おはようございます。稲垣陽子です。
コーチングは、相手の成長を促進することを目的の一つとして対話を行います。
そして、対話の最後は、相手の成長を祝福して終わるようにと
ICF(国際コーチング連盟)の行動基準に書いてあります。
では、コーチングにおける祝福とはどんなものでしょうか?
祝福するとなると、相手を持ち上げる、奨励する、
そんなイメージがあるかもしれません。
実際に、コーチングの最後に「頑張って!」「あなたならできるよ!」など
明るい言葉で相手を鼓舞して終わろうとする人も多くいます。
それはそれで大切ではありますが、私がイメージする祝福とは少し違います。
私が思う究極の祝福のイメージは、自分自身の気配を消していくことです。
気配を消すとはどういうことか?わかりやすいところで、古い映画を一つ紹介します。
1990年に公開された「ステラ」という映画です。これは母と娘の物語です。
シングルマザーとして力強く一人娘を育ててきたステラですが、
娘が成長するにつれ、衝突や葛藤が起こり、二人は離れ離れになります。
その後、娘は愛する人と結婚することになり、
所在がわからなくなった母親に晴れ姿を見てほしいと願います。
そして最後のシーン。母であるステラは内緒で娘の結婚式場に足を運びます。
しかし、会場には入りません。窓越しに幸せ満載で微笑む娘を見て、
嬉しそうな、少し寂しそうなでもとても満足した表情を見せます。
目に涙を浮かべながら。
そして、娘に会うことなく颯爽とその場を立ち去るところで、映画は終わります。
ここからは私の解釈になりますが、
母であるステラは、娘の自ら人生を切り開いた姿を見て、
娘が自分の幸せを自分のものとして味わえるように、
立ち去ることで自分の気配を消したのではと思いました。
気配を消すとは、邪魔をしないと言うことです。
気配があれば相手はコーチのおかげ
(映画の場合は母のおかげ)と言いたくなるかもしれません。
でも、気配がなければ、自分の幸せを「確かに自分が掴んだもの」として
味わうことができるでしょう。
その感覚が次の人生の一歩を踏み出す力にもなります。
よって、コーチの祝福とは、
相手が自分で自分の人生の扉を開け、
現実という世界に向けて一歩を踏み出せるように、
光陰を全て自分で味わえるように、
後ろ姿に向かって拍手は送るけれど、邪魔はしない。
そんなのが祝福のイメージです。
そのためには鼓舞をしたり、セッションで感じた才能を伝えたり、
存在を認めるような言葉や、ここまでの行為を振り返ることも、祝福となるでしょう。
時には冗談を言ったり、辛口もありだと思います。
その人が自ら自分の意思で一歩を踏み出す勇気になるのなら。
今週はぜひ、あなたなりに目の前の人を祝福してみてください。
相手の方が一歩自律的に動けることをイメージして、
ぜひ背中を押す祝福を意識してみてくださいね!
今週も素敵な1週間になりますように。
*参照「wikipedia ステラ」
https://ja.wikipedia.org/wiki/ステラ_(映画)
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