稲垣陽子著書「言いづらいことをサラリと伝える技術」の出版を記念して、各業界の「言いづらいことをサラリと伝える達人」たちにインタビューを行い、そのコツやポイントをご紹介して参ります。日々のコミュニケーションのヒントとしてお役立て下さい。
第1回目は、私のメンターでもあり、ベストセラー作家の本田健さんにお話をお伺いしました。本田健さんとの対談をお楽しみ下さい。
私が、「言いづらいことをサラリと伝える人」として一番に思い出す人は本田健さんです。
本田健さんは、ご存知の方も多いと思いますが、「ユダヤ人大富豪の教え」や「20代にしておきたい17のこと」シリーズなど約130冊、累計700万部のベストセラー作家です。最近では英語で著書を書き下ろし、出版界で世界デビューを実現させた、世界規模のリーダーでもあります。
そんなご活躍も素晴らしいですが、本田健さんの魅力は、一度でも話したことがある人なら誰でも惹きつけられる「サラリと本質をつく会話力」です。
「本質をつく」なんて言うと、ちょっと怖い感じとか、厳しい印象を受ける人もいるかもしれません。でも、本田健さんはそれがないのです。
本質はつくけれど、誰をも悪者にはしない言い方、しかも、その人と本田健さんの会話を聞いているだけで、周りも知らずうちにハッと気づきが生まれるのです。
この力を身に付けたいな、そう思って私自身も本田健さんをメンターと慕い、10数年勉強させていただきました。
拙著「言いづらいことをサラリと伝える技術」では、随所に本田健さんから学んだエッセンスをちりばめてあります。
今回、本の出版にあたり、インタビューをお願いしたらなんと快諾!お忙しい中お時間を作っていただきました。
インタビューでは、言いづらいことを言うのが自分の人生を上昇させる上でなぜ大事なのかについて、700万部のベストセラー作家として夢を実現した本田健さんに語っていただきます。
題して「言いづらいことを言うことで、人生を次元上昇させる方法」です。
言いづらいことを言うことで、人生が次元上昇するとはどういうことなのか?人脈作りには言いづらいことを言うことが欠かせない?!
など、本田健さんの実体験に基づいて話していただきました。
そこで、皆様にもそのインタビューを公開させていただきます。少しでも皆様が「いいづらいこと」をサラリと言う後押しになれば幸いです。
【本田健さんのプロフィール】
神戸生まれ。経営コンサルタント、投資家を経て、29歳で育児セミリタイヤ生活に入る。4年の育児生活中に作家になるビジョンを得て、執筆活動をスタートする。
「お金と幸せ」「ライフワーク」「ワクワクする生き方」をテーマにした1000人規模の講演会、セミナーを全国で開催。そのユーモアあふれるセミナーには、世界中から受講生が駆けつけている。大人気のインターネットラジオ「本田健の人生相談~Dear Ken~」は3500万ダウンロードを記録。世界的なベストセラー作家とジョイントセミナーを企画、八ヶ岳で研修センターを運営するなど、自分がワクワクすることを常に追いかけている。
2014年からは、世界を舞台に講演、英語での本の執筆をスタートさせている。著書は、『ユダヤ人大富豪の教え』『20代にしておきたい17のこと』(大和書房刊)『きっと、よくなる!』(サンマーク出版)、『大好きなことをやって生きよう!』(フォレスト出版)など130冊以上、累計発行部数は700万部を突破している。
2017年にはアメリカの出版社Simon&Schuster社と契約。初の英語での書き下ろしになる著作は、ヨーロッパ、アジア、中南米など、世界20カ国以上の国で発売されることが決まっている。
【本田健さんの公式HP】http://www.aiueoffice.com/
下記の再生ボタンをクリックして、音声をお聞き下さい。
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稲垣: 皆さん、こんにちは。稲垣陽子です。今日は、言いづらいことをサラリと伝える達人に聞くということで、なんと、あの本田健さんにインタビューさせていただくことになりました。
本田さん、よろしくお願いします。
本田: このたびは、出版おめでとうございます。どうぞ、よろしくお願いします。
稲垣: 本田健さんについては、ご存知の方も多いと思いますが、『ユダヤ人大富豪の教え』とか、『20代にしておきたい17のこと』シリーズなど、130冊、累計700万部のベストセラー作家なんですよね。
作家としてのご活躍もすばらしいのですが、私はずっと健さんのもとで勉強させていただいて、健さんの一番の魅力は、「サラリと本質を突く会話力」だと思っています。
本質というと、人によっては怖い感じや、恐ろしく思う人もいるかもしれませんが、健さんの場合、そんなことはないんですよね。本質を突かれてるんだけど、痛くなくて、そこに気づきがある、みたいな。
だから、健さんの周りには、たったひと言で、人生がすごく変わる人も多いのだと思います。
今日は、どうしたら言いづらいことが言えるようになるのか、それをあえて言うことが、人生の次元上昇につながっていくのかについて、ぜひ聞かせていただきたいなと思っております。
本田: はい。ありがとうございます。よろしくお願いします!
