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メルマガ「共創コーチング®」稲垣 友仁

【共創コーチング®︎コラム】『融合(ゆうごう)』と『分化(ぶんか)』

おはようございます、稲垣友仁です。

今日から4月になりました。
新しいスタートを切るという方も見えるのではないでしょうか。
開花宣言も行われ、ちょうど桜の季節になりそうですね。

システムズアプローチ

さて、前回の私のメルマガ「システムを見抜く」では、
家族療法で扱われるシステムズアプローチという方法をお伝えしました。

人の問題は、相互作用の結果起こっている可能性があり、
問題が起こっている部分(人)だけに目を向けるのではなく、
その問題を起こしているシステム(人の相互作用や関係性)に
フォーカスを当てて問題解決を行っていくという方法です。

システムに焦点を当てたシステムズアプローチは、
家族だけでなく組織全体の問題解決にも応用可能であり、
リーダーにとっては必須の考え方ではないかと思います。

家族療法家マレー・ボーエン

これまでコーチとして多数の方々に関わりながら、
家族や組織という強いつながりが生み出す集団において、
いろいろな負のドラマを観てきました。

どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?

今日は、家族療法家のマレー・ボーエンさんが提唱した家族システム理論の中でも
「融合」と「分化」という概念を見ながら
理解を深めていきたいと思います。

融合

まずは、融合です。

融合とは、個人が自己と他者の間で区別がつかなくなる心理状態を指します。

私たちには、理性的に物事を考えていく知性のシステムと、
なんとなく感じる感情のシステムがあるのですが、
融合は、感情のシステムが優位になり、
個人が他者と強く結びついてしまうことを意味します。

融合が高いと、個人は他者の影響を強く受け、
自分自身の思考や感情を他者と分けることが困難になります。
これにより、個人は他者との関係において
過度に依存し、自己決定が困難になります。

例えば、融合的な親子関係だと母親と子どもの関係で、
子どもは母親が感情的になると子どもの感情も
揺さぶられて何か分からないけど機嫌が悪くなる。そんな感じでしょうか。

応用した捉え方でいくと、
例えば、息子が学校で先生に怒られて家に帰って泣き出したとします。

融合が高い家族だと「うちの息子に対してなんということをするんだ!」と
感情のシステム優位に伝染してしまい、
知性システムが働かないので落ち着いた判断ができなくなるかもしれません。

一方で感情のシステムと知性のシステムをバランスよく使えている家族なら、
息子が先生に怒られて家に帰ってきたとしても、
最初はびっくりするでしょうが、その後よく考えて、
きっと先生にも何か考えがあるのではないかと
冷静に考えて対処を行なっていくかもしれません。

融合は、家族関係や組織関係においても見られ、
メンバー間で感情が強く共有され、
個別のアイデンティティが失われがちになります。

日本は融和と協調の国と言われるほど、
文化的影響が強いので融合は起こりやすくなっているように思います。
別にそれ自体が悪いわけではなく、
過剰になることでの不調和が問題なのだと思います。

分化

ボーエン博士は、私が何をするのか、
何をしないのかを定義して
他者からの否定的な反応を管理する能力の重要さを説いていますが、
この能力は感情的になったり緊張が高まったりすることによる
混乱の中で失われてしまうのです。

ボーエン博士は、このような感情システムから
より分離した存在になるための努力を 「自己分化 」と呼びました。

ボーエン博士は、家族の健康のためには、
「融合」する家族から「分化」していくこと、
分化度を高めていくことが重要だと説きました。

分化し、健康度が高まると、
家族や組織の意向とは別の、
自分らしい考え方、あり方を持つこともできるのです。

分化を詳しく見ていくと、
分化は、個人が自己と他者を区別できる心理的な能力を指します。
分化が高い個人は、自己の感情や
思考を他者のそれと区別し、独立して管理できます。

彼らは感情的な圧力やストレスに対して耐性があり、
自己制御が可能で、感情に振り回されずに理性的な判断を下せます。

分化された個人は、
自己の価値観や信念に基づいて行動し、
他者との健康的な関係を築くことができるのです。

このように、家族システム内での融合と分化は、
家族メンバー間の相互作用と関係性を
理解する上で中心的な役割を果たします。

融合された家族システムでは、
メンバー間の境界が曖昧になり、感情的な感染が容易に起こります。

これは、家族内での衝突や機能不全の原因となり得ます。

一方、分化された家族システムでは、
各メンバーは自己主張と他者への共感のバランスを保ちながら、
個別のアイデンティティと自律性を維持できるのです。

健全な家族関係、組織関係を育むためには、
個人が分化を高め、過度な融合を避けることが重要です。

このバランスを達成することによって、
家族や組織間メンバーは自己のアイデンティティを確立し、
相互に支え合う健康的な関係を築くことができるのです。

親子関係や上司部下の関係は冷静になれずに感情のシステムで動いてしまい、
それが原因でいざこざや問題が起こっていることがよくあるように思います。
すべての問題で感情の影響は大きいのです。

融合から分化へ

家族のみならず、普段から近しい人との間で、
感情のシステム優位になり、問題へと発展することはよくあるように思います。

そのような融合状態になっているなかで、
分化に向かうにはどうしたらいいのでしょうか?

この辺は、ボーエン博士や家族療法家の書籍などで調べていただくのがいいと思いますが、
僕の経験で言うと、もし自分が融合にはまっているような状況だと思ったら、
その場から一歩引いて見ることが大事かと思います。

一歩引くというのは、感情から離れるということです。

感情から離れるには、物理的にその場から離れてみたり、
この状況を冷静な誰かに話してみたり(同じく融合する人に相談しないように)すると
冷静な立ち位置に立てて冷静な判断が行えるかもしれません。

こう伝えると、「そんな簡単ならやっているよ。
それが難しいんだよ」という声も聞こえてきそうです。
確かにその渦中にいると抜けるのは難しと思いますが、
まさにその立ち位置自体が「融合」にいるのだと思います。
そういう自分の立ち位置に気づくだけで抜けられたという経験もありました。

いずれにせよ、ご自身が自律(分化)しようと思う気持ちが何よりも大切だと思います。
ぜひご興味ある方はご自身でいろいろと方法を探ってみることをお勧めします。

参考文献:
●家庭医の学習帳
【シリーズ家族療法】家族の歴史を紐解き、同じ過ちから抜け出す方法 〜多世代家族療法〜

●一般社団法人ファミリービジネスアドバイザー協会
マレー・ボーエン博士の功績を振り返る〜ボーエン家族システム理論とは?

●中村伸一, 2017,『家族療法のいくつかの考え方』.家族社会学研究,29(1): 38–48.

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