触発はいたるところで生じるものです。
それは人々の「気づき」として現れます。
しかし、ポッと火がつくだけでは行動の変化にはつながりません。
ここでは、触発された火がどうしたら持続できるのか、についてお伝えします。
2020年に日本の教育が大幅に変わります。
学習指導要領という、先生方が教える指針としているものが、今の時代に合わせた形で順次変わって行きます。
すでに小学校から「英語」が取り入れられたり、「道徳」が教科化されたりなど行われています。
その中で、小学校から始まる「プログラミング教育の充実」というものがあります。
最初に聞いた時は、
えっ?それって学校で必要なの?というのが第一印象で、取り入れる意味がぜんぜん分かりませんでした。
その意味が、この本を読んでやっとわかりました。
『ライフロングキンダーガーデン 創造的思考力を育む 4つの原則』ミッチェル・レズニック 日経BP
著者はMIT(マサチューセッツ工科大学)の教授で、子どもの教育に関わっている方です。
プログラミングを覚えることが目的ではなく、作る側の立場で主体性を養うというのが目的なのだとわかりました。
日本の文科省は、プログラミング的な思考と言っていますが、ミッチェルさんに言わせると、「創造的な思考力」をプログラミング教育によって育てることが主な狙いだそうです。
書籍のp127に、このようなことが書いてありました。
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人は情熱を傾けたプロジェクトに取り組むとき、その中に飛び込んで、没頭することを熱望します。
彼らは何時間も喜んで働き、時間が過ぎていることにもほとんど気が付きません。
彼らは、心理学者であるミハイ・チクセントミハイが「フロー」と呼ぶ、アクティビティに完全没入した状態に入るのです。
しかし、人々にとって、一歩下がって自分たちの経験を振り返ることも重要です。振り返りを通じて、アイデアを結びつけ、どの戦略が最も生産的であるかをより深く理解し、学習したことを将来の新しい状況に応用する準備を整えることができます。
振り返りを伴わない没頭は満足できますが、充実はしないのです。
情熱は、「没頭ー振り返り」サイクルを駆動する燃料です。これは、すべての年齢の学習者に当てはまります。
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実際に私も、高校生が自分の研究テーマを持って取り組んでいくというプロジェクトのサポートを行っていますが、高校生たちは、好きな研究を行わせると情熱を傾けてすばらしいパフォーマンスを見せるのですが、入試があることで、勉強しなければならず、せっかくの情熱の火が消えかけそうになります。
その中で情熱の火を保つのが、この振り返りの機会と仲間の存在です。
定期的に振り返ることのメリットは、
・頭と心が整理され、感情が落ち着きます。
・この後、何をやったらいいのか見通しを立てることが出来ます。
・文字に書いたり、話したりすることで、「気づき」が起こり、目標に向かっての行動が変わります。
上記の3点が得られることはとても大きいと、多くの高校生から聞きました。
そして、近況を仲間と交流することで、さらに「やらなければ」「もっとやれるかも」という気持ちに火が付くようです。
好きなことに没頭し、それをうまく行うために振り返りを行わせる。という教育の仕組みは、これからも、大人でも子どもでも定番になってくると思います。
つまり、触発された火も、振り返りがなければ、消えてしまう可能性があるということです。
また、触発は「関わり」の中でさらに応用され、広がってきます。
以前、伊藤守さんの講演会で下記の言葉を聞きました。
「創造性は個人の才能ではなく関わりから生まれる」
※2アレックス・ペントランド
MIT(マサチューセッツ工科大学) 社会物理学
昔はいいアイデアを持っているのは一番できる人が持っていると考えられてきたが、
結局のところ、いいアイデアを持っている人は、他人のアイデアをうまく取り入れることができる人だ
とおっしゃっていました。
人は人に触発を受けてアイデアがどんどん広がって行くものなのです。
色々な出来事を振り返り、あーでもない、こーでもないと関わり、対話をする。
そんなところからも触発は生まれてくるということでしょう。
実際に当社のメルマガのスローガンは
「~答えは、あなたと私の間にある~」ですが、
コーチングというものが、コーチがクライアントから何かを引き出すという一方的な関係ではなく、
対等な両者の関係性自体が、新しい何かを生み出すという位置に立っています。
私たち人間は、関係を持った瞬間から、すごいものを生み出す力を秘めているのです、