まず、人生を次元上昇させるために、相手の本音でつながると言うことが、大事だって思っています。でも、実際には、「本音を言う人がすごく少ない」のです。
稲垣:そうですよね。
本田: 僕の場合は、どういう人たちと仕事をしたいと考えているかというと、例えば、お昼ごはんの後にサラダとか何かが歯に挟まってることって、たまにありますよね。
稲垣: (笑)、はい、はい。
本田: それを、「あっ、歯に挟まってますよ」とすぐに言ってくれる人とだけ仕事をするようにしてるんですよ。そう言うことって、みんな気づいてるけれども、ちょっと言いづらいですよね。
でも、それを言うのは、そこまで恥ずかしいことじゃない。
「チャック開いてますよ」とか、「歯に挟まってますよ」と普通に言ってくれる人とじゃないと、いい仕事はできないと僕は思うんです。
言いづらいことをお互いに言い合えるかどうかで、その人の人間関係の深さが決まると思うんですよね。
これは夫婦でもそうだと思いますし、友人でも適当なこと言ってフェイスブックで「いいね」を押し合うぐらいの関係なのか、「それ、歯に挟まってるよ」と言えるか。もっと言うと、「あの人とつき合ってると、あなた、だめになるわよ」というところまで切り込んでくれるのは、親友だと思いますが、そこまで深く付き合いたいか。
僕は、「適当な人間関係だとあまり役に立たない」って思っているんですよ。
「こう思ってるよ」とお互いにぶつかり合える人間関係が、僕は仕事でもプライベートでも大事だと考えています。そのためには、「自分も言うし、相手にも言ってもらう」ことが理想だなと考えています。
そう言うわけで、陽子さんが書いたこの本は、すごくおもしろくて、とっても参考になりました。
「あぁ、こういうふうに言えばいいのか、今までちょっと損したな」と言うこともいっぱいありましたね(笑)、とってもいい本だと思います。
稲垣: ありがとうございます。
もちろんそうやって本音で言えるのは皆さん理想ですし、そういうふうになれたらいいなと思っているんですけど、やはりそこができない、と多くの人が悩んでいると思うんです。
本田: そうですよね。いや、もう、僕もまさしく同じ道を通ってきたわけですけど。
稲垣: へえ(驚)
本田: 例えば、それを言ったら嫌われるんじゃないかとか、これを言ったら変に思われるんじゃないかということこそ言わなくちゃだめなんですよね。
今日、僕は、メンターを口説くとか、言いづらいことを言って次元上昇するというテーマでお話ししたいと思っています。例えばメンターというのは、もうイエスマンばっかりに囲まれているんですよ。
稲垣: そうですね。
本田: だから「先生、こうですよ」とか、例えば「若者には受けていませんよ」と、ずばっと言うことによって、言われた人は気になるじゃないですか。
そう言えば、以前、バーのママさんに聞いたんですけど、あえてネガティブなことを言うんですって。それが、心を掴むコツだって。
稲垣: へえ〜。
本田: 「社長、裸の王様になっていますよ」と言われたら、きゅんと胸をつかまれて、あっ、俺、そうなのか? と思って、その人に惚れていったりするらしいんです(笑)。
例えばそういう感じでね、「言いにくいし、周りの人たちもうすうすそう思ってるんだけど伝えていないこと」をずばっと言うことで、より信頼されるんですよね。
その言い方や内容が多少外れていたとしても、言いづらいことを言ってくれたと言う誠意に何かを感じてくれるんだと思います。ちゃんとした人だったら、「君、どういうことなのか、今度教えて」というふうになると思います。
稲垣: なるほど。よくわかります。
ただ、一般的に、例えば、「ここにケチャップついてるよ」は事実なので言いやすいですが、「若者に好かれていないですよ」というのは、自分はそう思うけど、別の人からは好かれてるかもしれない。要は、自分の言う言葉にどれくらい信憑性があるのか、というので言えなくなる人もいると思うんです。
本田: あっ、それはあるでしょうね。
稲垣: そういう場合はどうされていますか?
