おはようございます、稲垣友仁です。
今日は、僕のライフワークであるコーチングとの出会いをお伝えしようと思います。
中学校の教師になって5年目、27歳。
もう、新人とは言われない、ある意味中堅に差し掛かった頃でした。
その頃の自分は、何か自分がやっている教育にしっくり来ていませんでした。
子どもが好きで、教えるのが好きで教師になったけど、そう思える場面が少なく、
子どもと交流できる喜びや、教える喜びというものが、部活動以外では味わえない感覚があり、日々悶々と生活していたのを思い出します。
自分の好きなことや、良いと思ったことを教えるのは大好きなのですが、自分が腹に落ちていない、納得していないことを教えるのは、時間がかかるし、とても苦手でした。
そんな中、当時、本屋さんで教育に関する本を探していたところ
「コミュニケーションはキャッチボール」と言うキャッチフレーズに誘われて
「この気持ち、伝えたい」と言うCDサイズの絵本と出会いました。
その本には、普段の人とのコミュニケーションのパターンがキャッチボールに例えて表現されており、自分自身が普段何気なくやってしまっているコミュニケーションについて容易に振り返るこができる深い気づきの得られる本でした。
その本を読んで僕は、
「そうか、自分は、コミュニケーションが苦手だから、今の状況を招いているのかもしれない・・・」
と思い、その著者から直接コミュニケーションのトレーニングを受けることにしました。
その方が提供しているコミュニケーションのトレーニングは、とても本質的で自分がまさに目指していた本物の教育だと思い、いろいろなプログラムを受けていました。
その中で、3ヶ月つづく長期のコミュニケーショントレーニングがあったのですが、月1回、三重県から東京まで通うことになりました。
そこでの出来事です。
一番最初に面談をして、自分自身のテーマを決めます。
そのテーマに沿って、自分自身が普段とっているコミュニケーションを日常生活で改善できるように取り組んでいくのですが、私の3ヶ月間のテーマを決めるためにアシスタントの人が一人ついて面談をすることになりました。
そのアシスタントはセミナーのボランティアスタッフで普段は行政の仕事をしている人でした。
テーマを決めることに関しては、教育者である僕の方が、きっとよく知っていると思っていたので、テーマを決める時に、自分からいろいろと話をしていかなければいけないだろうなあと思っていました。
しかし、そのテーマを決めるセッションは予想をはるかに越えた、大きな気づきを僕に与えてくれる場になりました。
彼はきっと、教えてくると思って、僕も構えていたのですが、びっくりしたことに、彼はそのセッションで、僕に一言も教えてきませんでした。
興味深く僕に質問してくるだけだったのです。
「えっ、三重県から東京まで通ってるの?すごいねえ」
「なんで、こんな遠くまで学びに来ているの?」
「最近の中学生ってどうなのよ?」
「へ~
、で、それについてはどう思ってんの?」
「うわー、で、それからどうなったの?」
と、あまりにも興味深く僕の話を聞くので、熱心に自分の考えを話していました。
僕は、いかにも最初から知っているかのようにスラスラ答えている自分がいましたが、ほぼ、そこで初めて考えたことでした。
でもよくよく考えてみると、今まで何となく心の片隅で考えていたことではあったなと、自分でもはっきりした答えは持っているなんてわからなかったことが、相手に話すことで、結構、自分っていろいろ思っていたんだなと思いました。
そのようなやりとりをしていくことで、自分自身の考えがだんだん輪郭を現してきて、
そして、最後に
「自分から・・・、いや、自分発で、相手にコミュニケーションを取っていけるといいなあと思っているんですよ・・・」
と、僕が言ったら、
彼は、その言葉をキャッチして
「あっ、それ、いいね。テーマになるんじゃないかな?」
と言ってくれました。
そのとき、はっとしました。
彼は、一言も教えずに、僕の話を興味深く聞くことだけで、僕に話させて、気づきをおこさせ、テーマを自分の言葉で言わせた。
僕が探していたのはこれだ!この方法だ!
と、先行きが大変明るくなったのを覚えています。
と、同時に、僕はこの人みたいになりたい。絶対にこの手法を手に入れる。
と、思いながら日々をすごし始めていました。
それから、1年後に、このアプローチがコーチングという技術だったことがわかります。
1996年9月のことでした。
そこからコーチングとの付き合いが始まりこの出来事があってから24年目を迎えており、現在はそれを仕事にしています。
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