おはようございます、稲垣陽子です。
先日、立派な日本家屋のご自宅にお邪魔する機会がありました。
まずは、襖で仕切られた一室に通されました。
しばらくすると、その襖がすっと開き、奥の間へ。
その後、仕切りとして存在していた襖が全て開かれ、
先ほどまでのこじんまりとした空間が、
一気に広々とした一つの大きな部屋へと変わっていったのです。
襖は、壁のようで壁ではありません。
閉じれば空間を仕切りますが、開ければつながる。
完全には遮断せず、閉じていても隣の気配や声が伝わってきます。
この「境界線が曖昧な」あり方に、私は強く惹かれました。
そして、ふと思ったのです。
これは、コーチングにおける「共創」の姿そのものではないかと。
共創とは、「あなた」と「わたし」が線引きされた状態で何かをすることではありません。
影響し合い、響き合い、そこから新しいものが立ち上がってくるプロセスです。
そんな共創の根底にあるのが、「自他非分離(じたひぶんり)」という考え方です。
これは、自分と他者をくっきり分けるのではなく、
むしろ関係性の中でこそ自己が成り立っている、という東洋的な感覚です。
あなたとわたしの間に明確な線は引かれず、
「あいまいでありながら、つながっている」状態のことです。
その曖昧さの中にこそ、信頼や創造性の“余白”が生まれます。
コーチングの現場では、この関係性の曖昧な境界が大切な意味をもつことがあります。
例えば、役割や立場で話すのではなく、共にそこにいて、感じたことを言葉にしたり、
見えない変化を丁寧に聴き取っていく、そのためには、曖昧な境界線が必要です。
上下などの境界が明確だと、言いづらくなってしまいます。
共創を生み出すためには、襖の向こうの目には見えない気配(違和感)を聞き取ったり、
時には襖を開けて、オープンに伝えていく必要もあるでしょう。
自由に襖を開けたり閉めたりできる、
その柔軟な在り方の中で、クライアントとの真の共創が始まるのです。
今週は目の前の人との関係性を壁ではなく、襖だと思って関わってみてください。
開けることも、閉じることも、自由なその関係性の中で、共に創る場が生まれることを願っています。
共創については、6月に開催されたICFジャパン・カンバージにて
「Good Coachingを生み出す共創のつくり方」というテーマで登壇しました。
その内容をもとにした記事が公開されています。ぜひご覧ください。
▼記事はこちら
https://kyoso-coaching.com/news/2025/07/25/5217/
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