本日は、
「ヤフーの1ON1」本間浩輔 ダイヤモンド社
を紹介したいと思います。
ヤフーでは、人材育成を効果的に行うために、上司と部下で1on1でミーティングを行なっています。非常にコーチングに近い形ですが、一般に言われるコーチングとは分けて考えているそうです。
ヤフーの1on1は、週に1回30分程度かけて面談を行います。通常の面談だと上司や会社からテーマが与えられることも多いと思いますが、ヤフーでは、部下がテーマを決めて話していきます。
それを上司がコーチングやカウンセリングのスキルを使って、本人の気づきが深まるように関わっていく。1on1は、完全に部下のために行う面談と割り切って行なっているそうです。
上司だと、言いたいことがたくさん出てきたり、間違いを修正したりしたくなると思いますが、上司としての関わりとは区別して行なっているそうです。
部下としても、一番わかってほしい上司に自分の考えていることを話せるだけでも、そのあとの仕事にいい影響が出そうですよね。
2015年から全社的に導入し、社長など幹部の方々も率先して行っているそうです。
この取り組みのベースになっているの考え方が、「経験学習サイクル」です。
書籍より
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経験学習とは、文字どおり、経験から学ぶことに重きを置く人材育成の方法で、職場での学びに換えて、次の仕事経験に活かしていくという考え方です。
「7:2:1」の理論というものがあります。
これは、人の成長を決める要素の比率と言われていて、7割は「仕事経験から学ぶ」割合、2割は「他者から学ぶ」割合、そして残り1割は「研修や書籍から学ぶ」ことを示しています。
理論に頼らなくても、仕事経験が重要であるということに違和感を感じさせる方は少ないでしょうし、しかし、単に経験を重ねるだけで、学びが深まるかというと、それほど単純ではない。経験はするけれど、同じような失敗や過ちを犯し続ける人はどこにでもいるのではないでしょうか。すなわち、経験学習を促進するためには、経験をすることだけではなく、経験を学習に変換するアクション(振り返り)が必要で、それが1on1です。
ヤフーでは、社員が経験から学ぶプロセスを想定して、社員がプロセスをまわす手段として、1on1を活用しています。具体的には、1on1の場で、社員が経験を振り返って学びに換え、その学びを試す場を見つけて、実際に試して、学びが活かせたかどうかをチェックする。いわば学びのPDCAサイクルが必要であると考えています。
この考えを補足する理論として、ヤフーはデービット・コルブの経験学習サイクルを採用しています。コルブの経験学習モデルとは、人が経験から学ぶときは、
「具体的経験→内省(振り返る)→教訓を引き出す(持論化、概念化)→新しい状況への適用(持論・教訓を活かす)」というサイクルをたどるというものです。
1on1では、この経験学習のサイクルを回すことをイメージしています。社員の具体的経験をもとに、その経験を掘り下げて(省察的観察)、教訓を引き出し(概念化)、次の仕事(新いし試み)に活かしていく、このサイクルを何回も回転させることによって、社員の学びを深めていくのが狙いです。
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以上のように、学習者としての社員の成長を促進するために、この取り組みを取り入れたそうです。
部下の成長や職場満足度のキーになる上司が内省の支援を行なってくれるので、かなり組織開発につながるいいアイデアだなあと思いました。
週1回30分、部下のために上司は時間をとるという点が大変だと思いますが、そこでヤフーの気合が伝わってきます。
一般の企業で、全社レベルでこの形を取り入れることは難しいかもしれませんが、ポイントを学ぶことで応用できると思い、今日はそのエッセンスを紹介しました。
「本人の経験を軸に、学びを深めていく1on1を行うことで、相手の成長を促す」というエッセンスは、企業現場でも教育現場でも応用できる部分は多分にあると思いました。