おはようございます、稲垣友仁です。
先週はスポーツ指導者に対するコーチング研修が二つありました。
来年は日本でオリンピックもあるからか、指導者に対するコーチング研修の数が増えてきています。
現在、スポーツ指導者の行き過ぎた指導が問題になっています。
「それはだめだ」と言うのは簡単ですが、そうなってしまう構造は、あまり語られていないように思います。
まず、どうして行き過ぎた指導を行うのか?については、色々な理由があるのですが、一番大きな理由が、「成果がでる」と言うことなのです。そして、手っ取り早い。
叱ったり、感情的になるのを恐れさせ、こちらの思い通りにコントロールすることで行動は強化されていきますから、繰り返し行わせると上手くなっていきます。
しかし、失敗を恐れたり、怖いと言うことは怒られたくないと言う意識が働き、指導者の顔色を伺ったり行動が制限されていくので、ある程度は上手くなりますが、それ以上に上手くならない。よく言われるのは、そのような指導は指導者以上に上手くならないということです。
指導者以上に上手くなっていくには、選手に考えさえる指導、選手の主体性を発揮させる指導、要するにコーチングスキルが必要になってきます。
コーチングスキルは、一瞬で劇的に変わるものではなく、じわじわと選手の意識を変えていくようなものなので、その感覚を掴むのに時間がかかります。
私がコーチングを使って成果を出せるポイントを掴んだのは、中学校の部活動でサッカー部の顧問をしている時でした。
97年にコーチングと出会い、最初は思ったようにコーチングを使う成果が見られませんでした。諦めかけた2年目に、やっと成果が出始めます。
必要以上に教えないことで、選手の主体性を引き出すポイントをつかんでいきました。
今日は、その時のお話です。
当時の私が教えていたチームは弱くて、よく試合では相手チームに負けていました。
私は、サッカーをやっていた経験もあるので、彼らよりもサッカーを知っていて彼らを勝たせたい一心で、試合中は、よく声をだして選手に指示をしていました。
「左だろ」「逆へふれー」
「違う、右だろー」「左にボールを回せー」など、
選手のプレー中に指示命令するので、選手たちもやりにくかったのではないかと、今になっては思います。
そんな中、コーチングと出会い、サッカー指導にも使えるかもしれないと思って、コーチングを学び始めましたが、残念ながら、期待していた通りのイメージでは最初は使えませんでした。
質問しても変わらないし、褒めてもそんなに劇的に変わるものではないので、スポーツ指導では使えないかもしれないと思って、使用を半分あきらめかけていました。
しかし、ある時、転機が訪れます。
私のチームのサッカー指導者は私だけではなく、もう一人、私と似たような歳でサッカー経験者の教師がいて、私とおなじような、結構叫んで選手を動かすタイプの指導者がいました。
コーチングを学んでからというもの、彼が練習中に叫んでいる場面を見ると、「これでは、選手が混乱してしまうよなあ」ということを感じ始めていました。
自分もそうだったのですが・・・。
そう思うと同時に、いつもとは違う視点が目に入ってきました。
ボールを扱うサイドにはいない選手が、相手を引き付けるような素晴らしい動きをしていたのです。
いつもならば、「~がいい動きをしているので、見ろー」と叫んでいたのですが、その時は、どうしてそのような動きをしているのか、彼に聞きたくなりました。
そこで、全員を集合させて、みんなの前で彼に質問してみました。
「逆サイドで、~という動きをしていたけど、どうしてそんなことをしたの?」
そうすると、彼は、流ちょうにその理由を語りだしました。
それを聞いていた、そのほかの選手が「へー」と感嘆の声をあげながら、聞いていました。
いつもならば、その場所で私が解説したりして教えていたのですが、今回は教えるのは一切やめ、質問に徹しました。
そうしたら、そのあとの選手の動きが、今までとまるで違う。
水を得た魚のように動き回り、先ほどの質問した選手のような動きを何度もトライしていました。
今までは、私が教えても教えてもやらなかった選手達が、同僚のたった一言で影響を受け、変化したのです。
ちなみに、その彼が言ったことは、何度も私が常日頃から言っている事。
今更、なにを感嘆の声を上げてるんだと、本当は突っ込みたくなる内容でした。
この出来事から、学んだことが、自分が「教えすぎていた」ということ。
教えれば教えるほど、だめだったことが、教えるのをやめ、彼らに質問をし、彼らの言葉で語ってもらうことで、私が教える以上のクリエイテビティが発揮されたのです。
この出来事から、私はあまり教えなくなりました。
そして、何より、この出来事からコーチングが使えるものに変わりました。
こうなると、試合後に行うミーティングなども生徒に任せることが多くなってきました。
そういうことを続けていくことで、もっと劇的な変化が訪れます。
それは、また次回にお話ししますね。
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