おはようございます、稲垣友仁です。
今の世の中は、「ポジティブに物事を考えた方が上手くいく」というメッセージがとても多く流れています。
では、ネガティブはダメなのでしょうか?
そのような件について、ちょっと考えさせられる研究があります。
今日は、ポジティビティとネガティビティの比率はどのぐらいがいいのかという
ロサダライン(Losada Line)という
ポジティブ心理学の研究結果についてお話ししたいと思います。
心理学者マルシアル・ロサダ(Marcial Losada)と
バーバラ・フレドリクソン(Barbara Fredrickson)は、
個人やチームのパフォーマンスと幸福感を最適化するための
ポジティビティとネガティビティの最適な比率を見つけました。
彼らの研究では、チームのダイナミクスとパフォーマンスを調査し、
ポジティブな発言(ポジティビティ)とネガティブな発言(ネガティビティ)の比率が
パフォーマンスに与える影響を分析しました。
その結果、ポジティビティとネガティビティの比率が
3:1(正確には2.9013:1)以上になると、
チームのパフォーマンスが最適化されることが示されています。
この比率は「3:1の法則」として知られ、
これを超えると創造性、効率性、協力が向上するとされます。
一方、比率が3:1より下になると、パフォーマンスが低下し、
ネガティブな影響が強くなるとされています。
2:1でもよくないし、ましてや1:1もよくない。
だからと言って、ネガティブが0の、
6:0という、ネガティブが0もよくないそうです。
今回参考にしたバーバラの著書である
『ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』の中で、
ボジティビティ、ネガティビティについて詳しく紹介していますので、
まずは下記に、本の抜粋を紹介します。
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ポジティビティ(自己肯定的な心の状態)
ネガティビティ(自己否定的な心の状態)
ポジティビティは、「笑顔で耐えよう」とか
「心配するのはやめよう。いつも機嫌よくしていよう」などという
モットーのようなものではありません。
そんなものは単なる表面的な理想です。
ポジティビティは人間心理のもっとずっと深いところを流れるもので、
感謝、愛情、楽しみ、喜び、希望、感動など、
幅広い肯定的な感情を含んでいます。
ポジティビティは人間が生きるうえで大変重要な瞬間を捉えたもので、
現在、心理学の中で大いに注目を集めている分野です。
「つかの間もたらされる心地よい精神の状態」は、
一般に認識されているよりも、はるかに大きな効力を持っています。
心身に良い変化をもたらし、よりよい人生を作り出すことにつながるのです。
最も重要なのは、単なる量ではなく、
ポジティビティのネガティビティに対する割合です。
正確にいうと、ある一定の時間におけるポジティビティの頻度を
その同じ時間におけるネガティビティの頻度で割ったものです。(ポジティビティ比)
このポジティビティ比がどのくらいかを見れば、
その人の軌道が「沈滞(ラングイッシュ)」に向かうか、
「繁栄(フラリッシュ)」に向かうのか予想がつきます。
かろうじて生きている状態にもなるし、
能力を活かして成功し、逆境にめげない状態にもなります。
「繁栄」している人は、
心理的にも社会的にも非常にハイレベルな機能を発揮します。
単に「気分がいい」「幸せ」というだけの話だけではありません。
ものごとを成し遂げ、世の中に価値を付加します。
「繁栄」している人たちは、家庭、仕事、地域に深く関わり、強い目的意識を持っています。
1日1日に「大事なやるべきこと」があると感じています。
何も、特に大層なことをするという意味でありません。
私欲を超えて、人や環境のために何かをするということです。
ポジティビティがそれらを可能にします。
『ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』より抜粋
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このような人間のポジティビティに光を当てて
研究している分野がポジティブ心理学と言われます。
ポジティブ心理学は、
1990年代後半にマーティン・セリグマン博士によって提唱された
心理学の一分野で、人間の強みや美徳、幸福感を研究対象としています。
従来の心理学が主に精神疾患や問題行動の治療に焦点を当ててきたのに対し、
ポジティブ心理学は人々が幸福で充実した生活を送るための要因を探求します。
ポジティブというのは、
単なる気持ちよさだけではなく、
人間における崇高な感覚のことを言っています。
この書籍の中で、ポジティビティを表す感情が10個
挙げられているのでそれを紹介します。
楽しい出来事や成功によって感じる幸福感。
他人からの親切や助けに対する感謝の気持ち。
落ち着いた状態やリラックスしている時の感情。
新しい物事に関心を抱き、謎を突き止めたい気持ちに突き動かされる。
未来に対するポジティブな期待や信念。
自分や他人の達成に対する満足感や誇り。
ユーモアや面白い出来事によって引き起こされる楽しみ。
素晴らしい出来事や人々から影響を受けて感じる感情。
自然や偉大な出来事に対する驚きや敬意。
深い親しみや絆に基づく感情。
これらの感情は、ポジティブ心理学の研究において、
人々の幸福感や生活の質を向上させるために
重要な役割を果たすとされています。
これらの感情が現れるような活動が
ポジティビティを上げてくれるのです。
ポジティブ心理学の研究成果は、
教育、職場、臨床心理学など多岐にわたる分野で応用されています。
具体的には、感謝の日記をつけることや、
マインドフルネス瞑想、
社会的なつながりの強化の実践が推奨されており、
これによりポジティブな感情を増やし、
全体的な幸福感を向上させることが目指されています。
また、ロサダラインの3:1の概念も、
職場の環境改善や教育現場での生徒のサポート、
家庭内での人間関係の向上など、さまざまな場面で応用されています。
ポジティビティを増やし、
ネガティビティを減らすということが大切なのですが、
ネガティビティが1残っているというところが、
僕はポイントだと思っています。
ネガティブを0にするということは、
ほとんど動いていない可能性もあったり、
ポジティブがいき過ぎている可能性もあります。
また私たち人間はネガティブな部分もあるから成長してきた側面もあります。
ですので、まったくネガティブを0にする生活を行うのではなく、
ネガティブがありながらも、
より良い方向を向いて常に成長していく姿勢が
大事なポイントなのではないかと思います。
ネガティビティの存在を認め、
必要以上に怖がらないということだと思います。
ネガティビティがあることで
我々の才能を発揮させてくれる部分もあるのです。
自分の高性能を発揮することを目指して、
できるだけポジティビティを増やし、
ネガティビティを減らすことは大切だとは思いますが、
取り扱い方に気をつけて、どちらもあることを知って、
うまく扱っていくことがとての大切な視点だと思います。
ロサダラインの概念には、
多くの支持がある一方で、批判や限界も存在します。
特に、ロサダの研究方法や統計手法に対する批判が出ていて、
具体的には、統計解析の適切性や
データの再現性に関する問題が指摘されています。
これにより、ロサダラインの正確な数値(3:1)が
必ずしも普遍的に適用できるわけではないという意見もありますので、
一つの指標として認知しておくと良いかと思います。
ぜひ今週は、
上記にあるポジティビティ感情10を参考に、
自分自身のポジティビティ比を上げてみてください。
下記の参考文献は、
これまで読んだポジティブ心理学の本の中でも
ポジティビティが上がる、
とても素晴らしい本だと思いました。
自分のポジティビティ自己診断テストなども掲載されているので、
ぜひ自身の生活に
この考え方を取り入れてみたい方は
読んでみることをお勧めします。
参考文献:
『ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』2010年6月
バーバラ・フレドリクソン (著), 植木 理恵 (監修), 高橋 由紀子 (翻訳) 日本実業出版社
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