おはようございます、稲垣陽子です。
「夫婦で同じ仕事をしていて、競争とかないんですか?」
と聞かれることがあります。
私はよく「いやぁ〜喧嘩が絶えません」と笑いながら答えていますが、
実際のところ——正直に言えば「ありました」。
でも最近は、ほとんどなくなりました。
なぜかというと、「関係の捉え方」が変わったからです。
以前の私は、夫婦関係をまるでシーソーのように見ていました。
どちらかが上がれば、どちらかが下がる。
上がったほうが誇らしく、下がったほうが苦しい。
そんなふうに、いつも心の中でバタバタしていたのです。
たとえば、夫の調子がいいとき、私はなんとなく落ち着かない。
「負けた」と感じて、つい嫌味を言ってしまう。
逆に、自分が調子のいいときは、夫が頼りなく見えて、イライラする。
つまり、「関係を上下で見ている」限り、私たちは無意識のうちに競争の世界に入り込んでいます。
上下で見ると、上にいる人は「上は大変だから下は自分の言うことを聞くべき」と思い、
下にいる人は「下で我慢してるんだから上がもっと面倒を見ろ」と思う。
そのうえで「歩み寄りましょう」と言っても、
上から下に“降りてやる”か、下から上に“頑張って上がる”かのどちらかになり、
どちらも結局、役割と犠牲の関係から抜け出せないのです。
では、どうしたら本当の意味で関係が楽になるのでしょうか。
ひとつの鍵は、「役割の固定」から自由になることです。
私たちは、無自覚ですが、安心のために“役割”を引き受けます。
「母親だから」「部下だから」「経営者だから」。
その役割を果たしていれば、とりあえず自分は否定されない。
でも同時に、その役割の中で自分を小さくしてしまっていることもあります。
下でいることに窮屈さを感じながらも、そこに守られている自分。
上でいようと頑張りながらも、責任に縛られている自分。
どちらの中にも、「得していること」や「怖れていること」があるはずです。
しかも、どちらも実は心の底から欲しいと望んでいることではなかったりしませんか。
「私はこの役割で、何を得ているのか? 何を怖れているのか?」
この問いを立てることで、少しずつ“役割の檻”が緩み、
“本当の自分”として関係に立つことができるようになります。
共創コーチングのベースは「対等」です。
しかし、対等とは、同じ高さに立つことではありません。
お互いが“本来の自分”で立っている状態のことです。
それぞれが自分の強さも弱さも認め合い、力が自然に循環する関係。
そのとき、シーソーのバタバタは落ち着き、関係は静かで、柔らかく、でもとても強くなります。
今週は、あなたの周りの誰かとの関係で「自分は上にいる」「下にいる」と感じる瞬間があったら、
ぜひ一度立ち止まってみてください。
その瞬間、あなたが“どんな役割を生きようとしているのか”、
そして“何を守ろうとしているのか”自問自答してみませんか?
そこに、あなたの新しい自由が眠っているかもしれません。
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