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メルマガ「共創コーチング®」稲垣 陽子

【共創コーチング®︎コラム】無自覚な「驚き」がコミュニケーションに誤解を招く

おはようございます、稲垣陽子です。

今日は、今年の夏に起こった出来事から
私が気づいた「驚き」とコミュニケーションの関係についてお伝えします。

「本籍教えて」から始まった、予想外の一言

夏真っ盛りのある日、大学生の息子から電話がかかってきました。
開口一番、息子はこう言いました。

「本籍教えて」

いきなり何を言い出すのかと怪訝に思い、「何に使うの?」と聞くと、
「一人暮らしをする」「部屋を借りる」
と言うではありませんか。

学生ではありますが、多少の収入があることは知っていました。
でも、まさかこのタイミングで家を出て自活するとは思ってもみませんでした。
「どういうこと?」とゆっくり話を聞きたい。
母としては状況を整理したい。

けれど電話口の様子からは、すでに不動産屋さんにいて、
これから契約をしようとしているのが伝わってきます。

(一人暮らしをするなんて、聞いていない)
(家族でも話していない)
(本籍もわからないまま契約しようとしているなんて)

そう思った瞬間、私は思わず、
「順番が違う!!」
と一喝して、電話をブチッ!と切ってしまいました。

電話を切った途端、
「あぁ、やってしまった……」
という自己嫌悪とともに、怒り、悲しみ、喪失感といった感情で
心がいっぱいになりました。

アメリカの心理学者ロバート・プルチックは、人間には8つの純粋な感情があると言っています。
「怒り」「嫌悪」「悲しみ」「驚き」「恐れ」「信頼」「喜び」「期待」の8つです。

この中で、息子から電話がかかってきたとき、私が一番強く感じていた感情は何だったか。
改めて振り返ると、それは「驚き」でした。そう、「びっくりした」のです。

ところが、そのときの私は、自分が「驚いている」とは認識していませんでした。

雷が落ちたような感覚にはなりましたが、心の中は
「この状況で何を言うのが正解だろう?」
「親としてどう対応するのがいいのだろう?」
とフル回転で、自分の感情を味わうスペースは、ほとんど残っていませんでした。

「驚き」をキャッチできていたら、違う会話になっていたかもしれない

今、冷静に振り返ってみると、もしあのとき、自分の中に起きている「驚き」の感情を冷静にキャッチし、
「お母さんは今、とても驚いている」
というところからコミュニケーションをスタートできていたら、
その後の会話も、息子に与える印象も、違ったものになっていたのかもしれません。

実際、その後家に戻ってきた息子の様子からは怒りと失望がはっきりと見て取れました。

息子に伝わったのは、
私の中にあった「驚き」や「寂しさ」ではなく、
表に出た「怒り」だけだったのだと思います。

私たちはしょっちゅう驚いている

「驚き」の感情と聞くと、多くの人がイメージするのは、

道を歩いていたら急に横から人が出てきてびっくりする、
大きな物音に体がビクッとする、思わず「えっ!?」と声が出てしまう――

そんな、身体を伴う、本能的で動的な驚きを想像することでしょう。

でも今回の体験を通して、私たちは、実際にはそこまで体は反応しないけれど、
日常のコミュニケーションにおいても、しょっちゅう「驚いている」のではと思ったのです。

私のように、相手の何気ない一言に、驚いたり、びっくりすることって実は結構あるのではないでしょうか。
部下や友人から思ってもないことを突然言われたり、予想外の言葉を言われると、
まずは驚いたり、びっくりしているはずです。

しかし、私たちは社会性の動物ですから、驚いたことを素直に表現するよりも、
平静を装い何事もなかったかのように過ごすことのほうが賢い、と思ってしまいます。
「驚き」の感情を隠してしまうことがないでしょうか?
あるいは気づくこともないかもしれません。

でも実際には内側では驚いてはいるので、私のように咄嗟に反応してしまい、
本当に思っていることと、伝えていることにギャップが生じる、
なんてことは結構あるのではないかと思ったのです。

昔からコミュニケーションは「反応(reaction)ではなく、対応(response)を選ぶ」 と言われます。
この場合、対応とは「驚き」を封印したり、なかったことにするのではなく、「驚き」に気づくことです。
つまり驚いている自分に気づいて、その上で言葉を選ぶことが「対応」です。

もし、私が自分の中の「驚き」に素直に対応できていたら
「お母さんは今すごくびっくりしているよ」
「息が止まりそうになるくらいびっくりしたよ」
「言葉でうまく言えないけど、応援したい気持ちと、苦しいくらいに寂しい気持ちがあるよ」
そんな言葉からまずはコミュニケーションをスタートできたかもしれません。

今週は、些細な「驚き」に気づくことを意識してみませんか?

ちょっと「えっ?」と思ったときに、「今、驚いたな」と心の中でつぶやいてみる
その出来事の奥にある、自分の本当の気持ち(寂しさ・心配・喜びなど)を言葉にしてみる

無自覚な「驚き」が、自分の本音へとつながる入り口になるかもしれません。
よかったら試してみてくださいね。

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