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メルマガ「共創コーチング®」稲垣 友仁

【共創コーチング®︎コラム】システムを見抜く

おはようございます、稲垣友仁です。

共創コーチングのアプローチ

私たちが運営する共創コーチングでは、
特に関係性にフォーカスをあて、コーチングを体系化しています。
関係性におけるキー概念は、家族療法という分野の
システムズアプローチの考え方を主に採用しています。

家族療法とは

家族療法とは、家庭内の相互作用パターンを理解し改善する心理療法の一形態です。
このアプローチでは、個人の問題を家族システム全体の文脈で捉え、
家族構成員間の関係性、コミュニケーションのパターン、
境界の設定などに焦点を当てます。

例えば、ある一人の人が心の病気になったとします。
心理療法の多くは「患者」に焦点を当てます。

一方で家族療法では、「家族が互いに影響し合った結果として、
病気や問題が引き起こされる」と捉えていきます。

家族の間で起きた問題は、さまざまな要因が複雑に混ざり刻一刻と変化します。
その変化が悪循環に陥ると「最も感受性の強い者が心の病気になる」と考えていくのです。

「家族」という集団を1つの集合体(システム)と考え、
心の病気を全体から解決していきます。

この考え方はシステム論と呼ばれており、
この考え方で患者にアプローチする方法を
システムズアプローチと言います。

システムズアプローチ例

具体的な例で見ていきましょう。

例えば、学校を休みがちの子どもがいたとします。
通常だと学校にいけない子どもにいろいろとアプローチをして、
なんとか学校にいけるように多くの方が関わろうとします。

しかし、これは集団の1つの現象の結果ととらえ、
システム全体を見ていきます。

要するに、父親と母親もしくは
その他の家族との関係性も見ていくということになります。

今回、家族全体をヒアリングしていくと
下記のようなことがわかりました。(あくまでも例です)

子どもが学校に行かないと、
父親が母親に対して「お前の育て方が悪 かったんだ」と責めていました。

そして、言われた母親はなんとか子どもを学校に行かせなきゃと焦り、
学校に行き渋っている子どもに対してイライラしてきて
「いい加減、学校に行きなさい」と、子どもを叱ってしまいます。

そうすると子どもはますます体調が悪くなり、
どんどん学校に行けなくなり、結果不登校になってしまう。
そんなパターンがあることがわかってきました。

家族や学校、会社組織の中で起こる人間関係は、
お互いの役割や個性、立場など様々な要因 がお互いに影響しあって、
そのシステム独特のパターン化された
コミュニケーションとして相互作用しているのです。

この場合、学校に行けない子どもが悪いのでしょうか、
それとも子どもを焦らせる母親が悪いのでしょうか、
それとも父親の母親に対する言動が悪いのでしょうか。

それぞれに課題はあると思いますが、
システム全体でその問題を生み出しているという考え方で
物事を捉えていく考え方
システムズアプローチと言われるものです。

上記のような場合の解決策として、
父親と母親がそれぞれ焦るのを止めるということや、
子どもも頑張って学校にいこうとするという考え方に
意識がいくことが多いですが、
この家族は全体として負の循環を生み出しているように思います。

この家族の負の頑強は
「学校は行かなければいけないものである」という考え方で、
それが家族にプレッシャーを与えているのかもしれません。

であれば、両親で話して学校に数日休むことを提案したり、
子どもが通いやすい学校に転校することを検討するなど、
ここで起こっている事象を一歩引いてメタ認知して
「負の循環に陥っているシステム全体を機能させないようにするには
どうしたらいいのか?」という考えで動いていきます。
もしかしたら誰も悪くなく、こういうことを知らずに、
ただただ目の前に起こっている出来事に
反応してしまっているだけだったのかもしれません。

家族を1つのシステムと考えて互いに影響を与え合っていると考え、
一人の人を修正するのではなく、
家族で影響しあっているそれぞれの考え方全体を見て
修正していくという考え方です。

システムズアプローチの組織への応用

この家族療法のシステム論の考え方は、
企業組織にも応用できるところがたくさんあります。

ある企業で責任を問われる大きな問題が起きたとします。
通常であれば、その仕事を担当した社員が叱責され、
原因を追求されます。また、その上司も同様でしょう。

しかし「システムズアプローチ」の考え方を取り入れると、
担当者や上司だけのせいでないかもしれません。

上司と担当者の関係性やコミュニケーション、
強いては部署全体の関係性やコミュニケーションをシステムとして捉えると、
仕事がどのように処理されているのかが次第に明るみになっていきます。

その部署(システム)の中で何が起きているのか、
どのように関係を築けばよいか、
どのように問題に対処すればよいのかなどを
整理することができるのです。

まとめ

私たちの世界は結構複雑で、
いろいろなものが影響し合って
結果を出している相互作用の中で生きています。

コーチやコンサルタント、教育者など、人を支援する人々は
目の前に起こっている結果だけをみるのではなく、
その背後にあるシステムを見抜く力がとても大切だと思います。

参考文献:
マンガでわかる家族療法 親子のカウンセリング編 東 豊 2018 日本評論社

組織と個人を同時に助けるコンサルテーション―企業や学校、対人援助サービスで使えるシステムズセンタード・アプローチ
スーザン・ギャン, イヴォンヌ・アガザリアン 他, 2018  金剛出版

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