングの導入を推奨しています。学べる内容や、研修の流れについて紹介します。
共創コーチングは、部下の成長に焦点を当てつつ、上司が持っているリソースも掛け算することで、効果的な成長とマネジメントによる成果を育んでいく対話のプロセスです。その他に学べる内容は、以下の通りです。
上記の内容を学ぶことで、上司と部下が共創する「場」を作り出し、両者が自律的に対話を進めていけるようになるでしょう。実際に学んでみたい場合は、公式ホームページをご覧ください。
共創コーチングでは、最初に担当者からヒアリングを行って組織の現状を把握します。組織がどのような状態にあるかを推測・判断し、その結果を元に目標設定や研修設計を行います。つまり、組織によって研修の内容は異なるということです。
その後、研修とともに実際に部下に1on1ミーティングを実施し、その過程をコーチングして継続的に支援しています。研修を行って終了するのではなく、研修後の振り返りを大切にしており、研修全体の評価や効果を測定しています。
なお、カリキュラムの期間や回数は、組織の状況や予算によってカスタマイズして提案しています。
1on1ミーティングは、部下のモチベーション向上や社内のコミュニケーションの円滑化、離職率を下げる効果があります。しかし、準備や実践方法を理解していなかったり、管理職のスキルが不足していたりすると、時間を無駄にしてしまい、効果が薄くなる可能性が高いでしょう。
そのため、共創コーチング式1on1ミーティング研修を受け、1on1ミーティングをうまく進めるためのポイントを学ぶことがおすすめです。共創コーチングでは、それぞれの組織に合った内容の研修を受けることが可能です。
気になる方は、公式ホームページより問い合わせてみてください。