おはようございます、稲垣陽子です。
コーチングの場において、クライアントに気づきが起こるというのは特別な瞬間です。
コーチにとってクライアントの「気づいた!」「思ってもみなかった」などの言葉を
特上の褒め言葉と受け取る人も多いでしょう。
しかし、それに囚われすぎると「相手を変えたい」「気づかせたい」という
衝動に駆られてしまうことがあります。
「もっとこう考えたらうまくいくのに」「こうしたらいいのに」——そんな思いが先行し、
相手の自己認識を変えることを目的に対話を進めてしまうのです。
でも、もし誰かから「あなたを変えたい」と思われながら
話をされたら、どう感じるでしょうか?
「なぜ変わらなければならないの?」と疑問に思ったり、
「君はダメだ」と言われているように感じたりして、
対話自体をシャットアウトしたくなるかもしれません。
では、対話の中で「気づき」はどのように生まれるのでしょうか?
ICF(国際コーチング連盟)では、
コーチの行動基準の一つに [Evoke Awareness](気づきを引き起こす) という項目があります。
実はこの項目は以前、 [Creating Awareness](気づきを創造する) という名称でした。
このことから、以前は気づきとは「無から有を創り出すもの」と捉えられていたと考えられます。
しかし”evoke” という言葉には「呼び起こす・喚起する」という意味があり、
もともと人の内側にあるものを引き出し、目の前に現れさせるニュアンスがあります。
つまり、気づきは
「その場で創るもの」ではなく、「自らの内省と探求の中で自然と生まれるもの」
なのではないでしょうか。
こうした視点で振り返ると、気づきは何か特別な場で起こるものではなく、
日々の会話やちょっとした出来事の中に散りばめられていることが分かります。
前回のメルマガでご紹介した心理学者カール・ロジャースも
「人は自己成長の力を持ち、適切な関わりの中で気づきを得る」と述べています。
今週はぜひ、あなたの周りに散りばめられている
「気づき」を拾い集めてみませんか?
もし一人では難しいと感じたら、コーチをつけるのも一つの方法です。
コーチの役割は、「クライアントに気づきを与えること」ではありません。
対話を通して クライアント自身が内省し、
探求を深めることをサポートする ことで、自然と気づきが生まれるように促すのです。
実際私もコーチになって20数年、自分にコーチをつけていますし、
20年以上ずっとコーチをさせていただいている方もいます。
継続したコーチングを体験することで感じることは、
「気づきやすい体質」になっていること。
コーチングを受けることで、内省し、自分自身を洞察することで
気づきを得る習慣がつき、「気づきやすい体質」になるとも言えるとも思います。
では、どうぞ、良い1週間をお過ごしください。
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