こんにちは、稲垣友仁です。
昔、中学生のサッカー指導者をやっていた頃、私は誰よりも試合中、よく声をだして選手を指導していました。
「左だろ」「逆へふれー」
「違う、右だろー」「左にボールを回せー」など、
選手のプレー中に指示命令するので、選手たちもやりにくかったのではないかと思います。
そんな中、コーチングと出会い、サッカー指導にも使えるかもしれないと思って、コーチングを学び始めました。
しかし、残念ながら、期待していた通りのイメージでは最初は使えませんでした。
質問しても変わらないし、褒めてもそんなに劇的に変わるものではないので、スポーツ指導では使えないかもしれないと思って、使用を半分あきらめかけていました。
しかし、ある時、転機が訪れます。
私のチームのサッカー指導者は私だけではなく、もう一人私と似たような歳でサッカー経験者のものがいて、私とおなじような、結構叫んで選手を動かすタイプの指導者がいました。
コーチングを学んでからというもの、彼が練習中に叫んでいる場面を見ると、「これでは、選手が混乱してしまうよなあ」ということを感じ始めていました。
そう思うと同時に、いつもとは違う視点が目に入ってきました。
ボールを扱うサイドにはいない選手が、相手を引き付けるような素晴らしい動きをしていたのです。
いつもならば、「~がいい動きをしているので、見ろー」と叫んでいたのですが、
その時は、どうしてそのような動きをしているのか、彼に聞きたくなりました。
そこで、全員を集合させて、みんなの前で彼に質問してみました。
「逆サイドで、~という動きをしていたけど、どうしてそんなことをしたの?」
そうすると、彼は、流ちょうにその理由を語りだしました。
それを聞いていた、そのほかの選手が「へー」と感嘆の声をあげながら、聞いていました。
いつもならば、その場所で私が解説したりして教えていたのですが、今回は教えるのは一切やめ、質問に徹しました。
そうしたら、そのあとの選手の動きが、今までとまるで違う。
水を得た魚のように動き回り、先ほどの質問した選手のような動きを何度もトライしていました。
今までは、私が教えても教えてもやらなかった選手達が、同僚のたった一言で影響を受け、変化したのです。
ちなみに、その彼が言ったことは、何度も私が常日頃から言っている事。
今更、なにを感嘆の声を上げてるんだと、本当は突っ込みたくなる内容でした。
この出来事から、学んだことが、自分が「教えすぎていた」ということ。
教えれば教えるほど、だめだったことが、教えるのをやめ、彼らに質問をし、彼らの言葉で語ってもらうことで、私が教える以上のクリエイテビティが発揮されたのです。
この出来事から、私はあまり教えなくなりました。
そして、何より、この出来事からコーチングが使えるものに変わりました。
ここで気づいたことは、選手には元々、自分たちで考えて解決する力があるんだと分かったことです。
今までは、そういうものがないから、教えて上げないといけないというところから、オーバーティーチングに至っていた。
要するに選手を信頼していなかったのです。だから、その力が使えなかった。
しかし、選手の中に、自分たちで解決できるクリエイティビティな力があることに気づいてから、根本的な考え方がガラッと変わりました。
選手の中にあるクリエイティビティな力は、教えても発揮されないのです、
それは、唯一、本人の「気づき」からしか発動できない部分なのです。
とすると、私たちが目指すことは、本人が「気づく」ために何をやればいいかということ。環境づくりなのです。
オプションとして、教えることもあれば、コーチングを使うこともできる。教師やリーダーが語ってもいいし、生徒や部下に話を振ってもいい。
教えるために何かをやるのではなく、相手が気づくために何をやればいいのか?という逆算になってきます。
何より、教えなくていいと思うと、すごく楽に接することができるようになり、そのリラックスさが、クリエイテビティを生み出す原動力になったりします。
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