おはようございます。稲垣友仁です。
コーチングについて関わり始めて25年、
コーチングを教え始めてから16年が経ちます。
その間、徐々にコーチングが世の中に広まり、
現在、多方面で講演・研修・セミナーを行なっています。
このコーチングの広がりは、
コーチングが人々にとって何らかの成果を提供している証だと感じています。
イギリスで22年の教育現場の経験を持つコーチング心理学者、
教育心理学者として現在活動しているマーク・アダムスの著書
『Coaching Psychology in Schools』によると、
コーチングが成功する要因を円グラフで
下記のように表していました。
『コーチングが成功する要因』
1、クライアント自身が元々持っている力によるもの 40%
2、コーチとの関係性 30%
3、コーチのモデルやテクニック 15%
4、期待効果 15%
上記は「コーチングが成功した要因は何だったか」を
調べたものです。
1、クライアント自身が元々持っている力によるもの 40%
このグラフを見ると、コーチングの成果は、
クライアントが元々持っている力によるものが40% と、
とても大きいことになります。
個人が持っている資質、強み、動機、自信、社会的支援などは、
どの要因よりも成果に大きく関わっているようです。
と言うことが分かれば、
とにかくコーチングではクライアントに
自分の力を使ってもらうことが大事だということがわかります。
コーチングを学んだ初心者の方は、
すべてコーチが何とかしようとしてしまうことがよくあります。
それでは難しく、クライアントに考え、行動してもらい
何よりもこのコーチングを自分ごととして動いてもらうことが
重要になることがわかります。
そして、クライアント自身もこのコーチング中に力をつけて
成長していってもらうと、尚いいのです。
2、コーチとの関係性 30%
そして次に要素として大きいのは、
コーチとクライアントの間に存在する関係性の質に対する認識によるものです。
この部分が30%と次に大きい割合を示しています。
クライアントが、その関係を前向きで協力的なパートナーシップとして
どの程度経験しているかによってこれは示されます。
コーチとクライアントの間に質の高い関係性の絆が存在し、
クライアントは自分の視点が傾聴され評価されていることを感じ、
自分の経験が検証され、コーチを変革の担い手として信頼し、
その関係性に安心感を抱いていると言うことが影響しているようです。
コーチングの効果を決定する上で
非常に重要な協力的パートナーシップを確立し、
維持することが影響するのです。
3、コーチのモデルやテクニック 15%
そして何よりも衝撃的な結果がこの部分です。
コーチングの成果は、
コーチのコーチングモデルやスキルによるものは、
たった15%しか影響がないということです。
特定のモデルやテクニックは、
私たちが考えるよりも重要ではなく、影響が全然ないとは言えませんが、
このグラフから見るとスキルだけでコーチングの成果をなんとかしようとするのは、
三輪車で名古屋から東京に向かうような、
成果には程遠くなるような選択を行なっているイメージを持ちます。
4、期待効果 15%
そして最後は、クライアントがこのコーチングにどれぐらい期待しているか
という期待効果が15%を占めるようです。
期待効果というのは、
コーチングに期待しているという想いの効果が
15%ほどであるということです。
よく、プラシーボ効果という言葉が医療分野で使われます。
患者に何でもないサプリを「効果がある」といって飲んでもらうと、
本当に病気が治る患者も何人か出るそうです。
それをプラシーボ効果と言います。
コーチングの成果にもこういったプラシーボ効果のようなものも
含まれているようです。
上記の結果から、
モデルやテクニックは想定するほど重要ではなく、
ポジティブな結果を生む可能性を高めるには、
変化に共通する他の要因に確実に目を向けなければならないということです。
言い換えれば、私たちが学ぶ技術的なアプローチの実現にしか関心がない場合、
他のはるかに重要な要素を無視していることになり、
効果を上げる可能性は低くなるのです。
何度も言いますが、85%はスキル以外の他の要因が影響している
ということなのです。それを使わない手はない。
ですので、成果に向けたコーチングを行う上で、
コーチが意識しなければならないことは、
・クライアントが最初から持っているリソースをコーチが認識し、
できればそれをうまく使ったコーチングの展開を考えることと、
クライアントの成長を促すことにフォーカスする
・コーチとクライアントの関係性の質に着目し、良好に保つ努力をすること
・コーチングに期待を持たせるイメージを持たせること
・コーチングスキルはある程度あればいい
ということかなと思いました。
この情報は、公立小学校・中学校を経験してきた自分としては、
何となく思っていたことを表現してもらった感じがあります。
公立小学校・中学校では、学力の高い学校(地域)というのがほぼ決まってきます。
先生は、定期的に変わります。
でも学校間の学力は大きくは変わらない。
この現象を説明するには、
教師のスキル以外の部分にも着目しなければならないと
ずっと思っていましたし、何とかトライできないかと考えてきました。
結果を出している教師を見ると、
生徒との関係性、生徒同士の関係性、親の信頼などにもアプローチしていました。
何より、生徒が成長することに全ての授業や行事、
学校生活はフォーカスされており、クラスには心理的安全性と共に、
前向きに伸びていこうというマインドセットが漂っていました。
経験的に、教育はスキルが2割、環境が8割と言ってきましたが、
あながち間違っていなかったように今回の情報から思いました。
参考文献:
Coaching Psychology in Schools
Mark Adams, Routledge
https://mshn.jp/r/?id=150ld3131&sid=4758
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