おはようございます、稲垣陽子です。
映画やドラマ好きな私。その中でよくあるシーンがあります。
犯人の手がかりをある人物が偶然知っていて、勇気を出して話す。
その一言で、物語が一気に動き出す——そんな瞬間です。
けれど現実では、そんな「真実の気づき」はそう簡単には起こりません。
多くの人は、自分の中の違和感や小さな気づきがどんな意味を持つのかに、
まだ気づいていないからです。
「なんか違う」「しっくりこない」と感じても、それが何なのか言葉にならない。
それが自然な姿です。
だからこそ、最初から理路整然と話せる人はほとんどいません。
多くの人は、話しながら考え、混乱し、矛盾することを言います。
けれど、その「まとまらなさ」の中にこそ、本当の願いや気づきの原石が眠っています。
コーチングの場でも同じことが起こります。
クライアントが話しているうちに、テーマから少し逸れていくように感じることがあります。
コーチはつい、「元のテーマに戻さなければ」と思い、
話を整理したり、方向を整えようとコントロールします。
けれど、クライアントが混沌と語っている時こそ、
心の奥にある“本当に話したいこと”が表れ始めているのです。
言葉は散らばっていても、その中にはクライアントの本質的なテーマの欠片が光っています。
しかし多くのコーチは、それを聞くと話が脱線してしまうのではと感じ、質問を控えてしまいます。
けれど、その“脱線”の先にこそ、クライアントが自分の本当の思いに出会う瞬間があります。
まとめようとすればするほど、大切なものはこぼれ落ちてしまう。
だからこそ、聞くとは「整えないこと」。
混沌を恐れず、そのままを受けとめ、探求する勇気を持つこと。
それが、相手の中にある真の願いに光を当てる、最初の一歩なのだと思います。
今週はぜひ、「整えない勇気」で人の話を聞いてみてください。
その先に、思いがけない真実が見えてくるかもしれません。
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