おはようございます、稲垣陽子です。
相手の話を「つまり〜ですね」とまとめたり、「〜でつらかったんです」と言われたときに
「つらかったんですね」とキーワードや感情をそのまま繰り返す。
これを「要約」や「おうむ返し」といい、コーチングにおいてよく使われる大切なスキルです。
でも、ここにちょっとした落とし穴があります。
それは「自分の理解のために要約する」のか、
それとも「要約して相手と一緒に味わい、共有しようとしている」のか、
その意図によって、対話の質がまったく変わってしまいます。
実はこれを、つい最近、私自身が身をもって体験しました。
仲間内のコーチング練習会でのことです。
私はその日、「自分の感覚を繊細に言語化する」ことをテーマに臨みました。
相手の話をよく聴き、いつもなら「そうなんですね」「うんうん」と
抽象的に受けとめていたところを、今回は“丁寧に言語化しよう”と躍起になっていました。
たとえば、相手が「わだかまりがあるんです」と言ったとき。
私は「わだかまりがあるんですね」とおうむ返しをしたあと、
すぐに「つまり、さっきの話から、わだかまりをなんとかしたいと思っているんですね」と、
自分の視点を付け加えて言葉にしていました。
感覚を繊細に言語化はできましたが、文脈は繋がっているのに、いつもと比べてどうも対話が深まりません。
なんだか表面的なやりとりのまま終わってしまったのです。
セッション後、オブザーバーからこうフィードバックをもらいました。
「どうしたんですか? いつもと全然違いました。相手の話を“解釈している”ように聞こえましたよ。」
ハッとしました。
あぁ、私は「言語化」に夢中になるあまり、
”共に感じる”ことがすっぽり抜け落ちていたんだ、と、反省と共に大きな気づきを得たのでした。
改めて思うのです。
同じ「要約」でも、「自分の理解のために要約する」のか
それとも「要約して相手と一緒に味わい、共有しようとしている」のか、
その違いは、聞き手のあり方(姿勢)によって決まるのです。
私の姿勢は「自分が理解しよう」という姿勢であり、「共に感じよう」という姿勢がすっぽりぬけていました。
前者には、自分の思考・視点と合っているのかと確認をしたり、話をまとめて進める意識があります。
後者には、この瞬間にとどまり、相手の言葉の温度や揺れ、余韻を一緒に感じようとする意識があります。
要約やおうむ返しは、「言葉を共有するための橋」です。
けれど、その橋をどこに架けるのか——
解釈のためか、共鳴のためか——は、私たちの“意識”次第。
だからこそ深い対話をしたければ「言葉を味わう」ことをぜひ意識してみてください。
あなたの対話が、もっと深く、もっと温かくなることでしょう。
<要約スキルについてもっと知りたい方へ>
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