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メルマガ「共創コーチング®」稲垣 友仁

【共創コーチング®︎コラム】リーダーの「弱さ」が組織を救う? 世界が注目する新常識

おはようございます、稲垣友仁です。

私事で恐縮ですが、
この3月、無事に南山大学大学院を卒業し、修士号を授与されました。

この数年間、コーチとしての活動と並行して「教育ファシリテーション」を専攻し、
現場での実践を学問の光で照らし直す研究に没頭してきました。
支えてくださった皆さま、本当にありがとうございます。

今日から2週間にわたって、私が修士論文で探究したテーマについて、
2回にわたって皆さまにお届けしたいと思います。

そのテーマとは、「Vulnerability(ヴァルネラビリティ)」です。

1. 「弱さ」に対する誤解を解く

皆さんは「Vulnerability」という言葉を聞いて、どんなイメージを持ちますか?

日本語では「脆弱性(ぜいじゃくせい)」や「脆(もろ)さ」と訳されるこの言葉。
もろく、弱いなどという意味があるようです。かつてのリーダーシップ教育では
部下の前で弱さなどを見せるのは「避けるべきもの」とされてきました。

「弱みを見せたら、なめられる」
「リーダーは常に正解を知っていなければならない」
「プロなら感情をコントロールし、完璧であれ」

こうした「強さの神話」が、私たちの首を絞めてきたのではないでしょうか。

しかし、社会心理学者のブレネー・ブラウンは、
数千人ものインタビューデータから、驚くべき事実を導き出しました。

彼女は、Vulnerabilityをこう定義しています。

「自分の弱さやもろい部分を認め、傷つく可能性と向き合おうとする態度であり、
不確実性、リスク、生身をさらすことである」

語源はラテン語の“vulnerare(傷つける)”。つまり「傷つく可能性」を指します。
多くの人は、弱さを見せることを「弱点(Weakness)」だと思い込みますが、
事実は全く逆です。

「弱さを見せることは、弱さではなく、勇気の最も正確な尺度である」
ことが証明されたのです。

勇気を出して新しいことに挑戦するとき、
そこには必ず「失敗するリスク(不確実性)」があります。
そのリスクを引き受け、裸の自分で向き合うこと。
それこそがVulnerabilityの正体なのです。

2. 世界が「弱さ」に注目し始めた理由

今、ビジネスやコーチングの最前線で、このVulnerabilityが
「核となる能力」として位置づけられています。
なぜ、これほどまでに注目されているのでしょうか。

⚫︎ロバート・キーガンが説く「二つ目の仕事」の無駄

ハーバード大学のロバート・キーガン教授は、
著書『なぜ弱さを見せ合える組織が強いのか(An Everyone Culture)』
の中で以下のような指摘をしています。

「ほとんどの組織で、人々は給料をもらっている本来の仕事とは別に、
『自分の欠点を隠し、自分を良く見せる』という
二つ目の仕事に、膨大なエネルギーを費やしている」
というのです。

もし、組織の全員がその「二つ目の仕事」をやめて、
ありのままの自分(vulnerableな自分)でいられたらどうなるか。
そのエネルギーがすべて本来の仕事や成長に向けられたとき、
組織は爆発的な力を発揮します。

これこそが、彼が提唱する「発達指向型組織(DDO)」の根幹です。

⚫︎ICF(国際コーチング連盟)が認めるコーチの「あり方」

私たちコーチの指針である
ICFのコア・コンピテンシー(核となる能力水準)においても、
コーチの「04.信頼と安全を育む Cultivates Trust and Safety」の中で
Vulnerabilityの重要性が示唆されています。

コーチ自身が「自分はすべてを知っているわけではない」という不完全さを認め、
クライアントの前で「一人の人間」として存在できるか。
そのvulnerabilityさを受け入れる器が、
クライアントとの深い信頼関係と、安全な対話の場を作るのです。

このほかにもいくつか「弱さ」をテーマにした書籍や論文が存在します。

3. リーダーシップにおける「逆説的な強さ」

現代のような不確実な(VUCAの)時代において、
リーダーが一人で完璧を演じることは、組織にとって最大のリスクになり得ます。

むしろ、リーダーが「私にも分からないことがある」「助けてほしい」
「失敗してしまった」とvulnerabilityを示すことで、
組織には以下のような劇的な変化が起こるのではないでしょうか。

1)信頼の質の変化
信頼(Trust)の定義には「相手に対して自分をvulnerableな状態に置くこと」が含まれます。リーダーが先に鎧を脱ぐことで、初めて人間味のある深い信頼が生まれます。

2)心理的安全性の向上
リーダーが失敗を認める姿は、メンバーに「ここでは正直に話しても大丈夫だ」という許可を与えます。

3)返報性の連鎖
「リーダーがここまで開示してくれたなら、自分も本音を話そう」という心理的メカニズムが働き、チーム全体の透明性が高まります。


次回予告:実践と研究の成果

「弱さを認めること」は、決して「自分を甘やかすこと」ではありません。
むしろ、自分の中の恐れと向き合い、
誠実であり続けるための「タフな選択」です。

では、このVulnerabilityを、具体的にどう「使いこなせば」いいのか?
特に、教育現場やリーダーシップの場面で、
どのようなメカニズムが働き、どのような効果を生むのか。

僕は「vulnerability in Leadership」という視点で、
リーダーがどのような場面で
vulnerabilityを使っているのかについて研究してきました。

特に僕が学校現場でみた「すごい先生」たちは、
自らのvulnerabilityを使ってうまく学級をまとめ、生徒の力をつけていたと思います。
そのような先生方にご協力いただき
アンケートとインタビュー調査を行いました。

次回の4月13日号では、私の修士論文で明らかになった分析結果を交えながら、
より具体的な内容についてお話しします。

そして、その全貌をライブでお伝えする
4月18日(土)20時からのオンライン論文発表会を開催します。

「どのように弱さを認めると、最強の集団が作れるのか?」
そのロジックを、ぜひ直接感じていただければと思います。

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【4/18オンライン開催】
稲垣友仁 修士論文発表会のご案内
https://kyoso-coaching.com/news/2026/03/29/6066/

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本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今週は、完璧を目指す代わりに、
少しだけ「素の自分」を見せるつもりで周囲と関わってみてください。

共創コーチング
稲垣友仁

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