以前、創作中華料理店の社内コーチングを5年ほど行っていました。
その間、売上も順調、知名度・ブランド力、料理の質も上がってきました。
そのお店のホールには20歳になったばかりの女の子Aさんが働いていました。
ある時、風邪をひいていたお客様が彼女に
「ティッシュありますか?」と聞いてきました。
彼女は何とかお客様のためにティッシュを探しますが、
あいにく見当たりません。
そこで、彼女はティッシュの代わりにあるものをお客様に差し出しました。
さて、何だったと思いますか?
答えは・・・
トイレットペーパーでした。
それをもらったお客様は苦笑い。
その姿を見たオーナーは「そんなものを渡す奴がいるか~~!!!」
と激怒です。
怒られた彼女は「また失敗した・・・」と当惑した様子。
そこで二人に対して2対1のコーチングを行いました。
今回の出来事をまずは「動機」「行動」に分けて共有しました。
動機は、
お客様のリクエストに応えたい、
サービス向上するというチーム方針に貢献したい、でした。
では、「行動」はどうだったか。
トイレットペーパーを持っていく・・・
これは街のラーメン屋さんなら良かったかもしれない、
でも、お店の基準に合わせてみるとふさわしい行動とはいえない。
こうやって分けて分析することで、彼女の全てを否定することなく、
今のままでOKなところと、改善すべきこと、学ぶべきことを客観的
にしていきました。
そして、もう一つ大事なのは、「第三の目」は何を見ていたか、ということ。
今度はスタッフ全員を呼んで、
Aさんがティッシュとは気づかなかったけれど、「何か」探し物をしていることに
気づいた人はいたか、と聞きました。
すると、何と全員が「気づいていた」と答えたのでした。
さらに、ティッシュを探していたことに気づいていた人は?と聞くと、
30%くらいの人が手をあげました。
その後、気づいたのになぜ声をかけなかったのか、
Aさんは、なぜ周りに尋ねなかったのか、
そして、こういうことが次に起きないためにどうしたらいいか、
をチーム全員で話し合いました。
組織には、問題が起こると大抵3つの立場に分かれます。
加害者、被害者、傍観者。
加害者と被害者は、当事者ですので、問題に直面している分、
そこから気づくことや学ぶことができます。
しかし、加害者と被害者の気づきだけでは、組織に「波」は起こせますが、
大きな変化は作れません。
傍観者の存在が大事になります。
傍観者の中から、少しでも当事者意識を持った人が出れば、
組織に「大波」が起きます。
そのためには、傍観者に「あなたも大事な組織の一員なんだ」と言う
明確なメッセージを伝える必要があるかと思います。
傍観者は心のどこかで、
「自分はいてもいなくても関係ない」
という思いがあるのではと思うからです。
この時私がしたのは「喝!」でした。
あなたの気づきは組織にすごく役に立つことに、なんで気づかないのか!
あなたの存在や気づきは大事なんだと伝えました。
すると、一人のベテラン料理人が、「自分も悪かった」と言って、
その後、Aさんの教育を積極的に引き受けてくれるようになりました。
組織の中で起こった出来事を、誰かが起こした「自分には関係ない出来事」
から、「自分にも関係ある出来事」に自ら意識を変えていくことで、
変化は起こるんだなと改めて思った出来事でした。