本田: もしその人が若者だったらいいんじゃないですか。なぜなら、ちゃんとした人なら対話を求めてきますから。「君、それ、どういうこと?」というふうになると思います。特にネガティブで本質を突いてることを言う人を、経験上、ちゃんとした人は大切にします。僕は、そういう会話がメンターと知り合うきっかけになったことが、何度となくありました。
稲垣: なるほど。
本田: 多少ずれていてもいいんですよ。それよりも「本当のことを言ってくれる」という印象の方が大切。伝え方については、まさしく陽子さんが書かれたこの本を読んでください、と言いたいです(笑)。
「間違っているかもしれませんけど」「若者のたわ言だと思って聞いてほしいんですけど」とか、前置きをすれば、そこまで変じゃないし、相手もちゃんと聞いてくれるんじゃないかと思います。
稲垣: なるほどよくわかりました。健さんの場合、ずばっと相手の心に入る精度が非常に高いと思うんですが、どうしてなんでしょうか。 健さんが日ごろ意識していること、言いづらいことを言えるようになるために、何か心がけていることはあるんですか。
本田: 僕が人と会うときには、その人が何に喜び、何に悲しみ、何にイライラし、何に落ち込むかというのを想像するようにしています。メンター候補の人だったらこういうことを言ったら、喜ばれるんじゃないかなと想像するんです。まあ、もちろん外すことも多いですけど。でも、いっぱい外すことによって、だんだん当たってくるようにもなります。これは、練習ですね。
稲垣: なるほど、面白いですね。参考になります。
本田: まず、その人が、甘口なのか辛口なのかを見極めます。この人は褒められて育つのか、厳しいことを言われて育つタイプか。それによって、どう言う言葉がその人に響くのかは、違ってきます。陽子さんのようなコーチングの専門家の前で、釈迦に説法だと思うんですけど(笑)。
稲垣: いえいえ。
本田: 例えば、辛口のことを言ったら喜ぶ人に、甘口のことを言ってもだめなんですよ。嘘を言っているようにしか思えない。だから、「もう少しネガティブな意見をくれ」みたいな人っていますよね。そういう人には辛口のコメントで接しないと、本当のことを言っているようには思われないんです。
稲垣: 面白いですね! もうひとつ、聞きたいことがあります。特に次元上昇するために出会いたいメンターって、関わる頻度も多くないと思うんです。そういう短い時間でどうやって健さんはその辺を、感度よくキャッチしていくのでしょうか?
本田: 大切なのは、質問力なんですよね。相手が何を望んでいるのか、相手が一番やりたいこと、知りたいことは何なのか、ということだと思うんです。
例えば、最近だと、メンターのジャック・キャンフィールドという世界で3億部の『こころのチキンスープ』シリーズの本の著者がいますが、彼と人間関係を持とうと考えた時に、まず彼が望んでいることはなんだろうと想像したんです。
彼の望みは、成功する生き方を世界に広めることなんですね。そこで、僕は「日本という市場に興味ありますか」と質問したら、「もちろん興味あるよ」との答え。すぐに、「僕にそれをやらせてほしいです」と言ったら、「それは、すごいね。嬉しいよ」と、とても喜んでくれました。
さらに、僕は今までジャックがなぜ日本に来ていなかったのかという話もしました。また、相手にとっては聞きづらい、言われたら嫌だなと思うようなことも、ずばっと言いました。「本質的なことを突いているけれども、今は新鮮さがない。だから、これからは、新しい切り口が必要なんじゃないか」と。
それは、本人がそのまま思っていることでもあったと思います。人は自分と同じ感性の人の話を聞くと、この人は自分と一緒だと思うんですよね。なので、そういう切り口でサラリと言いにくいこと、言いづらいことを言うことで心のつながりができるんですよ。そこで、信頼を得て、次のステップにいけるわけです。
「きれいですね」とか、「すてきですね」と言われても、それだけでは心のつながりはできません。でも、嫌なことを言ってそれを受け入れてくれたり、ネガティブなことを言って、「そうなんだよね」と悩みを相談してくれると、人間関係は深まります。だから、ネガティブな部分でつながると、人は絆が深まると思うんです。
稲垣: なるほど。ネガティブでつながるためにまずはよく観察したり、質問力を磨いて関わるということが必要なのですね。
本田: そう、そうなんです。だから、ここまで言ったらOKだけど、ここから先を言ったら激怒する、地雷がここに埋まっているとかの観察は大切ですね。僕は、よくいきすぎて、激怒されたり、破門されたりしたことがあるんですけど、、。
