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メルマガ「共創コーチング®」稲垣 友仁

【共創コーチング®︎コラム】コーチングの理論的背景

おはようございます。稲垣友仁です。

1997年10月の東京で、
アメリカ人のコーチを招いて行われた2日間のコーチングワークショップに出席してから
コーチングに関わり始めて、ちょうど25年になりました。

97年当時は、日本でコーチングと言っても
ほとんど誰にも知られていない状況でしたが、
2000年に入って企業の管理職がコーチング研修を受講するようになり、
2010年ごろには企業のエグゼクティブがコーチをつけるようになってきました。

そして、現在では企業全体を変革させる組織開発や
上司と部下の1on1の中の文脈にも使われるようになり、
また、学校や塾などの教育現場でも
組織全体でコーチングを導入するという流れが起こっています。

日本でコーチングとは、ある程度体系化された心理学的なスキルとして
認知され始めているように思いますが、
元々コーチングは、科学的に検証された特定の理論をもとに考えだされたものではなく、
効果のあるいろいろな心理的手法や理念を組み合わせて発展してきた部分があり、
その学術性や効果の実証という点では、まだまだ不十分な点が多いのが実情です。

コーチングの世界的な流れについて

今日は、コーチングの効果の実証という点で起こっている世界的な流れを、
簡単に紹介したいと思います。

まず、2000年初頭の段階で、特に北アメリカ、イギリス、オーストラリアなどでは、
企業が自社で雇用するコーチの質を問題にするようになり、
大学院レベルの行動科学の学位など高い資格水準を求めるようになってきました。

そこから学術的な整理が行われ始め、今では世界的な流れとなっています。
現在、主だって下記の三つの流れがあるかと思います。

1、コーチング心理学
2002年にグラントとパーマーによってコーチング心理学の定義を記した論文が発表され、
コーチング心理学という分野が生まれ、コーチング心理学会も誕生しました。

現在はヨーロッパ諸国を中心に14カ国でコーチング心理学の学会が設立されています。

コーチング心理学は、元々あった心理学(カウンセリング)のモデルを
コーチングモデルに対応させているものが多く
(認知行動コーチング、解決思考コーチングなど)、
学術的にしっかりしたベースの上に取り扱われているものが多い印象です。

またコーチング心理学は大学でも学べるようになっていきます。
2007年の段階では、イギリス7大学、
オーストラリア3大学で心理課程の中に授業として
コーチング心理学が組み込まれています。

大学で学べるという点では、
アメリカ7大学、カナダ2大学の大学院にもコーチングの専門課程が設置されており、
こちらはどうもコーチング心理学というよりは、
ビジネススクールのコーチングコースという感じのようです。

2、ポジティブ心理学
あと、コーチング心理学のようなモデルと呼べるものにはなりませんが、
コーチングの研究発表が盛んに行われているのがポジティブ心理学の分野です。

マーティンセリグマンを中心に作られたポジティブ心理学は、
従来あったマイナスの状態を元の状態に戻すという心理学とは違って、
人間が持っているポジティブな側面に着目し、
普通の状態の人をよりプラスの状態に持っていくにはどうしたらいいか
ということを扱う心理学として研究が盛んに行われている学問です。

この研究をコーチングの理論的背景のひとつとして
扱うコーチも徐々に増えてきています。

3、ICF(国際コーチング連盟)などの団体
コーチが作る団体の中でも、
自分達が扱うコーチングの学術的見解が叫ばれるようになってきています。

その中でも会員数を増やしていったのが
下記の2団体です。

・アメリカに本部を置く、
世界最大約 5 万人以上の会員をもつ国際コーチング連盟
(International Coaching Federation:ICF)

・ヨーロッパ最大のコーチ専門職団体EMCC
(European Mentoring and Coaching Coun- cil)

上記の2つの団体はどちらも、コーチのコアコンピテンシーという
コーチの能力水準を打ち出してコーチの品質保証に努めています。

私たちが所属しているICFも、
プロコーチの倫理規定やプロコーチと しての専門能力の基準を示す
コア・コンピテンシーを制定しています。

このコアコンピテンシーは、
多くの経験者や科学者などが研究を重ねて打ち出されたもので、
世界中から 1,300 人を超えるコーチ がこのプロセスに参加して作成しています。

ICFが出す資格は、このコアコンピテンシーのもとに
コーチングが行われているかどうかの証とすることで
品質の保証を行っています。

ICFコアコンピテンシー(英語)
https://mshn.jp/r/?id=15nq63131&sid=4758

以上のような流れが世界的に起こり始め、
「エビデンスベースト」という言葉のもとに、
コーチングの品質保証を行う取り組みが広まってきています。

日本では、ICFの資格を取得した方が982名いて、
その流れに乗ろうとする方が一番多いように感じます。
あとはポジティブ心理学を取り入れた流れも
増えてきているように思います。

今後は、大学でコーチングを学べる専門課程の設立も、
まだまだ遠そうですが、整備されていくのではないかと予想しています。

参考文献:
「コーチング心理学ハンドブック」金子書房
スティーブン パーマー, アリソン ワイブラウ 他
https://mshn.jp/r/?id=15nq73131&sid=4758

「コーチング心理学概論 第2版」ナカニシヤ出版
西垣 悦代, 原口 佳典, 木内 敬太 他
https://mshn.jp/r/?id=15nq83131&sid=4758

論文:西垣悦代「医療・健康分野におけるコーチングの学術的進展」
第58回日本心身医学会総会並びに学術講演会

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