おはようございます、稲垣友仁です。
先週、東京でポジティブ心理学の創始者であるマーティンセリグマンさんのセミナーに参加してきました。
※写真は、左からエミリー・スミス氏(TEDトーク2017年10傑)、私、マーティン・セリグマン氏(ポジティブ心理学創設者)、エド・ディーナー氏(イリノイ大学名誉教授ドクターハピネス)
現在、ポジティブ心理学は、心理学の分野でも人々の「幸福」にスポットをあてて行う学問として、アメリカのみならず世界的に注目されている学問です。
これまでの通常の心理学は、マイナスを0にするために行うものが多く、うつや神経症などを中心に扱っていく学問でしたが、最近はパフォーマンスを上げるためだったり、成果をだすために、よりよい科学的根拠が求められるようになりました。
プラスをよりプラスにする学問。
要するに、目標達成だったり、成果をだすことだったり、幸せになることなどを目指す分野がポジティブ心理学の分野だと言っても過言ではないと思います。
強みやフロー理論など人材育成やスポーツ指導などでもよく出てくるものは、このポジティブ心理学の分野に入ってきますし、教育で注目されている非認知能力(やり抜く力、好奇心など)もこの分野に入ってきます。
よって、人の目標達成を支援する、コーチングを使っている方にとっては、必須の学問ということになるかと思います。
ポジティブ心理学には、いろいろなテーマがあるのですが、今日はその中心核である「幸福」について簡単にお話ししたいと思います。
近年では幸福の科学的調査のために、
「well-being(ウェル・ビーイング、良好状態)」
という概念を使うことが多くなってきました。
「ウェルビーイング」(well-being)とは、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念で、「幸福」と翻訳されることも多い言葉です。
1946年の世界保健機関(WHO)憲章の草案の中には、「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあることをいいます(日本WHO協会:訳)」と書かれています。
well-being(ウェル・ビーイング、良好状態)の調査によって分かったことが、
主観的に幸福な人は、そうでない人に比べて、病気が少なく、寿命が長く、収入が多い。
長寿という部分では、平均寿命が、運動を続けている人で3年延び、喫煙しないことで7年のび、主観的なウェルビーイングが良いと8年伸びるという結果が出たそうです。
さらに、最新の研究では、政治もウェル・ビーイングが影響しているそうで、先のアメリカ大統領選をウェル・ビーイングの高い低いで分けてみると、ウェル・ビーイングの低い人は、トランプに投票していた人が多いことがわかったそうです。
つまり、今の世の中に満足している人は現政権に投票し、今の世の中に満足していない人は改革を求めるという構造が研究でわかってきたそうです。
ですので、政治家の方は、今後10年のウェル・ビーイング度が上がると有権者に思わせるような施策を提案できると、当選する可能性が高くなるとマーティンセリグマン博士はおっしゃっていました。
ソニア・リュボミアスキーは、人は幸福を感じるようになると、生産的、行動的、健康で、友好的で、創造的になると述べています。
well-being(ウェル・ビーイング、良好状態)の高低は、私たちの生活のあらゆる部分に影響を与えていることがわかります。
東京でのセミナーに話を戻すと、セミナーでは、4人のアメリカ人が来日していて、その中のエド・ディナー博士(ドクターハピネスと言われている)が幸福度を測るスコアを紹介してくれました。下記に紹介します。
「Flourishing Scale」
Flourish(フラーリッシュ)とは、「繁栄する」「栄える」という意味の英単語で、一時的な幸せと比較される概念で、豊かさや幸福が持続的で末広がりなイメージが含まれています。
幸福が続く状態ということ。
あなたは次の 8 つの文にどの程度同意しますか?
それぞれの文について、1 から 7 の選択肢から、当てはまるものを選んで下 さい。
7. まったくそうだ
6. そうだ
5. ややそうだ
4. どちらでもない
3. ややちがう
2. ちがう
1. まったくちがう
・私は目的や意味のある生活をおくっている
・私の人間関係は私にとって支えであり,価値あるものだ
・私は日々の活動に興味をもって取り組んでいる
・私は他者の幸福や健康に,積極的に貢献している
・私には大切な活動(勉強,仕事等)のための能力や実力がある
・私はよい人間であり,よい生活をおくっている
・私は将来について楽観的だ
・人は私を尊重してくれる
今後は、
「ウェルビーイング」(well-being)
という言葉が多く使われる世の中になってくると思います。
人材育成でも教育でも従業員や生徒たちの「ウェルビーイング」(well-being)を上げるために何をしていくのか?
そういう視点で動くようになってくるのではないかと思います。
「ウェルビーイング」(well-being)が上がれば、生産性も学力も上がるわけですから。
私たちは、そもそも、なぜ生産性も学力も上げるのか?というと、最終的には将来幸せになりたいからだと思います。
幸せというと、ちょっと浮ついた感覚があり、日本人としては表に出して言う言葉ではない感覚を味わう方は多いと思いますが、最終的に目指しているところはそこなのだと思います。
私たちは文明を発達させるために努力を積み重ねてきました。
しかし、現在、幸せになっているか?というと、そうでもない。
そもそも、幸せを得るために努力してきたのではないか?
だったら直接的に幸せになる方法を見つけていこう。
その流れの元に始まったものだと思いますので、今後もどんどん発展していくのではないかと思っています。
これまで文明を発達させてきた私たち人間が目指す次の段階は
「ウェルビーイング」(well-being)を高めること
そういう時代に入ってきているとことを実感しました。
参考文献
The Flourishing Scale
→ http://mshn.jp/r/?id=0xnpn2462&sid=4758
Paper on the Japanese version Sumi, K. (2013).
Reliability and validity of Japanese versions of
the Flourishing Scale and the Scale of Positive.
写真は、タル・ベン・シャハー(ハーバードの人生を変える授業:著者)
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