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メルマガ「共創コーチング®」稲垣 友仁

【教育者向けコラム】相手に合わせてチューニングして行く

Young businesspeople having a meeting at the officeこんにちは、稲垣友仁です。

先日、テレビを見ていたら、寿司職人を3カ月で育てる専門学校があるというコーナーがありました。

日本で寿司職人になると言えば、飯炊き3年、握り8年みたいな感覚があって、10年ぐらいで一人前みたいな感じがあり、その門をたたいても、なかなか寿司を握らせてもらうまでいけずに、厳しくてやめる人がたくさんいると聞いています。

ですので、そこから考えると3カ月で本当に寿司職人が育つのだろうかと思ったのですが、テレビを見ていくと、その専門学校で育った人たちで作るお店があって、2年連続でミシュランの星を獲得しているようで、技も接客もすばらしく指導されている感じでした。
本当に3ヶ月で一人前に寿司を握れるようになっていました。

ドイツでは、職業学校に通いながら職場で働いて学ぶ、デュアルシステムという職人養成のシステムがあり、そこでは標準化されたカリキュラムが整備され、どのような人でも一人前になれる方法がシステムとして確立されています。

まさに、寿司職人を育てる専門学校が行なっているのが、この標準化されたシステムなん
だと思います。寿司職人の技術を標準化し、それを徹底的に訓練していくことで短期での
習得を可能としているのだと思います。

では、これまでの日本の職人技を生み出した教育方法は間違いだったのでしょうか?

ある書籍に書いてあったのですが、ドイツと日本の職人のレベルの違いについて、ドイツ
で修業した日本人の家具職人が日本に帰ってきたときに「ドイツに比べて、日本の職人の
ほうが高い技術を持っている」と感じたそうです。

これは、日本では訓練の過程において「自分で考えて工夫すること」が求められる
ために、自分で考える力が高まり、そして仕事の質も高まって、結果的に「超一流」
の人材が育つと考えられます。

しかし、長期間の忍耐が必要である日本の伝統的徒弟制は、弟子が地味な修行に耐え
うる「強い意志」を持っていることを前提にしているため、脱落者も多く、多人数を
効率的に育てる方法だとはいえません。

ドイツのデュアルシステムは一定水準の職人を大量に育成するのに適した制度であり、
日本的な徒弟制は少人数の超一流を育てるのに向いていると考えられます。

要するに、

・標準化されたものを、徹底的に習得させる

・自分から気付くのを待ち「自分で考えて工夫する」ことを求める

の二つの教育方法があるということ。

とかく日本の教育や指導は、相手に「自分で考えて工夫する」ことを強要する文化
があります。それは、超一流の職人を生み出す文化でもあるのですが、現在の多くの若手はついていけてないように見えます。世の中は、いろいろなものがマニュアル化され、誰でもができるようになっています。その中で育った若手は、当然、それに慣れています。

何が言いたいかというと、まだ技術が伴っていない段階で、「自分で考えて工夫する力」を求めてしまうと、若手が迷ってしまったり、時には潰れてしまうケースもあるということです。

多くの上司や指導者が「最近の若手は自分で考えなくなった」ということを聞きます。
確かに、最近の若手はより自分から動かなくなっていますが、言われたことをきちんとや
る力はそんなに衰えていないようには思います。

最近の若手は、どちらかというと、マニュアル的ですので、標準化された教育の方があっているのだと思います。そして、その中から伸びそうな若手、「自分で考えて工夫する」力がある若手を選抜し、超一流と一緒にしのぎを削らせながら育てていくのが、一番理にかなった効率的な指導方法ではないかと思います。

教育方法も、現在の目の前の対象者、時代の流れに合わせてチューニングしながらやって行くことが大切だと思った出来事でした。

参考文献:
「経験学習」入門 松尾睦 ダイヤモンド社
http://mshn.jp/r/?id=0skh979&sid=4758

 

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