稲垣: そうなんですね(笑)
本田: はい。それで、あっ、これはいきすぎたな。でも、ここまではいけるな……ときわきわを歩きます。だから、よく「健さん、あんな危ない橋をよく渡りますね」と言われるんですが、ここまでだったら大丈夫だろうという僕の計算があって、やっているんです。たまに落ちますが、、(笑)。また、ここからは言ってはいけないゾーンだと言うのもあります。
稲垣: そのゾーンも、教えていただけたらうれしいんですけど。
本田: 相手が気にしていても、ここまでは受け止めるというゾーンと、ここからはめちゃくちゃ気にしてるゾーンで受け止めきれないというのがあるはずなんです。
稲垣: そうですよね。それはどうやってキャッチできるようになるんですか。
本田: これを言ったらだんだん顔が怖くなってくるとか、これを言ったらマジで切れられたとか、膨大なデータベースがあるから。
だから、言いづらいことをサラリと伝える技術じゃないですか。その技術がなければ地雷を踏むわけで、どうやったら足を吹き飛ばされるのかというのは、やっぱり実際にいくところまでいってみないとわからないし、失礼なことを言ってしまったらお詫びすればいいわけだし。
稲垣: なるほどね。そうすると、逆に地雷を踏むまでいくのも、ただ言うんじゃなくて、目指したい次元上昇の未来がないと言えないということですかね。
本田: そう、そうなんですよ。本人のためを思って、だから、僕は嫌みを言っているわけではなくて、その人がどれだけよくなれるか、という視点で話しています。
だから、そこまでちゃんとわかっている人は「君、そんなことを言うもんじゃないぞ」と言いながらも、「でも、いいこと言うな。久しぶりに一本取られた!」みたいな感じのことを言っていただけることは、よくありましたよね。
稲垣: なるほど。そうやって言うんですね。
本田: はい。すごい人たちに、言いづらいことを言えるようになると、めちゃくちゃ可愛いがられるんですよ。
稲垣: そうなんですね。
本田: それで、会食に呼んでもらったり、「部下の人が言ってくれないことを君に言ってほしい」、みたいなことを言われることはしょっちゅうありました。若造の僕が褒めたから喜ばれるなんてことは想像してませんでしたが、ねぎらったり褒められたりすることって、VIPの人とか年長の人はほとんどないんですよね。
この間、僕も逆の立場で、同じことを体験しました。
「健さん、話が上手ですね」と言われて、そんなこと久しく言われたことがないなと思って(笑)。普段は、どれだけ講演会で上手に話しても、うまくて当然、みんなが盛り上がって当然だと思ってるから、褒められることがないんですよ。
「話、上手ですね」と言われて、あっ、この角度で褒められたことってここ何年もないなって。そう言うことを言われて、すごく嬉しくなって握手しちゃいました(笑)。
稲垣: それはそうですよね。もう皆さんそういうのは、前提にありますからね。
本田: そう、そう。不思議にうれしかったんですけど、自然にこっちが受け入れやすい形で褒められると、その人のことが好きになりますよね。相手に本音で接していく、ぶつかっていくという人は、は、メンターから引っ張りあげてもらえるのではないでしょうか。
稲垣: なるほどね、よくわかりました。次の質問に変えてもいいですか。
本田: はい、どうぞ、どうぞ。
稲垣: 今、どちらかというとメンターにどう関わって次元上昇していくかという切り口だと思うんですが、もう1つは、多くの人が次元上昇するときに、たくさんの人の応援を必要とすると思うんです。そのときに、言いづらいことをサラリと伝えていくのに健さんが必要だなと思うことは何かありますか。
本田: 言いづらいことの中にはいろいろな分類があると思うんです。自分でもわかっているんだけど、誰かにそれを言われたくないことってありますよね。
稲垣: はい。
本田: それを毒を持たずに言えるかどうかだと思うんですよ。例えば、「今、つき合ってる彼さ、このままいっても、何もならないんじゃない? あなた、もっといい男とつきあったほうがいいと思うよ」というのは言いづらいことですよね。
でも、それを言うことによって、あっ、本当のことを言ってくれた、と思われるかどうか。「もうそろそろ独立する時期じゃない?」とか、「そろそろ、本、書く時期なんじゃない? この間、本って言ってたじゃない。あれ、絶対いいと思うよ」ということを、言いづらいけど言うのが、友人から親友に移る大きなきっかけじゃないかと思うんです。
稲垣: たぶん親友レベルでは多くの人が言えているとは思うんですが、次元上昇というときに応援をもらうような言い方はありますか?
