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メルマガ「共創コーチング®」稲垣 友仁

【共創コーチング®︎コラム】『気持ち』は、人を動かす

おはようございます。稲垣友仁です。

仕事柄、小学校や中学校の授業を参観させていただくことがよくあります。
子どもたちが集中して聞いているなと思うクラスの先生は、
気持ちをうまく伝えている場合が多いと思います。

「先生は〜って感じたけど、みんなはどうかな?」
「〜さんの意見を聞いて、先生〜って思いました。」
など、先生がそういう気持ちを語る時には、
子どもたちもじーっと先生を見ていることが多いように思います。

自分の気持ちを言えばすべてがうまく行くということを
話したいわけではないのですが、
気持ち、要するに人の感情についてセンサーを持ち、
その気持ちに配慮した適切な対処ができる人は、
人をうまくモチベートできる人だと思います。

これは子どもたちに対してだけの話ではなく、
大人に対しても同じことで、気持ちや感情をうまくキャッチし、
それに対応することは、人間を統率するものにとって
欠かすことのできない力だと僕は思います。

運動会の練習授業にて

僕の知り合いの、元小学校の女性教師Sさんから聞いたお話です。

ある年、Sさんは3年生の担任になりました。
彼女は、その小学校でいうと中堅教員にあたります。
4年生の担任に、教師になったばかりの女の先生
(初任者といいます)A先生がいました。
この学校の4年生は1クラスなので、
いろいろなことを初任者のA先生は
自分自身でやっていかなければいけません。

普通は、初任者の先生は、ベテランの先生の後ろについて、
その先生のやり方を見ながらやることが多いのですが、
この方は、1年目から自分でやっていかなければなりません。

しかし、初任のA先生は、分からないことだらけだと思うのですが、
毎日本当に頑張っていたそうです。

秋になると、運動会の練習の季節になります。
運動会の練習は3年生と4年生合同で行います。
子どもたちでは4年生が3年生を引っ張るという形を取るので、
この初任のA先生が運動会の合同練習を仕切ることになりました。

練習をうまく進めることができるように、
前の日、Sさんも一緒に、
初任のA先生と運動会の練習授業を仕切る練習をしたそうです、

どうやって子どもを動かすか?、
その場所に行って、子どもにこういう風に言うと、
子どもはこういうふうに動く、っていうことを
子どもがいない運動場で、
一生懸命シュミレーションしながら練習したそうです。

そして、初任のA先生が初めて仕切る
運動会の練習授業の日を迎えました。

その初任のA先生が指示をしている時に、
3年生は聞いていたのですが、
担任している4年生の子たちが、石を投げ合ったり、
ちょっかいを出しあったりしてふざけていました。

そこで、中堅教員のSさんは、タイミングを見て、
ふざけている子に対して注意をしました。
そうしたら、それに対して笑った子がいたそうです。

Sさんは、全体の練習をストップさせました。
そして、彼女は言いました。
「いま笑った子がいたよね。
みんなの前で注意されたのに、クスって笑った子がいたよね。」

そうしたら、全体がシーンとなりました。
「誰かな?」
だれも出てきません。
「この辺から聞こえたよ」とだけ言って、
彼女は犯人探しはせずに次のように言いました。
「今、4年生のA先生は、
毎日夜11時まで学校に残って仕事をしてるよ。
一生懸命だよ。
1年目だからわからんことはいっぱいあるよ。
それは、あなたたちもわかっているよね。
だけど、こんなに一生懸命やっているんだよ。
昨日も、今日のこの時間のために練習してたんだよ。
あなたたちそれでいいの?。」
と4年生の子たちに問いかけました。

みんな、シーンとなっています。
聞いている向こうで、
4年生の担任のA先生が涙ぐんでいました。

その後、初任のA先生が指示した時は、
4年生もかなり一生懸命やるようになったそうです。

授業の後、Sさんは、
もう一歩突き詰めようと思って、
運動会で笑った子を探しました。

何人かのあてに聞き込みをしたところ、
だいたい誰がそうしたかが分かってきました。
そして、その子に聞きました。
「先生が注意した時に、もしかして笑った?」
と聞いたら
「僕、〜くんがふざけたことが面白くって
わらっちゃいました。ごめんなさい」
正直にしゃべったそうです。

これは、担任である、初任のA先生に聞いてもらおうか
ということで、その先生のところへ連れていったら、
「僕、ふざけてて、笑っちゃって、
本当に反省しています。ごめんなさい。」
と初任のA先生に謝ったそうです。

この子は、最近転校してきたちょっとツッパった感じの子で、
自分から誤ることがなかったので、
心配していたそうですが、
とても素直な面があると気づいたそうです。

気持ちを伝える事

先生が一年目だと、子どもがふざけた声を授業中にだしたりとか、
隣の部屋にいるとそういうのが聞こえてくる。
どっかで、ビシッとやらないといけないなと
Sさんは思っていたそうです。

でも、叱るという方法だと、
その担任の先生の立場をなくすことになるかもしれないし、
その場しのぎの対処方法で根本的に変わらないから、
どうしようかとずっと機会を狙っていたそうです。

Sさんが、初任のA先生が遅くまで
仕事をしていることを代弁したシーンは、
どうしてこのようなことが言えたのか聞いたら、
「私も前日遅くまで付き合ったので、
気持ちがわかったんです」と言っていました。

ベテランの先生でも、
普通なら大きな声で叱って終わることが多いシーンなのですが、
初任のA先生の気持ちを伝えたことが、
子どもたち自らが変革するきっかけになったと思います。

何かを伝える時、特にここ一番という時は、
自分の気持ちも乗せて伝えること
とても重要なポイントなのかもしれません。

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