記事一覧
メルマガ「共創コーチング®」稲垣 陽子

【共創コーチング®︎コラム】「きれいな対話」には落とし穴がある

おはようございます。稲垣陽子です。

コーチングは、目の前の人と思考を刺激し続ける
創造的な「対話」を作り出すことです。

しかし、「対話する」ことだけにフォーカスをあててしまうと、
よどみなく、流れるように対話が続くことが
良い対話であると感じてしまうことがあります。

途中で対話が途切れたり、相手が答えに窮したりすると、
うまく対話が作れていないのではないかと不安になることがあります。

よどみなく、流れるような対話は「きれいな対話」になります。
「きれいな対話」とは、当たり障りのない、
リスクのない、感じのいい対話のことです。

それだと、クライアントの頭の整理にはなっても
気づきにはなかなか繋がりません。

なぜなら、本当に言いたいことは
その人にとってはどろっとして触れたくないものであることが多いから。
無意識下で本人すらも気づいていませんが、
できれば隠しておきたい、バレたくないと思っていたりします。
そう考えるときれいな対話をすることは、
格好の隠れ蓑とも言えるでしょう。

本心は他にあるのでは?

それに気づかせてくれた体験談をお伝えします。

大抜擢で重要なポストについた方の
コーチングをしていた時のことです。

何を質問しても理路整然と、感じよく話してくれるのですが、
聞いている私にとっては
事前に用意された当たり障りのない演説を聞いているような印象で、
言葉はわかるけれどなかなか伝わってくるものがないと感じていました。
その方の本心は、
言葉とは違うところにあるような感じが
ずっとしていました。

その時の私にはまだその方との関係性も浅かったし、
立場のある方でもあったので、このまま気持ちよく話してもらって、
対話が続けばいいかなというのを選んでしまいそうになっていました。

でも、それはプロのコーチではないと思いとどまり、
ドキドキしながらも正直に思っていることを
まずはフィードバックとして伝えました。
(きれいな演説を聞いているようで伝わってこない・本心は他にあるように私には感じる)

そして手元にあったペットボトルを指して、
これが社員だとして何を言っても問題がないとしたら
何を言いたいですか、と問いました。

その方は、一瞬グッと噛み締めるような顔をして、
静かに、でも、とても力強い声で言い放ちました。

「ふざけんな!」と。

私はその言葉を聞いて、
大抜擢されるだけのその方の情熱と底力を感じたと同時に、
その方にようやく近づけた感じがしたのでした。

感じの良いきれいな対話だけでは
掴めなかった感覚だっただろうと思います。

「きれいな対話」も「どろっとした対話」も二人の総意で決める

当たり障りのない感じのいい
「きれいな対話」は安心感にはつながります。

でも、思考をし続ける対話を望むのであれば、
問いかけられて答えに窮したり、
思わず考え込んでしまうことは自然に起こるはずです。

ただし、どのレベルの対話を行うか、
これは二人の総意で決められます。

どの程度思考を刺激したいか、
コミュニケーションのスキルというよりも、
二人の総意で対話は作られています。

どちらかが当たり障りのないきれいな対話をしたいと望めば、
その目的にそって相手は呼応して対話は作られます。
いいも悪いもありません。

ぜひ、今週は、目の前の人とどのレベルの対話を行いたいか、
意図を持って関わってみてください。

「きれいな対話」をえらんでもよし。
どろっとした対話を選んでもよし。

どちらがいいというのではなく、コミュニケーションを選べて、
共に作れている感覚が、何よりも人と関わる充実感につながってくると思います。
ぜひ、試してみてくださいね!

————————-

※上記のコラムは、当社発行メルマガに掲載されたバックナンバーです。
下記のバナーから登録いただけば、毎週月曜日朝8時に、このようなコラムが届きます。
意識をもって一週間を始めることができます。

【共創コーチング®︎コラム】好奇心を育てる
一覧に戻る
【共創コーチング®︎コラム】大学院体験記3:大学院生活の様子