本田: 本音で話すことでしょうね。特に、自分のネガティブなことを話すことによって、応援してくれる人は増えるんじゃないでしょうか。
今、僕が世界で出版するというとき、「ワクワクする部分もあるんですが、半分以上は不安でどきどきしたり、こんな自分でできるのかなと思ったり、落ち込むことも多いんだ」と言うと、励ましてくれる人たちがすごく増えたんですよ。だから、自分のネガティブでできていないところもオープンに話すことで、周りの人たちが好意的な反応をしてくれることはありますよね。
稲垣: なるほどね。
本田: だから、本音を話すということですよね。強がって「世界に行きます、皆さん応援してください」よりも、世界進出は言ったものの、なんか、寝られなくなったり、ああ……って不安だなって思ったり、飛行機に乗ったら、もう、帰りたくなったりとか。そう言う気持ちになることは、しょっちゅうです。そう言うことを話してます。
稲垣: へぇ、そうなんですか(笑)。
本田: これは本当の話なんです。一般的に、ネガティブな部分をオープンにして、悩みがあるんだよ、と言われたほうが、その人のことをリアルに感じられるんじゃないでしょうか。
稲垣: なるほど。まずは言いづらいことを言うだけではなくて、人に伝えたくないことも自分から伝える、と言うことですね?
本田: そう、それも言いづらいことですよね。
稲垣: はい、そうだと思います。
本田: 本当はポジティブなことだけを言いたいじゃないですか。でも、やっぱり「実はね……」という自分にとって言いづらいことを言うと、相手との距離を縮めることにつながると思います。
稲垣: なるほどね。
本田: この間会った人は、仕事もすごく成功していて、キラキラしている人なんですけど、「いや、実はね、今、奥さんが出ていっちゃって困ってるんだよ」とボソッと言うので、急にその人がすごく人間らしく見えて(笑)。この人のことを応援してあげたい、という気持ちになりましたね。
「実はね……」と、さらっと自分のネガティブなことが言う方法も、この本の続編になるのかどうかわかりませんけど、自分の言いにくいことを相手に伝えて理解してもらう、応援してもらうという技術もあるのかなと思います。
稲垣: なるほど、わかりました。続編に考えたいと思います。もう1つ聞きたいのは、私のイメージからすると、健さんって本当にたくさんの人に応援されながら力をもらい、応援し合いながら今のところまで来ているという印象があるんです。
そういう意味で、私のイメージですが、応援される人って実は言葉づかいもすごくきれいで、言いづらいこともサラリと言っている印象がありながらも、毒がない感じがするんです。その「毒のない言い方のコツ」というのはありますか。
本田: 相手を攻撃しようと思っていると毒が出ますよね。例えば、「いつも感じ悪いの知ってる? みんな言ってるよ」というのは、明らかに毒があるんです。
相手を攻撃したり、相手にわからせようと思うあまり、力ずくでねじ込めなくっちゃという気持ちになったときには、毒が発生するんです(笑)。
でも、ニュートラルに、「ああいうふうに言うと、お客さんがすごくがっかりしたりするよ」とか、「あのあと、同僚の人が、落ち込んでいたよ。もう少し柔らかい言葉を使ってあげられるといいんじゃないかな」とサラリと言うことができたらいいですよね。
「あんな言い方だったらクレーム来るよ」「あれは、最悪だったね」と脅かしたり、批判やコントロールが入ってくると、相手はとたんに、聞きにくくなりますよね。
稲垣: なるほど。例えば、自分の次元上昇のためには、人によっては奥さんや周りの人に「俺の夢はこうだからこうしてくれ」と、どこかでコントロールしたくなるというのは無意識にあると思うんですが。
本田: その中に要求もあるわけですよね。俺はこれをやるんだから、おまえもこれをやれ、みたいなバーターの要求もありますよね、期待もありますよね。だから、自分の中にある期待、要求、怒り、そういったものを全部、まあ、全部は無理かもしれませんが、クリアーにしていかないと、いい関係は持てませんよね。
稲垣: どうやったらクリアーにできるんでしょうか。
