おはようございます、稲垣友仁です。
最近流行りの「心理的安全性」。
企業の人材育成に限らず、学校教育の現場でもこの言葉が、最近出てくるようになってきています。
では、どうして教育という文脈で「心理的安全性」が必要なのでしょうか。
脳科学の視点から見ると、人は心理的安全状態にあると、脳の「前頭前皮質(前頭葉、前頭前野、前頭連合野と呼ぶこともある)」という、人のおでこから頭頂部にかけてある大きな部位が、活発に動きやすくなる、ということがわかっているそうです。
この部位は、脳の中でも最も進化的に新しく、人の意思決定や感情抑制など様々な高次機能を担う「脳の司令塔」と言われる、とても重要な部位です。
では、逆に心理的不安な状態、危機やストレスがかかった状態になるとどうなるのでしょうか。
人間はストレスや危機を感じると、脳の視床下部というところが反応します。次いで、視床下部の真下にある下垂体というホルモンを調節する部位が反応するそうです。この下垂体から出されたホルモンは副腎皮質を刺激し、その結果副腎皮質からコルチゾールというストレスホルモンと呼ばれるものが出ます。これが血液に乗って全身を駆け巡ります。
たとえば、プレゼンや舞台など緊張する場面に立つと、コルチゾールの値は10~20分
間の間に2~3倍にまで増加することが分かっています。うつ病患者の方はコルチゾール値が高いことからもコルチゾールが高い状態が長く続くと色々な支障をきたすようです。
また、人は心理的危険状態になると、直近の危機を脱するために必要な臓器のみに血流を集中させようとするメカニズムが働きます。その結果何が起きるかというと、脳の司令塔である「前頭前皮質」に血がまわらなくなり、一時的に統制が効かなくなるのです。
これを聞いて合点がいったのが、
・いつもなら、流暢に話せるプレゼンも、怖い役員の前で話すと緊張して頭が真っ白になる
・誰から見ても良い人が、ストレスが原因なのか、急に皆が驚く事件を起こす
・貧困による毎日のストレスや恐怖から低学力になる
など、
過度のストレスや危機にさらされた状態の人は「前頭前皮質」がうまく使えず、私たちが普通と思う行動ができにくくなっている状態なのです。
だから、教育では「心理的安全性」が必要なのです。
教育で大切なことは、安心安全な場で、「前頭前皮質」が他の何者にも邪魔されずに動ける状態をまず作ってあげることなのです。
すでに自信がある生徒には、ある程度のストレスが刺激となって学習効果がでるかもしれませんが、そうではない場合、下手に不安ばかりをあおることは、根本的な力がつかない可能性があるのです。
教育では、安心安全の中で考えさせる環境を作り、「前頭前皮質」をうまく働かせる環境に身をおくことが学習効果をあげるために必要な要素になるのです。
参考文献:
『最新の脳研究でわかった! 自律する子の育て方 (SB新書)』
工藤 勇一 (著)青砥 瑞人(著)SBクリエイティブ (2021)
https://mshn.jp/r/?id=135sf2462&sid=4758
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