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メルマガ「共創コーチング®」稲垣 友仁

成功に影響する非認知能力

Group of diligent schoolchildren looking at camera in school

【「学力」の経済学(つづき)】
コーチング・システムズの稲垣友仁です。
今日から、宇都宮大学の講義で宇都宮に来ています。こちらで「共創コーチング」の講義をさせていただき8年目になりました。

当社の共創コーチングに行きつく、きっかけをいただいた大切な場所です。
今年も、アップデートされたスキルをもって、学生達と関わってこようと思っています。
今回も、前回に引き続き、『「学力」の経済学』(中室牧子著 ディスカヴァー・トゥエンティワン)という本からのお話しです。

前回のメルマガでお伝えしたことは、下記の2点です。

1.子どもの学力に影響する要因は大きく分ける
と、下記の2要因に分けられます。

「家庭の資源(親の所得や学歴、家族構成、塾や習い事への支出、家庭学習の習慣など)」

「学校の資源(教員の数や質、宿題や課外活動、授業時間、カリキュラムなど)」

の2要因です。

それらが互いに、子どもの学力に50%ずつ影響している。なので、学校がいくらがんばっても、子どもを変えようと思ったら家庭の協力も必要である。

2.しかし、上記のパーセンテージを超えていく『教師の質』があり、特定の先生の教えた子どもは学力が上がるばかりでなく、将来、“幸せに成功する確率”が高くなる。
というお話しでした。
私が関心があるのは、そのパーセンテージを超えていくような『教師』とは、どのような特質を持っているのか?ということです。
実は、これについて私自身、20年ぐらい研究をしてきています。
研究してきた結果を、この場でお伝えしたいのですが、その前に、もう一点、お伝えしておかなければいけない、重要な視点が1つあります。

今日は、そのことについて話していきますね。

『学力』という成果に向けて、勉強だけすればいいのか?

繰り返しドリル的なトレーニングを積み上げていけば学力(成果)は上がるのか?
教育に関する永遠のテーマかもしれません。
実は、これに対する答えを教えてくれる研究があります。
1960年代に、シカゴ大学のヘックマン教授らが行ったペリー幼稚園プログラムという研究です。
この研究では、ペリー幼稚園に参加した子ども達のIQが年齢とともにどのように変化したかを生涯に渡り追跡しているそうです。
そこで、おもしろい結果が出たので、書籍からの抜粋ということで紹介しますね。
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ペリー幼稚園プログラムによって改善されたのは、『非認知スキル』または『非認知能力』と呼ばれるものでした。
これは、IQや学力テストで計測される認知能力とは違い、「忍耐能力がある」とか、「社会性がある」とか、「意欲的である」といった、人間の気質や性格的な特徴のようなものを指します。
一般的に「生きる力」と言われるものでしょうか。
非認知能力とは、下記のようなものを言います。

・自己認識(Self-Perception)
ー自分に対する自信がある、やり抜く力がある

・意欲(Motivation)
ーやる気がある、意欲的である

・忍耐力(Perseverance)
ー忍耐強い、粘り強い、根気がある、気概がある

・自制心(Self-Control)
ー意志力が強い、精神力が強い、自制心がある

・メタ認知ストラテジー(Metacognitive Strategies)
ー理解度を把握する、自分の状況を把握する

・社会的適正(Social Comoetencies)
ーリーダーシップがある、社会性がある

・回復力と対処能力(Resilience and Coping)
ーすぐに立ち直る、うまく対応する。

・創造性(Creativity)
ー創造性に富む、工夫する

・性格的な特性(Big 5)
ー神経質、外交的、好奇心が強い、協調性がある、誠実である
『気質や性格的な特徴である非認知能力は、本来目に見えないものですが、「自尊心」を計測したのと同じような心理学的な方法を使って、数値化することが出来ます。
そして、その数値を分析した結果、非認知能力は、認知能力の形成にも一役買っているだけでなく、将来の「年収」、「学歴」や「就業形態」などの労働市場における成果にも大きく影響することが明らかになってきたのです。

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『ヘックマン教授らは、学力テストでは計測することができない非認知能力が、人生の成功において極めて重要であることを強調しています。
また、「誠実さ」、「忍耐強さ」、「社交性」、「好奇心の強さ」と言った“非認知能力”は、「人から学び、獲得するものである」ことも。
恐らく、学校とはただ単に勉強をする場所ではなく先生や同級生から多くのことを学び、「非認知能力」を培う場所であるということなのでしょう。』

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ということです。
「学力」は、単にIQだけでなく、非認知能力が影響しているのです。
まさに、学校は、“テストで良い点を取るためだけに存在する”のではなく、学級活動や部活動や委員会活動などあらゆる学校活動を通して、生徒の非認知能力を上げていく、要するに、「生きる力」をつけるために存在するのです。
それが、生徒の「将来の幸せ」や「成功」に結びつくのです。
実は、この「非認知能力」は、学校の生徒だけに限ったことではありません。
書籍では、

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『この調査から導き出された結論は、「学力」をアップするということもさておきながら、社会的に活躍できる人材になるためには、幼児期の学習環境が重要だということなのですが、これは、幼児期に限定された現象ではありません。
たとえば、1日30分でいいからランニングを継続するなど、大人になってからでも非認知能力をアップする方法はいくらでもあります。
ただし、勘違いしないで欲しいのは、それは、「根性を鍛えろ」ということではありません。
これまで避けてきたことを、仕組み化して習慣にすることに意味があります。
こうした経験の積み重ねによって、IQとは違う、仕事に必要な能力が確実に鍛えられるのです。』

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ということで、要するに、社会人も非認知能力を高めることは出来るし、必要だということです。
私たちは現在、人材育成の分野で多くの社会人の方々と接しています。
まだ、きちんとしたデーターはありませんが、やはりそこでも、「非認知能力」の高い方が成功していると感じていました。
きちんと仕事をやり抜く力や、協調性、誠実さがある方など、すばらしい結果を残している方こそ、そういった非認知能力が高いように思います。
そういった目には見えないけれども、成功するために必要な能力があり、それが高い人が実際に成功しているということです。
冒頭でお伝えした『出来る教師』も、この非認知能力が高いように思います。

そして、そういった『出来る教師』は、生徒にアプローチするときに、非認知能力を伸ばすような取り組みを取り入れています。

ぜひ、「非認知能力」を意識しながら、日々の行動を変えていただければと思います。
今日も最後までお読み頂きましてありがとうございます。
次回もお楽しみに。

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