おはようございます、稲垣友仁です。
久々に良い体験をさせてもらいました。
先日、自分の大学院受験に向けて、英語のスコアをあげるため、オンライン英会話スクールに集中講義に参加しました。グループで学ぶもので、4名程度参加し、日本人の先生が1人ついて進められます。
先生はベテランでTOEICのことや英語のことはなんでも知っている感じで、テンポもよく短い時間に多くのことを提供できる方でした。
とても私にとっては役に立ったのですが、残念と思った対応が一つだけあったので、これは、私も含めて教育に携わる人にとって、とても大切な視点だと思い、今日はそれをシェアしたいと思います。
そのオンラインクラスは、手元にテキストを置いて、その問題をみながら、問題を解いていくのですが、先生が一人一人当てていきます。
正解していればいいのですが、間違っていた時の先生の対応が、
「そんなこと言いませんよ」
「えっ、違います。それだとおかしいですよね」
と、先生としてはせめていないとは思いますが、生徒としては失敗を攻められているように聞こえてしまう言葉づかいでした。関西弁だったこともあるかもしれません。
その度にグループに緊張感が走りました。それによって、全体的にピリッとする緊張感があっていい部分もあるのですが、自分が間違える当事者になると頭が真っ白になったりして、モチベーションが下がってしまいます。
そうなると間違えない、失敗しないようにというところに意識がいって、他の人の意見も聞けなくなってしまい、せっかくのグループの学びが薄くなってしまっているように思いました。
この対応を体験した時に、最近見た教育の研究データーを思い出しました。
GRIT(やり抜く力)の提唱者で有名なアンジェラダックワース(Angela Duckworth)さんとアイレット・フィッシュバッハ(Ayelet Fishbach)さんと共に行った最近の研究結果では、「人は、失敗から学ばない」ということがわかったそうです。
*リサーチなどの方法などの詳細を知りたい方は下記よりご覧ください。
英語になりますが、HPについている翻訳機能がある方はそれを使えばわかるかと思います。
面倒な方は、「要するに」からお読みください。
『Character Lab Tipsより失敗から学ばない理由』
→https://mshn.jp/r/?id=132u82462&sid=4758
要するに、色々な著書で「失敗から学ぼう!」と有名な人は投げかけます。
しかし、よくよく見てみると、私たちは失敗した瞬間は学んでいないことがわかったそうです。
失敗から学んでいるのは、失敗していない他の人だそうです。
調査を進めていく上でわかってきたのが、人は失敗することで、自尊心の問題で気分を害していて、その瞬間はとても学べないことがわかってきたそうです。
誰も失敗するのが好きではありません。
間違いをわからせることは大切ですが、失敗と思わせることは、学びを阻害する可能性があるのです。
それは、自尊心をより傷つけて学びが深まっていかず、嫌という感情でいっぱいにさせてしまっているからなのです。
人は失敗から学ぶことは難しく、失敗は学習の効果を妨げるのです。
私たちは、失敗が個人的ではない時に学ぶのです。また、人は失敗した時に励まされれば、後から学ぶこともできるようです。
*下記はアイレット・フィッシュバッハ(Ayelet Fishbach)さんの英語の動画ですが、字幕を使って日本語に訳す機能で聞くこともできます。
『Chicago Booth Review(動画)
なぜ私たちは失敗から学べないのか?
Line of Inquiry: Ayelet Fishbach on why we fail to learn from failure』
→https://mshn.jp/r/?id=132u92462&sid=4758
この「失敗から学ばない」リサーチ結果を聞いた時に思い出すのが、
日本のプロ野球中日ドラゴンズで50歳までピッチャーとして活躍した山本昌投手のアメリカ修行の話です。
山本昌投手は42歳で200勝を達成した史上最年長記録を持つレジェンドです。
彼は、プロ野球5年目にアメリカへの野球留学にへと渡米しました。
その時に出会った、ロサンジェルスドジャーズの日本人コーチ、アイク生原さんとの出会いが今日の彼を作ったということは有名な話です。
アイクさんの指導があってこそ今日の自分があると山本投手は言っています。
では、アイクさんはどのような指導をしたか?
アイクさんは、みんな知っている当たり前のことしか言わなかったそうです。
「昌(マサ)、いいか、ピッチャーの大事なことは、まずはストライクを投げるんだ。」
そして、ボールは低めに投げるんだ。ボールは前でリリースするんだ・・・。」
と言われて、「知ってるよ」ということしか言われなかったと言います。
そして、試合後、その当たり前のことができているか、スコアブックを持ってきて、データーを元に話しをするので、とてもわかりやすかったと言います。
「今日は何%低めに行っていたね」と言われるので納得だし、自分が調子が悪いと思うときは、やっぱりデーターも悪かったのでとても信憑性があったと言います。
さらに、アイク氏の指導法が
調子が悪いときは、慰めてくれて、調子がいい時に、色々と教えてくれる
と言っていました。
なので、とても彼といると自分がモチベートされると。
何より本当の野球の楽しさを教えてもらったと言っていました。
落ち込んでいる時やダメな時、要するに失敗した時は慰める。感情のケアをする。
調子のいい時は、もっとこういうことができるぞと、さらに伸びるような課題を提示したりするそうです。
これが、先程お伝えした、失敗から学ばないということを活かして行っている、指導のいい例だと思います。
失敗したと思っている時に教えても入っていきません。学びは深まらないのです。
まずは心が冷静になるのをサポートすることが第一です。
そして、頭が冷静になってから自分自身を振り返らせればいいのです。
そして、いい状態の時は、どんどんチャレンジさせる。
このような人のメカニズムを知った上で、最適な対応を考えていくことが教える基本だと改めて学んだ体験でした。
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