本田: 相手に対してどういう思いがあるのか、ということを日常的に自分でチェックできるかどうかですよね。この人に対してむかつくなとか、実はずっと根に持っていたとか、そういうものがあると、やはりちょっとしたときにそれが、どーっと出ますからね。
稲垣: なるほど。
本田: そのときに、あっ、自分はこの人に怒ってるなとか、怒りが出たぞ、嫉妬してるなと思うと、やはり変なことを言っちゃうんですよね。どんな人とに対しても、自分の中で相手への感情をニュートラルに戻せるかどうかは大事だと思いますね。
少しでも、上から目線になったり、相手に対して批判めいた言葉になったりすると、とたんに相手の心は閉じますからね。自分にそういう気持ちが0.1ミリでも出た瞬間に、ハートを守るために、相手の心の自動ドアが、さっと閉まると思うんです。
稲垣: 自分をニュートラルにしていくことを日々見ていったり、自分自身と丁寧に対話していったり、そういうことをなさっているというイメージでいいですか。
本田: そうですね。自分の中にある相手への攻撃性、暴力性をどこまで無くせるかということですよね。それが、本当にその人のためになる、自分の中ですっと腑に落ちてからしか言わないようにしています。
稲垣: それで、毒がない感じになるんですね。
本田: やはり怒りに任せると……、子育てなんかそうですよね。「〇〇ちゃん、何で勉強してないのよ」と言うときは、自分が別のことでイライラしていて、それをぶつけているだけのことも多いんじゃないでしょうか。
稲垣: そうですよね。私が知ってる健さんって、もちろん言葉はシャープなんですけど、そこに怒りの感情が全然乗ってないじゃないですか。
本田: はい、それは「何で本を書かないんですか」とか、「もうそろそろ書く時期でしょう」みたいなことを言わないから。本を書いてなかったとしてもその人の選択だから、その人の選択を最大限に尊重するということですよね。この後、旦那さんと別れてもいいし、あるいは奥さんと別れてもいいし、結婚してもいいし、やり直してもいいし、とニュートラルでいる、いうことに気をつけています。
稲垣: なるほど。その「選択の自由があることを尊重している」という意味ですよね。
本田: そう。だから、選択の自由というのは誰にでも与えられているものなんです。それを尊重してあげることが、その人が聞く耳を持つことにつながるんじゃないでしょうか。
稲垣: なるほど、わかりました。最後に、これは、言いづらいことがうまく言えないとか、言いづらいことをサラリと言う。周りとの関係をうまくさせながら、自分の人生をもっとよくしたいと思っている方が聞いてくださっていると思いますので、メッセージなどあれば、お願いします。
本田: はい。言いづらいことは、実は相手も聞きづらいことなんですよ。なので、その抵抗をなくしてあげる。これは、稲垣陽子さんの本を読んでもらったら全部入っていますから(笑)。それを読んでもらって、実際に練習することで、言いづらいことのハードルが下がると思います。
言いづらいことを自由に言えれば言えるほど、人間関係も広がるし、関係も深くなるので、ぜひその技術を学んでもらいたいと思います。
それによって、メンターを口説いたり、何かをやるときに応援してもらったり、人生がどんどんおもしろくなってくると思います。
稲垣: はい。本当に今日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。
本田: はい、ありがとうございました。これからのご活躍を応援しています!
コミュニケーションを円滑に進めるためには、5つのパワーが必要です。
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コラムのページ(言いづらいことをサラリと伝える、5つのパワーの鍛え方)は、本書の帯の裏にあるQRコードよりお入り頂けます。
なかなか日常の生活リズムの中で、意識を変えるのは難しいことです。
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